第2話 妹はブラコンなのか?

 母さんが俺に与えた罰。それは妹の美咲の部屋で過ごすことだった。

アイツ、何で反対しなかったんだ?


理由を訊かないと納得できないぞ。



 美咲に続いて、彼女の部屋に入る俺。最後に入ったのって、いつだったか…?

可愛らしい物は見当たらなく、俺と同様シンプルな部屋をしている。


そのおかげで、過ごしやすくはあるが…。


「美咲。何で母さんが言った事に反対しなかったんだ?」


「だって、反対する理由がないもん」


「反対する理由が…ない?」


「うん。こんな時じゃないと、お兄ちゃんと一緒に過ごせないでしょ?」


俺と一緒に過ごす…? 小さい頃と比べてたら、確かに会う・話す時間は減ったな。

部屋にこもってゲームしたり、音楽を聴いてる方が楽しいからだ。


「嬉しいことを言ってくれるが、着替えや電話の時はどうするんだ? 同じ部屋にいる以上、見聞きは簡単にできちゃうんだぜ」


真面目で優等生の美咲が気付かないはずはないが、一応伝えておく。


「全然気にしないけど…?」


…え? マジで言ってるのか? 俺が気にし過ぎ…な訳ないよな。

どう考えても、美咲のほうがおかしいだろう。


とはいえ、これ以上言っても無駄な気がする。

実際その時になれば、考えを変えるに違いない。



 「俺の部屋から、布団とか持ってくるわ」

美咲にそう伝えた後、彼女の部屋を出る。


布団は、美咲のベッドの横しか敷くスペースがない。

彼女のベッドはシングルサイズだから、一緒に寝るのはあり得ない事だ。


俺も以前はベッドだったんだが、寝相が悪くて落ちたことがあるので、それ以降は布団になった。布団を敷いたら、タブレット・充電器・ヘッドホンを持ってこよう。


それらさえあれば、大抵のことはやれるしな。


俺は布団を持って、美咲の部屋に戻る。


「狭くなって悪いが、敷かせてもらうぞ」


「うん」


許可をもらったので敷く。…床の空いてるスペースがほぼなくなってしまった。

学習机付近のスペースは空いているので、美咲の勉強の邪魔はしないだろう。


「やっぱり狭くなっちまったな。通る時、踏んでも良いからな」


「わかったよ」


美咲に迷惑をかけるんだ。これぐらい許さないと。


その後再び自分の部屋に戻り、タブレット・充電器・ヘッドホンを布団の上に放り投げる。その時に携帯がないことを思い出し、再度戻る俺。


自分の部屋と美咲の部屋の往復が面倒だぜ。隣同士だから遠くはないんだがな。



 美咲は学習机で勉強中、俺は布団の上に転がってタブレットをいじっている時に扉をノックされる。…母さん、何の用だ?


「2人とも、夕飯できたわよ!」

扉越しでそう伝えた後、気配が遠ざかっていく。


気付けばそんな時間になっていたか。バタバタしてたから、忘れていたぞ。


学習机は部屋の奥にあり、ベッドと布団は中央付近に存在している。

そうなると、俺が先に出ないと美咲が出にくい。


少し面倒だが早々に体を起こし、彼女の部屋を出る。



 夕食を済ませ、美咲の部屋に戻ってきた。まだお邪魔している感覚が残っている。この感覚を消さないと、今日は寝られそうにないぞ…。


「お兄ちゃん。今日ご飯おかわりしてたね」


「ああ、腹減ってな。布団とか必要な物を持ってくるのに、体力使っちまった」

普段しない事って、単純であっても意外に疲れるよな。


「そっか」

微笑む美咲。


アイツ、細かいとこ観てるんだな。今の状況でなければ、こんな雑談すらしなかっただろう…。



 風呂の時間になったし、入るとするか。


風呂の順番は、最初は俺で2番目は美咲になり、最後に母さんだ。

父さんは単身赴任中なので、家にいない。


俺が最初の理由はただ1つ。『さっさと風呂に入れ』という意味だ。

この件も母さんに怒られたことがある。


だったら2人が先に入れば良いはずだが、母さんの怖い雰囲気に圧倒されたので言い出せなかった。


『脱いだ下着を見られたくない』と解釈したが、今更訊く気はない…。



 風呂から出た俺は、美咲の部屋に入る。

彼女はベッドの上で何かを読んでいた。


…表紙をチェックしたところ、漫画のようだ。

あれ? あの漫画、有名なやつじゃん!


美咲にそんな趣味があるとは知らなかったぞ。

俺が知らない間に、趣味を増やしたのか…。


いつでも雑談できるよう、本棚の中身を知っておいたほうが良いかもな。


「次は私だね」

彼女は漫画を本棚に戻した後、着替えを持って部屋を出る。


…ちょっと待て。この部屋に居るって事は、風呂上がりの美咲が入ってくるよな。

『風呂上がりの女はエロい』これは、俺の中では常識になっている。


だが、相手は妹だ。今回ばかりは例外だろうな…。


俺はすぐ気持ちを切り替え、タブレットゲームに没頭することにした。

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