(二)-6

 ジョージは肝心のエミリア嬢の船に抜かれてちゃ、勝てないと思ったが、敢えて口には出さずに「そうだな」とだけ返事した。

 そしてそんなやる気満々のシッコから顔をそらす意味合いでジョージは顔を左右に向けた。

 コックピットの裏には座席が二つあった。どちらも空席だった。

 ジョージは何か忘れているような気がした。一体それが何かはすぐに思いつかなかった。

「俺たち三人でエミリアのキスを頂きだ!」

 そうシッコは大声を出した。

「三人?」

 何気なくジョージはつぶやいた。今この船に乗っているのは、コックピットにジョージ自身と、隣の席に座っているシッコの二人。そして二席ある後部座席は両方空いているのだ。肝心の三人目は一体どこに……。


(続く)

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