13
その日、僕は夢を見た。
とても、残酷な夢を。
夢の中で、とても幸せそうに笑っている圭くんの隣にいるのは、僕であるようで、僕じゃなかった。
同じ顔、同じ声、同じ人を愛する心を持っていながら、僕には与えられない圭くんの愛を持っている人。
顔と声は、僕そのものなのに、それ以外が何もかも僕とは違う。
朝、圭くんと二人で飲むコーヒーも、僕はブラックコーヒーなんて苦くて飲めない。
お昼に散歩に行く時も、二人が話しているアーティストのことを僕は何も知らない。
夜、圭くんの隣で眠る時も、僕はあんなに優しいキスを貰ったことはない。
そして、この残酷な夢に僕は気付かされた。
二つの日々の、決定的な違いが何なのか。
それは、圭くんの幸せの重さだ。
だからこそ、僕が、今しなくてはならないこと。
そのことに、やっと気がついた。
僕は、今のままじゃ、真さんの模倣でしかない。
圭くんが幾ら真さんと同じように僕を愛そうと思っても、今のままじゃ、ただの真似事になってしまう。
僕は、圭くんに本物の幸せをあげたい。
本当の、笑顔を見たい。
だったら、やっぱり…僕が本物になるしかないんだ。
同じ顔、同じ声、同じ人を愛する心。
それは全部、ただの偶然なんかじゃない。
きっと僕は、真さんになるために、ここに来たんだ。
これでみんな、幸せになれる。
そうだ。
全ての願いが、叶うんだ。
圭くんのもとに、真さんは帰ってくる。
真さんのことを、圭くんが忘れることはない。
僕の願いは…それは、結局、圭くんが笑顔でいてくれることだから。
たとえ圭くんが僕のことを今まで通りマコとして見てくれても、それによって圭くんの笑顔がなくなってしまうなら、それはそんなに大切なことだろうか?
圭くんの笑顔が失われることよりも辛いことなんて、きっと僕の世界にはない。
僕が真さんになることで、圭くんは本当の笑顔を取り戻せる。
真さんをもう一度愛して、二人で、幸せになれる。
これでみんな幸せなんだ。
きっと、幸せなんだ。
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