8月14日 夏休み、隣の席の女の子とハグをしました。
「なんだか、不思議な感じだね。」
スキップしながらそんなこと言う和奏の右手は俺の左手と結ばれている。
まだ夏にしては涼しい午前中に川路を二人で手をつないで歩いていた。
お盆の期間、和奏と触れられるということで俺たちは思う存分それを堪能していた。
「喉が渇いたから、一回あそこの公園に寄ろう。」
俺は自動販売機で飲み物を買い近くのベンチに腰を下ろした。
暑いときに飲む麦茶のすばらしさを堪能していると
「一口ちょうだい?」
俺が飲んでいる麦茶を指さして和奏はそう言った。
「和奏もいるならもう一本買ってくるよ。」
「一口でいいの!それに、そう言うことじゃない!」
少し怒り口調の和奏に持っていた飲みかけのペットボトルの麦茶を渡す。
彼女はそれを受け取ると宣言通り一口だけ飲んで俺に返してくる。
俺はそれを受け取ろうとするも、彼女の手がペットボトルから離れない。
彼女の方を向くと彼女は顔を赤らめていた。
「どうした?体調悪いの?」
「大地の馬鹿。ほら、もう行くよ!」
彼女はそう言って徐に立ち上がった。
俺は急いで残っていた麦茶を飲み干す。
「ちょっと待ってて、これ捨ててくるから。」
俺は和奏にそう伝え、走ってペットボトルを捨てに行こうとすると、
「大地!」
と和奏に呼び止められ、俺は彼女の方に振り向いた。
その刹那彼女は俺の胸の中に飛び込んできた。
俺は驚いてペットボトルを落としてしまい、地面とペットボトルがぶつかる音が何度か続き、その間和奏は俺に抱き着いたまま俺もそれを黙って受け入れていた。
そして、俺も彼女の背中に腕を回そうとしたとき、
バタン
と物が落ちる音と共に聞いたことのある声が聞こえてきた。
「大地君、、?その子、、誰?」
「栞!?」
そこには足元に落ちた本と、松田栞の姿があった。
「大地君、和奏ちゃんと付き合ってるんじゃないの!?」
血相を変えて俺に迫ってくる栞。
俺がその勢いに圧倒され、固まっていると和奏が間に入ってくる。
「栞ちゃん、栞ちゃん。落ち着いて。私が和奏!安達和奏!」
「え?」
それから栞に事の経緯を話した。
栞は相変わらず何にも疑わずに俺たちの話を受け入れてくれた。
「な~んだ。そうならそうと言ってよ。」
「栞の勢いに圧倒されちゃって。」
「そうなら、あんたたちも明日の花火大会二人で行くの?」
「うん、行くつもりだけど。」
「それならさ、明日の朝から花火大会に行くまでの間、和奏貸してくれない?」
「いいけど、どうして?」
「それは明日になってのお楽しみ。和奏ちゃんとは積もる話もあるもんね~。」
そう和奏に共感を求めているが、和奏も何の事やらと首を傾げている。
「それじゃあ、私は帰るね。二人の邪魔をしちゃったようだし。詳細は後でメールで知らせるから。」
そう言って栞は帰って行った。
残された俺たち二人は顔を赤らめながら、しばらく顔を見合わせていた。
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