8月8日  夏休み、隣の席の女の子がクラスメイトに気付かれました。

俺は朝一人で散歩をしていた。

和奏がうちに来てから規則正しい生活習慣が身についてきているような気がする。

そんな風に思いながら、俺は川に沿った道を歩いているとちょうどいい芝生の斜面を見つけたので仰向けに寝転んだ。


近くでやっている少年野球の元気な声や、木々から鳴る響く蝉の声、時折吹く涼しい風。

俺はいつかの日のように夏に誘われ眠りについてしまった。





「川路で居眠りとか、いい趣味してるね。」


俺が目を覚ますと隣に体操座りで本を読んでいる少女が話しかけてきた。

よく見るとその少女の姿には見覚えがあった。


松田まつださん?」


彼女は松田まつだ しおり

俺と同じクラスの女の子で、いつも本を読んでいるおとなしい子だが、男子にはひそかに人気を集めている。


「驚いた。私の名前覚えてくれてたんだ。」

「どうしたの、こんなところで。」

「君にいくつか聞きたいことがあったんだ。」

「聞きたいこと?」

「君さ、最近身の回りで不思議なこと起きてない?例えば、オバケを見たり。」


俺はその言葉に驚きを隠せなかった。


「ど、どうしてそんなこと聞くの?」

「私、親が霊媒師やってるんだけどそのせいで私も霊感が付いちゃったの。それで、この前の登校日、君に何かが付いているのを感じたの。」

「べ、別にそんなこと無いけど。」

「そう?それなら良いんだけど、困ったときはいつでもうちに来ても良いからね。」


そんな話をしていると、


「大地〜。」

「げっ、和奏。」


そう、タイミングの悪いことに向こうの方から和奏が俺を追って走ってきてしまったのだ。


「帰れ。」


俺は小声で和奏に告げるも、彼女は首を傾げているだけだ。


「どうしたの?」

「いや、どうもしてないよ。」

「危ない!!」


そんな時、近くでやっていた少年野球の打ったボールが松田さんの方まで飛んできていた。

俺は咄嗟に松田さんと飛んでくるボールの間に入り込む。

が、ボールの衝撃は俺の体に来なかった。

和奏がボールを両手でキャッチしていたのだ。


「え?」


俺にはそう見えても松田さんは違った。

ボールの方に目を向けるとボールは宙に浮いたまま止まっている、そう見えたのだ。

俺は急いで和奏からボールを奪い、取りに来た少年にボールを渡した。


「え?今。」

「ごめん、松田さん。俺、用事を思い出したから先に帰るね。またね!」


そう言って俺は急いでその場を離れ家に向かう。




「危なかったね。もうちょっとで怪我するとこだったね。」

「危なかったねじゃないよ。タイミング悪すぎ。松田さんに多分和奏のことバレたよ。」

「松田さんってさっきの女の子?可愛かったね。ああいうのが大地はタイプなの?」


俺は色々考えていると和奏がそんなことを聞いてくる。


「ちょっと手を見せて。」

「ねぇ。」

「怪我は無いみたいだね。」

「ねぇ。」

「それより、松田さんへの言い訳どうするか。」

「ねぇってば!もういいよ!」


そう言って顔を膨らませて、怒って彼女は寝室に入っていった。

それから、俺はやってしまったと後悔したのだった。




――――――――――――――――



残り23日。

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