8月6日 夏休み、隣の席の女の子が隣にいる。
「本当に来なくていいんだな。」
「いいって言ったでしょ!」
何故かそういう和奏の顔はとっても笑顔だった。
「じゃあ、お昼頃には帰るから。行ってきます。」
「分かった。行ってらっしゃーい。」
昨日の夜、一緒に学校に行こうと誘ったがあっさりと断られたので、念を押してみたがダメで少し俺は悲しかった。
新婚夫婦のようなやり取りで家を出発した俺は重い足取りで学校へ向かって歩いていくのだった。
学校へ到着した俺はいつものように静かに自分の席に向かい座った。
既に何人かの生徒が久しぶりの再会同士はしゃぎ、またそれに続き登校してきた生徒が加わり盛り上がりを増す。
俺は机に突っ伏して寝たフリで始まりを待っていると左側から話しかけられる。
「ひとりじゃ寂しくない?大地って本当に友達作らないの?」
俺は聞き覚えのあるその声を聞き、咄嗟に顔を上げる。
そこには朝、家で別れを告げた和奏の姿があった。
「なんで来てんの!?」
俺があげた大声にクラスの視線が一瞬で俺に集まる。
俺はすいません、と頭を下げ視線を元に戻させる。
和奏はまたクスクスと笑っている。
「なんで来てんの?来ないって言ってたじゃん。」
今度は声量を抑えて、和奏だけに聞こえるように問い直す。
「サプライズだよ。サ・プ・ラ・イ・ズ。」
「サプライズってなんだよ。変な目で見られたじゃないか。」
「サプライズ大成功だね。それに家に一人でいても暇なだけだし。」
「良いけど、じっとしててよね。」
「分かってるって。」
そう言って彼女が俺の隣の席に座ると同時に先生が入ってきてホームルームが始まった。
先生が前で話している中俺は隣の席を見る。
今まで空席だった俺の隣の席は今、俺の目だけには和奏が座って見えている。
俺はそれに未だかつて無い心地良さ、安心感を覚えた。
俺の視線に気がついたのか和奏がこちらを見てニコッと笑みを浮かべる。
夏風と山の緑と和奏の作り上げる光景はいつ見ても見とれてしまうほどだった。
「九重〜、聞いとけよ〜。」
先生に注意され我に返った俺はふと右前の方から視線を感じたが、その方向を見ても誰もこちらを見ていなかったので気のせいかなと思った。
それからは色んな配り物やらを受け取り解散となった。
俺は万が一のために1番最後まで教室に残ってから帰路に着いた。
「明日、何しよっかな~。」
「したい事とか、行きたいとことかあるの?」
帰り道、俺たちは明日の遊ぶ予定を話し合っていた。
「デートしてみたい。ほら、私たちまだデートって感じのことしてないじゃん。」
「デートか。」
それから帰って俺はスマホで『初デート 場所』などと検索しまくるのであった。
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