命滅トワノオン
神音優良
序章
時は30世紀ー
文明が発達し魔法を使い自由自在に操ることのできる最先端技術を持った、すべての国を従える超大国であるこの国『トワイラン』。
ー国の中心に位置する神大樹を源に細やかな情報網が敷かれ、国内で協力し合いながら活気づいた生活をしていた。
来るその時、最大の危機が訪れようとしていた…
「なんということだ!大樹の虹色が薄れておる。こんなことは数世紀起きたことがない」Prrr。
「どうかされたのですか?」「こちら木師である、コウキク長様にお伝えを。今前代未聞であろう裂傷を確認した…。森珠の神と共にある長様の体調に何かあれば……、亀裂が、大きく、あ、あぁ……」
「おい!何があった?!応答せよ!」ドン、と大樹が地響きを立てながら揺れはじめた。
「急いでお伝えしなければ」「…長様、神大樹に大傷が見つかったとのことだそうです」
「それは真か」「大樹の源の老朽化でしょうか?」「いや、そのようなことは起こるはずがないのだ。この私がいる限り保たれ続けるはずだ。現にこうして元気であるのだから。ッゴホッ」
「長様、お体の様子が…」「エト、大丈夫だ。どうも運命に逆らわなければいけぬ時が来たのだろうか」
「そのような弱音はおっしゃらないでくださいませ!」「ま、まさか、どこかの誰かが侵略として仕組んだこととすれば…?」
「栄子からの均衡を保っていたはずが、他国から反感を買っていたと言うことなのだろうか?」「環境的に見て、他国との国境から襲撃等の異常は見られず、現状では検討の余地がないように思います」
「それもそうだな。いかなることでも理由を突き止めなければ安泰は戻ってこない。なんとしてでも……」
「ええ、直ぐに調査会を建てましょう」「直ちに現場へ急行いたします」「カシ、くれぐれも…」
ワタシのせいだ。なぜこの地に生まれてしまった。どうすれば…。どうして…。私がここにいなければこうなることはなかったのか?
避けることは出来なかったのだろうか。全てが憎しみの塊のようだ。もう何も信じることが出来ない…。
みんな、何処へ行く!ーー。ノオンは人とは思えぬもののうめき声を上げながら頭が渦を巻いていた。
「待たせたな、これは…」「カシさん、エトさん!ノオンが…、目覚めました」「やはりそうか、この時が来てしまったか。隊員全体プランQ準備」
「攻撃魔法を持たぬものは直ちに休館所へ!」国民は怯えた様子で一刻も早く逃げようと急いだ。
「プランQって?」「ノオン、ごめんね。約束したのに、ずっと一緒にいれなくて」「トルカ?え?何しようとしてるの?」
「すまんな、こうしないとこの国が滅びちまう。これ以上損害を出すわけにはいかないんだ…!」「ワコ、嫌だ、一人にしないでよ!」ノオンの体を硬い殻で包むように矛先を向けた。
「これで一段落だ。神大樹の死守に向かえ」「あ、あの、ありがとうございます」「感謝でいっぱいです」「ふたりとも立派になったな、来てしまったものは仕方ない。こうなる定めだったのだから」
「それと、コウキク様に伝えてくれ、頼んだ」と告げるとカシとエトも神大樹に向かった。「まさか、現実になってしまった」「僕らが辛いのはみんな百も承知だ。急ごう」
包まれたノオンは天高く舞い上がっていった。
「ノオン、こちらへおいで。我はそなたの見方だ。これからはずっと一緒にいられる。もう何も怖いものはないよ」
「ふぅ、ようやく兄様が落ち着けるこのときがきたのね、あとは任せましたよ。どうか平和を」「ああ、必ず理想を叶えあげてみせるよ。シンネ、本当にありがとな」
「はい!」シンネは元気に返事し家族の元へ戻っていった。「あなたは誰?何故私の名を?」
遡るとある冬のある日元気な三つ子が産まれた。名は、ノオン、トルカ、ワコ。この世界には自然・万物に関わる能力を持った子が毎年冬の入祭の日に産まれてくる。
「ははっ、これはめでたい。今までの入祭にないくらいの宝かもしれんな」「本当ですね。みんな光り輝いている」
「これで今年も安泰だな。ふむ、今回の属性系統は、白銀に、黄金に、これは、何の分類だろうか?」
「今までにないですね」「ああ、どこにも分類できぬ。このような属性は今までに見たことがない」
「…そういえば何年かに一回、特殊な種族が生まれる事があると歴史書に書かれておりました。古い伝記ですので解読できる限りですが」
「そうなのか、であれば納得だな。記録しておくことにしよう」「はい」「では早速妖精たちに来てもらうとしましょうか」「今回はこの三組にしよう」ッポン。
と、生まれた子のお守りをする妖精たちが現れた。「待ってました!」「ようやく出れましたね」「あー外の世界はこんなにも綺麗なんですね」
「クユリ、ルアレ、ミンホ任務は分かっておるな?」「ラジャー」「御意」「任せてください長様」「どうか旅立つ時のその日まで立派にそだてておくれ」
「必ずや、力を大成させて見せましょう!」「 故郷を離れるのは少し寂しいですが、精一杯務めて参ります」
「はっはっは、そうか頼もしいな。頼んだぞ」「さてと、では早速入祭も終わったことだし洗礼式に行きましょうか!」
「そうだな」入祭を終えた一行は恒例行事である国民へのお披露目として洗礼式を執り行った。
「皆の衆、今冬は今までにない程の能力を秘めた赤子が三人生を受けた。今年も実りある一年になったことをとても嬉しく思う。また次に向けて見守り続けていって欲しい。息吹を恵みたもう先祖よ、我の理において自然で世界を包み込むことをお約束致します。今季もご無事でありますよう」
長の魂の灯りが虹の大樹に染み渡ってゆく。群衆の歓声と拍手が飛び交い、場を包んだまま式は終わりを迎えた。
「クユリは本当に生まれた時から元気だな」「ふふっ、ほんと。最初はずっと影に隠れたように姿を見せなかったのに」
「えへへ、私も家元を離れられるくらいまで成長したってことね!改めて二人共、これからもよろしくねー。頑張っていこー!」「「おー」」
ここは天界の中にひっそりと佇む、黒い妖気を纏ったお城。身寄りのない王子と王女が暮らしている。
「お兄、今日の下界は騒がしいみたいです」「よぉシンネ。何かあったのか?出祭で忙しいというのに。前季は一つ実らなかったからなー、悔やまれるが」
「なんだか何やら入祭が一日早まったとかいないとか」「それは…入祭と出祭が同時に今日起こったということか?」
「もしかしたらこんなことが有り得るのでは?実らなかった魂が下界へ行ってしまい今季実った。私は両親を亡くされた兄様の義理の親族の養子である故あとを継げぬ身。お手伝いしかできないのが悔しいです」
「それは実に興味深いな、下界に使いを出すとしよう。従者たちよ、下界に生まれた赤子を見つけ、情報を取ってくるのだ」
「はい、ノルン様」「お前には小さい頃から頭が上がらないくらい助けられている、安心してよいぞ。恵まれなかったからといって私の代で血縁を絶やすわけには行かぬ。天界が安泰のうちになんとかしなくてはな」
「そうですね。おーーっと、兄様はお疲れのようなのでたっぷり休んできてくださいな。あとは私にお任せあれ、早速進めてきます」
「頼もしいな、ではそうさせてもらうよ。会える時が来るのが楽しみだな」
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