第六戦闘配備 第一種戦闘配置 桃色の翼と本物の翼

〜ピンクの場合 其の参の二〜



「へっへーん。アタシってスタイル良くて可愛くて、アタマもいいなんて超天才じゃね?じゃあね、コスプレカマキリまったねー」


「ギリリッ」


めりめりめり

 べきべきべき

ふぁさッ

ばっ……ばばばっばばばばばばばばばばっ


 意味分かんないしッ!擬音ばっかで何が起きてるか分からんってワケじゃないしッ!

 あのコスプレカマキリ、超ウケるマジウケる。背中から羽が生えて空飛んでるんですけどッ!本物志向ってヤツなの?意味分かんなくね?



「ちょッ!?なんでコスプレで空飛んでんのよッ!オカシクない?」


「ギリリリ」


「壱の太刀・猟鳥かりとり!」


しゅんッ

 ぼとっ


「えっ?嘘……殺し……ちゃったの?なんで?ただのコスプレ野郎じゃん?あんなんでも、アタシの魅力にメロメロで推し活グッズとかに金だけ貢いでくれるかもしれないのにッ!」


「コスプレ?なんですそれ?」


「なにこのイケメ……ン?あれ?あれれ?あれ、おっぱいよね?だったら女の……子?まぁ、女の子でもイケメンが言うならいっか!」


「イケメン?それは、なんです?」


 アタシの前に急に出て来たのは、ショタ属性も持ったイケメン風な女の子だった。えっと、だから美少年って言えばいい?でも、女の子だから……イケメン風男の娘?イケメン風女の娘?

 まぁ、要するにそんなカンジ!イケメンは正義って言うから、別にコスプレ野郎の一匹や二匹、どうでもいいよね!



「あのさ、地面に降りてもいい?アタシ、この状態でおしゃべりするのメンドいんですけど?」


「えぇ、構いません。下にはもう蟲族はいないようですから、お話しは下で致しましょう」


 ここは上空。つっても地面から6mくらい?でもアタシは今も右手のリボンをスパイラルさせているから、メンドいの分かるよね?

 でも、このイケメン風女の娘、頭に生えた翼っポイの羽ばたかせて空を飛んでるっポイんですけど?そんなんアリ?コスプレの翼で空飛ぶとかお得過ぎん?だって、そんなんで飛べるんだったら、誰も金を払って飛行機とか乗らなくない?

 あぁ、アタシも飛べるアタマ翼欲しいなぁ……。



「しゅたッと。着地成功ぶいッ!で、イケメン女の娘はアタシに何の用かしら?」


それがしの名前はテーバメ。テーバメ・ガーエシと申します。そのよく分からない呼称はやめて頂きたい」


「オッケー。テーバメね。で、アタシに何か用?テーバメさんもアタシの魅力にメロメロで、ご飯とか金とかくれたりするの?」


「その前に、貴殿の名前を問うても、良いでしょうか?」


「アタシ?アタシは、のや……ううん、アタマピンク。だけど今はピンクでいいわ!」


 ふぅ、危っぶなー!ブラックにもレッドにも言ってない本名を言うところだった。

 今の時代、本名なんて言った日にゃスグに身バレして、SNSに卒業アルバム晒されたり、それと見比べられて「昔はブスだったから整形してる〜」とか、「陰キャそうだし、根暗そうでキモ〜」とか、散々陰口言われて、しまいにゃワンナイトのクセに「カレシだった」とか言うヤツが現れて偉そうに、「あの女は〜」みたいな事を週刊誌にチクって、記者がアタシをパパラッチするに決まってるんだからッ!

 絶対に本名なんて、言うわきゃ無いっしょ!



「ピンク……?随分と変わった名前ですね……いや、失礼。人の名前を馬鹿にするつもりは御座いません。不快に思われたなら謝罪致します」


「そんなのはどうでもいいわ。ところで、ご飯奢ってくれない?」


「ご飯?お腹が空いているのですか?」


 アタシは取り敢えず、欲しいモノを言ってみる事にした。欲しいモノを言えば、たいていは見返りを要求してくるからだ。相手が女の子なら、アタシの身体を見返りとして要求はして来ないだろうけど、まぁ、アタシ的にはそれもアリっちゃアリ。

 可愛いからカッコいいまで、アタシのストライクゾーンは広いからッ!



「それはピンク殿の返答次第と言っておきます」


「アタシの返答?なになに?アンケートみたいな?アタシのスリーサイズとか得意な四十八手ワザとか聞きたいワケ?えっと、スリーサイズは上から……」


「そうではありません。技は多少気になりますが、今はその事を聞きに来た訳ではないのです」


 テーバメが女の子だからアタシのスリーサイズに興味が無いのは分かってたけど、アタシが使える四十八手ワザに興味があるなんてこの娘……ヤるわね!

 実は真面目そうなフリして、ベッドの中では凄いんです!なカンジかしら?



「蟲族に襲われていた事から、ピンク殿が蟲族で無い事は明白ですが……貴女はいったい何者です?」


「アタシが何者?うーん、ただの日本人ですけど?まぁ、このカッコは多分戦隊ジャスティスファイブのだけど、もう解散しちゃったし、アタシはホームレスで住所とか無いから……「日本人」ってカタガキだけしかないんだけど……」


「ニホン?それはニホンですか?」


 ねぇ、意味分かんなくね?「どこの日本か?」だって!日本は日本だし、一つしか無い日本が幾つもあるなんて、聞いたことないし!



「ニホンはこの世界に四つ。ルへヴィア・ームバイス・イムヘソラエラス・ルムガルドシュテイムル・ルネ。全ての略称が「ニホン」です。それで、ピンク殿はどこの「ニホン」ですか?」


「ふぁッ?ナニソレ、超ウケるんですけど!アタシの言ってる日本は略称なんかじゃなくて、普通に「日本」。日の本と書いて日本なんですけど?」


「ヒノモト……よく分かりませんね……。それでは次の質問です」


 ニホンは分かるのに、日本が分からないって、こっちが意味分かんないんですけど?ってツッコミ入れたかったけど、それはそれ、これはこれ。

 アタシの解答次第でご飯が貰えるアンケートなんだから、余計な事は言わないのが正解っしょ!



「貴女は先程空を飛んでいましたが、あれはどうやって飛んでいたのです?我々のように翼を持っていないピンク殿が、あの変な紐で飛んでいたように見えたのですが……」


「あぁ、アタシの可愛いリボンハイビッチグラーデをこうやってくるくる回すスパイラルさせると、浮力が得られて飛べますって、スポンサーから聞いてたから試したんだし。まぁ、ヒーローやってた時は使った事がないから初めてだったけど……」


「ヒーロー?ヒーローとはなんです?」


「ヒーローはセイギの味方っしょ!アタシは“元”だけどヒーローだから、今も「セイギノミカタ」だし!」


「そうですか……」


「これでアンケートおしまい?そんでもってアタシはご飯は食べさせて貰えるの?貰えないの?」


「正直な所を申し上げます」


ごくりっ


それがしには、ピンク殿の善し悪しの判別が付き兼ねております。ですが一概に悪しき者と判別する事も出来ません。拠って、これからそれがしが主の元へとお連れ致します。主がお認めになれば、食料を分けて頂けるでしょう」


じゅるりっ


 こうしてアタシはご飯が貰える可能性と、テーバメの言う「主」が、イケメン過ぎる勝手な妄想でヨダレが出掛けていた。だってそうしたら食欲だけじゃなくて、キャッキャウフフで溜まりに溜まってるモノも発散出来るかもしれないから、一石二鳥だなって思っただけだし!



「では参りましょう!」


ふぁさッ


「えっ?行くって、まさか……飛ぶの?」


 ご飯とイケメンの為なら……とアタシはアタシの可愛いリボンハイビッチグラーデを一生懸命振り回すスパイラルさせる事にした。

 でも、もう疲れるのイヤなんですけどぉ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る