おもいでひろい

８ 階段

　母親が階段を転がり落ちました。落ちては上に這い上がってきてまた落ちていきます。何度か繰り返して鈍い音がして静かになったので見に行きました。母親の指は変な方向に曲がっていて、私は救急車を呼びました。

　ある日の深夜、大きな物音が階下から聞こえてきたので様子を見に行くと祖母の呻き声がしました。階段のすぐ近くにはトイレがあって祖母はトイレのドアを開けたまま用足しをするため、呻き声自体は聞こえてきても不思議ではありませんでしたが直前の大きな物音が気になったので近付くと、ドアに隠れた場所に祖母が倒れていました。肩を脱臼していました。

　私は救急車を呼びました。

　父親が母親を置いて階段を上り、母親があとをついて階段を上りましたが母親が階段から落ちて頭を打ちました、そう聞きました。私は不在でした。

　誰かが救急車を呼びました。

　私が子供の頃、私は同い年のいとこと階段を駆け上がりました。いとこが先に上がり、私が駆け上がると一番てっぺんの段にいとこが立っていて、私は驚いてそのまま背中から倒れてゴロゴロと階段を転がり落ちました。

　最悪。