第6話 階層主の経験値
「防御力無視の一撃。ただモンスターは表示がないだけで、あくまでHP制。素の私だったら弱ってる状態でもあんたを絶命させるのは難しい。だけど解放された私のパッシブスキル『赤の衝動』はその赤い肌、血を見ることで攻撃力を高めてくれるの。つまり、私からするとあんたはびっくりするくらい相性がいいモンスターだったってわけ」
「ぶ、も……」
ミークがその角を引き抜くと、ミノタウロスは血を噴き出しながらついに地面に落ちた。
召喚された時の口調から強者感を感じ取れた割に、一方的にやられ過ぎだとは思っていたけど、召喚されたモンスターや亜人は召喚師のレベルに依存するんだな。
召喚師という職業を与えられた探索者はまだ数が少なくて、その情報はなかなか共有できてない。
探索者試験に受かった後、ダンジョンに侵入するまで嫌になるほどダンジョンについての情報を頭に詰め込まれたけど、まだまだ俺も職業やスキルについては知らないことが多い。
料理人についてももっと、先の何かがある……といいな。
『レベルが【9】に上がりました。ノーマルスキル【衝撃掌】を取得しました。初侵入から1階層主討伐までが24時間未満でした。条件を達成しました。ノーマルスキル【レベル鑑定眼】を先行して取得しました。変更後のステータス画面を表示しますか?』
「はい」
――――――――――
名前:栗原陽一
レベル:9
職業:料理人
攻撃力:76(96)
魔法攻撃力:0
防御力:120(220)
魔法防御力:120(220)
魔力量:0
ユニークスキル:料理強化(料理の腕前が上がり、通常毒によって食べられない素材も食用に変えられ、アイテムポケットにしまうことのできる特殊な料理を生み出せる)
ノーマルスキル:衝撃掌(内部ダメージ発生)、レベル鑑定眼(モンスターのレベルが視認できる)
パッシブスキル:香しい誘惑(モンスターを引き寄せやすい体質となる)
魔法:不可
ステータスポイント:8
【バフ効果】
経験値取得量増加(永続)2倍
経験値取得量増加(永続)3倍
攻撃力強化極小(効果時間ランダム)
防御力強化小(効果時間ランダム)
【ステータスポイント割り振り状況】
なし
【テイムモンスター】
なし
【アイテムポケット】
なし
【次回レベルアップまでに必要な経験値】
443
【累計経験値】
1858
――――――――――
やっとノーマルスキル取得できたけど……。
あんま強そうじゃないなあ。
確かに料理人が覚える戦闘スキルって素手が基本になる気はするけど。
剣士とかなら武器に依存したスキルがあって派手な攻撃がスキルを取得できるらしいのに、料理人だと武器依存って……包丁を使った攻撃スキルでもあるのかな?
「ま、いろいろ思うところはあるけど、もうレベル9か。流石階層主、経験値が多いな。ラストは俺が決めたわけじゃないけど、ある程度ダメージを与えるとフルで経験値がもらえるのは良心的なシステムだよ」
「ねえ」
「よしまずは階層主討伐の証としてミノタウロスの角、それに心臓……は無理そうだから眼球ももらっておくか。後は成果として、俺の生活費として皮も剥いでっと……。これ先にやっておかないと、料理スキルで勝手に料理にされかねないからな」
「ねえってば」
「あ、そういえば初めての階層主討伐って祝い金がもらえるんだよな。今月の収集物売却ノルマ額ってかなり低めに設定されてるし……怪我のことも考えて1日休んでもいいかも。いやぁ、普通の会社員と違ってノルマさえ達成できればいくらでも休めるってのも探索者の利点――」
「だから無視しないでくれる!」
ミノタウロスから素材の剥ぎ取りをしていると、ミークがとうとう怒鳴るように話しかけてきた。
正直なところ召喚士っていう制御装置がなくなってしまった亜人と関わるのは怖い。
だからそれとなく去ってくれればって思ったんだけど……。
「あの、ありがとうございました。最後の一撃助かりました。それじゃあ俺はこの死体の処理がありますので……」
「亜人にお礼、ね……。無視していたのはどうかなって思ったけど、やっぱり変わってるわね、あなた。人間にしては気に入ったわ。それで……助けてくれてありがと――」
ぎゅぅぅぅうううぅぅ。
強気な態度から一転恥ずかしそうにお礼を言ってくれた瞬間、それを遮るようにミークの腹から音が鳴った。
俺はまだそんな気分じゃないけど……。
レベル10になったときまたノーマルスキルを覚えられるかどうか気になるから……。
「これは、えっと、丁度召喚されたのが昼食前で――」
「階層主を倒したお祝いってことで、ちょっとした打ち上げでもしましょうか。『料理強化』発動」
『食材ランクC+、ミノタウロスを確認。要望を汲取り、2人前の料理を作るために素材を切り出せるか確認。……。問題なし。ミノタウロスに触れてください』
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