第3話 異常バフ
アナウンスが終わりスライムの死体を見る。
すると、その情報に変化があった。
『スライム×3:ランクD、仕上がった料理によるバフ予想【防御力強化小】。選択可能確定基本バフ【経験値取得量増加】、【全属性耐性付与】、【火事場の馬鹿力】』
数の記載が増え、ランクDというアルミラージよりも低いランクなのに、防御力強化のバフ効果は【極小】ではなく【小】。
これは効果に期待ができる。
「でもスライムの料理ってあんまり想像できないけど……。あ、もう始まった」
勝手に動く身体。
どろりと溶けたスライムの肉? 核と思われる球、目玉、これらをそれぞれから回収し、もう半分も入っていない水筒にすべてをぶち込み、軽く火にかける。
この調理工程……これでこれから一体どんな料理が生まれるというのか。
「分からないけど、とりあえず重複できるなら経験値取得量増加を選択してっと……よし、これでOK――」
『経験値取得量増加の選択を確認しました。【スライムティー】が完成しました』
「……。これで完成って、マジ?」
加熱されてはいるけど、さっきまでその辺を飛び跳ねてたスライムを突っ込んだだけなんだけど……。
衛生上大丈夫なのか?
いやまぁ、スキルの効果文を読むに大丈夫なんだろうけど。
「とはいえ……」
――――――――――
【料理】
スライムティー【C-】
【モンスター別バフ効果】
防御力強化小
【選択バフ(共通)】
経験値取得量増加
【取得可能経験値】
6(12→36)
――――――――――
取得できる経験値量がもう異常なんだけど。
スライム1匹が2で3匹で6。
それが重複前のバフ効果で12、重複後で36。
ということは俺の今の取得できる経験値は通常の6倍。
こんなの見せられたら躊躇いなんて軽く吹っ飛ぶ。
「ありがたくいただきます。……。……。そんでもって美味いのかよ。甘くて、目玉とか核は餅みたいで、あれに似てるな……タピオカミルクティー」
『レベルが3に上がりました。ステータスを表示します』
――――――――――
名前:栗原陽一
レベル:3
職業:料理人
攻撃力:16(36)
魔法攻撃力:0
防御力:30(130)
魔法防御力:30(130)
魔力量:0
ユニークスキル:料理強化(料理の腕前が上がり、通常毒によって食べられない素材も食用に変えられ、アイテムポケットにしまうことのできる特殊な料理を生み出せる)
ノーマルスキル:なし
パッシブスキル:香しい誘惑(モンスターを引き寄せやすい体質となる)
魔法:不可
ステータスポイント:2
【バフ効果】
経験値取得量増加(永続)2倍
経験値取得量増加(永続)3倍
攻撃力強化極小(効果時間ランダム)
防御力強化小(効果時間ランダム)
【ステータスポイント割り振り状況】
なし
【テイムモンスター】
なし
【アイテムポケット】
なし
【次回レベルアップまでに必要な経験値】
50
【累計経験値】
58
――――――――――
相も変わらずノーマルスキルが増えたりはしないけど、防御力のバフ効果が思っていた以上に大きい。
130という値は確か1階層の階層主を倒すのに必要な値を超えてたような。
「これならあっという間に2階層への侵入条件を突破できるかも」
2階層へ続く階段には探索者協会が結界を張っていて、出来るだけ死人が出ないように配慮されている。
その条件というのが階層主を討伐した証を保有していることであり、これはパーティーでもなんでも、とにかく階層主を倒して、その素材を証拠として提出すれば探索者協会からもらえる。
俺たちの給料は基本給+出来高制。
この出来高制というのは集めてきた素材を国営の企業が提示する買取り価格の10パーセントがもらえるというもので、例えばさっきのスライムの核であれば確か、1つ500円で買い取っているから俺たちが給料として加算できるのは50円。
1階層のモンスターはどれも似たような儲けしかない。
だからどの探索者もまずは証をもらい2階層に向かうことを最大の目標にして……多分同期の中にはもう階層主に挑んでいる人たちもいるんだろうな。
一応階層主はその階層のモンスターたちが生活しやすいような行動を促す役割を担っているから、ダンジョンはそれを絶やすわけにはいくまいと、1日4回までリスポーンしてくれる。
研究の結果どうやらダンジョンはその維持のために、モンスターからとれる魔力結晶が必要らしく、その供給を絶やさないようモンスターが交尾、繁殖しやすい状況を作っているのだとか。
ちなみに俺たちがステータスを得られるのは、今度はその増えたモンスターたちを魔力結晶にするためらしい。
「だから2階層に急いで向かうような好戦的な人間はダンジョンからすると都合がいい。だからダンジョンからもらえる恩恵も大きい。えっと、魔法は無理だけど、ノーマルスキルの入手条件にレベルアップの速度とか、初侵入から階層主討伐までの時間ってのがあったような――」
「くそ! やっちまったやっちまったやっちまった! まさか階層主がこんなに強くて……しつこい野郎だったなんて! お前! 料理の奴! お前なんか一発で殺されるぞ!」
満たされた腹を撫でていると、視線の先に見える木々の陰から同期の探索者と思われる男と殺意に満ちた1匹のモンスターが姿を現したのだった。
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