第20話 目線

 ふと感じることありますよね。


 誰かに見られてる。目線を感じる。振り向くとやはり誰かが見ていた。


 ドキッとする時は、異性の好意の目線。


 突き刺さり痛い時は、恨み、妬み、怒りの目線。


 ホワーと感じる時は、ただ何となく見ている目線。


 金曜日の帰りの電車の中、時計はもう24時になる頃である。


 電車は金曜日のせいか結構混んでいるし、しかも酒臭い。さすが皆疲れが出ているのか、居眠りをしている乗客が多い。


 私も何とかシートに座れたので、ついウトウトしていた。


 電車が急にスピードを落とした。


 首筋に、背中に、背骨の神経に冷気が刺し込む。


 後ろを振り向いた、ガラス窓である。


 スピードを落とした電車からは、闇の中に夜景が見える。電信柱が後ろにゆっくり飛んでいく。


 快速のため踏み切りを通過した。踏切を通過する際に、踏切の中に女性が立っていた。


 一瞬ではあるが、はっきりと目に焼き付いた。


 『危ないな、踏切の中に人が入ってる』


 数秒経ってまた背中が凍る。誰か見ている。後ろはガラス窓なのに・・・・・


 振り向いたガラス窓の外側に、血塗れた女性の顔と手がへばりついていた。


 悲鳴をあげそうになるのを、何とかこらえた。回りの乗客はすっかり眠っている。


 恐る恐る振り向いたガラス窓には、ただ、街の夜景のみが映っていた。


 闇を割いて走る電車の窓の外、先程の光景は居睡りで見た夢だったのだろうか。


 目線を感じた背中が冷たく痛む・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る