5章

第27話 光の先

 しばらくすると、空澄は手招きして歩き始めた。

「どこへ行くの?」

「彼を迎えに行かなきゃ」

 暗闇の中、ぼんやりと光って見える空澄の背中を追いかける。歩くのが速い空澄に置いていかれないように、沙凪はたまに早足になったり小走りになったりする。空澄は、沙凪がギリギリついてこられる速さを保って歩き続けた。

 しばらく歩くと、暗闇の先が白くかすみ始めた。空澄はその手前で足を止める。

「彼が必要。沙凪だけじゃここから出られない」

 空澄が横にずれて道を開ける。ここからは沙凪ひとりで行くということだ。

「大丈夫。ここで見てるから」

 長いトンネルの出口のような真っ白な光に向かって、沙凪は進んでいく。

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