お墓の掃除

 お盆も近いのでお墓の掃除をしていました。すると、墓石のてっぺんで、鮮やかな黄緑色の蟷螂が、じっと空を見ています。私は、「うちのお墓は蟷螂の足の下にあるんだな」と思い、愉快でした。

 そこへ一匹のアシナガバチがやってきて、父の卒塔婆にとまりました。私は、「巣を作られたら困るな」と思い、お墓を一回りしてみました。巣はありませんでした。でも、アシナガバチは父の卒塔婆の上をゆっくりと這い回り、しきりと顎を動かしています。

 ハチは、卒塔婆の表面を顎でこそげ取って繊維を集めているようです。改めて卒塔婆を見ると、部分的に表面が毛羽立ったようになっていて、父の戒名も削れたようになっていました。

「巣を作るために、繊維を取りに来ていたのか」

 アシナガバチが飛んでいきます。

 「あの先に、父の戒名が編みこまれたアシナガバチの巣があるんだ…」

 思い出したように蝉が鳴き始めました。今日も暑くなりそうです。

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