第2話 騎士とは?
騎士とは?
【定義】
国民を護り、女王への絶対的忠誠と女神への信仰を尊ぶ模範的戦士から派生した階級。騎士という言葉は偉大な女王の尊称にも使われる。騎士に選ばれることはそれくらい名誉なことである。何者よりも誇り高く、何者よりも勇敢な彼女らは、殿方への礼節を尊び、寛容で謙譲。正義と主君への忠誠、武勇を重んじる。
【騎士の装備・武器】
メイス
騎士の時代では、鎧が非常に発達しました。これに対する有効な攻撃として、中世では打撃武器は見直されました。その中心となる武器がメイスです。遠心力を利用するため、頭部を重くし、放射状の鉄板やスパイクがつけられています。渾身の一撃が命中すれば、プレートアーマーもろとも、着ている人間の骨まで砕いてしまう。
恐ろしい威力を備えています。
メイス。頭部に放射状の鉄板や、スパイクをつけた強力な打撃武器。頭部に錐(きり)のような刃先をつけたものもある。柄が長くなればなるほど威力も増すが、片手で持って馬上で使う場合は、50~60cmが限界だったと思われる。プレートアーマーに対する有効な武器として普及し、プレートアーマーの衰退とともに姿を消していく。
プレートアーマー
プレートアーマーは、金属板ですっぽりと身体を覆ってしまうというものです。ヨーロッパでは、弩や長弓の発達でチェイン・メイルがあまり役に立たなくなったこと、騎士のトーナメント用に鎧が必要とされていたことから登場してきました。
最強のタイプの鎧と言えますが、欠点もあります。それは、鎧を含めたフル装備の重量が四十キログラムはあったことで、なかには六十キログラムを超すものもあり、長時間戦うことはできません。またプレートアーマーも銃火砲が普及してくると無用の長物となってしまいました。(親方)
ショート・ソード。全長70cm~80cm程度。刀身は柄側の幅が広く先細りのものと、均一の幅を持ったものがある。短い刀身は集団戦用に作り出されたもので、乱戦においても味方に被害を与えないように考慮したものである。
ロング・ソード。全長80~95cm程度の中世後期頃の剣。騎士たちが馬上で使いやすい長さで、ナイト・ソードと呼ばれることもある握りは片手分しかなく、鋭い切っ先は突くことに、両刃の刃先は切ることに適している。
タック。メイル・ピアスィング・ソードの一種。鎧を突き通して、相手を傷つけるために考え出された刺突専用の剣。針状に作られた刀身はちょっとしたプレートアーマーなら貫通することができる。柄を長く作ってあるので、両手を使うことも可能。
フランベルジュ
長さ:130~150cm 重さ:3~3.5kg
中世後期の、波形の刃で有名な両手剣。その刃が炎の揺らめきにみえることから、フランス語の炎(フラム)からフランベルジュと名付けられた。この刃で斬られると、傷口が広がって、治りにくい傷になるという美しいが残酷な剣である。
バスタードソード
長さ:120~130cm 重さ:2.5~3kg
中世後期、よろいが進歩してから使われた剣。片手でも両手でも使えるため、バスタード(雑種)と呼ばれる。別名「ハンド・アンド・ア・ハーフ」
キドニー・ダガー。つばの形が腎臓(キドニー)の形をした短剣。ボロック・ナイフ(こう丸形短剣)とも呼ばれる。
ロンデル・ダガー。柄頭とつばが円盤(ロンデル)型をしている短剣。
レイピア
長さ:80~100cm 重さ:800g
銃が広く使われた近世に、日常の剣として使われた。細身だが、突き刺しても曲がったりしないように意外と重い。
フォールション
片手剣だが、片刃で幅が広く短い。打ち切り用のため、重く作られている。なたのような効果があり、切り合いに適している。刃は緩やかな弧を描いており、峰がまっすぐになっている。切っ先に向かってだんだんと幅が広くなっているのはフォールション独特の形。北ヨーロッパで使われたサクスを起源とする。
カッツバルゲル。カッツバルゲルとはドイツ語で"喧嘩用"といった意味。全長70cm程度のシンプルな作りだが、S字形のほどのつばに特徴がある。これは、洋服に引っかけたり、布を巻きつけたりできるようにしたもの。15世紀~16世紀頃にランツクネヒトが好んで携帯した。
プレートアーマーの着方
①下着と拍車をつける。プレートで覆われない部分はチェイン・メイルになっている。
②すねあてをつける。
③ひざあてと脛あてをつける。
④首あてをつける。
⑤胸甲をつける。
⑥胸甲に皮のベルトで、
腰を守る草摺をつける。
⑦胸あてをつける。
⑧肩あてをつける。
⑨手甲(ガントレット)をつける。
⑩長剣と短剣を下げたベルトをつけ、兜をかぶる。
中世において、短剣はミゼリー・コードなどと呼ばれることがありました。この言葉はもともと「慈悲」(ミザリー)という言葉に由来しています。
戦場では、馬から落ちて苦しんでいるものに対して、とどめの一突きを加えるために短剣が使われていました。
【騎士になるには?】
騎士就任式の手順
1 従騎士が主君の前に進み出る。
2 主君は司祭から渡された騎士の素質を世界に与えられた者のみが操ることのできる特別な剣(一種の聖剣)に革帯をつけ、従騎士の胴に締めてやる。介添人が銀の拍車を金の拍車に取り替える。
3 介添人が兜、鎧、かけ紐のついた盾を身に着けさせる。
4 生まれながらに本能として既に身についた騎士道の誓いを唱える。一種のトランス状態になるのだ。
5 主君が従騎士の首あるいは肩を優しく叩く。これを「首打ち」の儀式という。以上で就任式は終了、あとは楽しい宴会となる。
【国民に対して】
騎士は国民を何よりも優先し、何者よりも愛さなければならないが、騎士となる運命を背負う者は皆、胎児の時点で、国民に無限の敬愛を抱いている。
従士
英語ではスクワイヤという。有力者に仕え、彼らを守り軍事的役割を果たす人々。古代ゲルマンから始まった制度で、従士は自由意志による契約で主人に忠誠を誓い、主人は衣食住や武具、軍馬などを提供して彼らを保護する。封建社会において身分化され、世襲のものとなった。
【騎士道とは何か】
神聖ローマ帝国皇帝と自称したカール大帝(シャルルマーニュ大帝とも言う)がいた8~9世紀に、カロリング・ルネサンスという、ルネサンスに先立つ文化の栄えた時期がありました。このころから、騎士は徳高く優雅で洗練された戦士であるべきという規範ができたのです。
そして、この規範を破った騎士は、人間であることさえ赦されずに、死後必ず地獄に堕とされます。
騎士道とは、騎士の称賛される特質をまとめたものです。それは、武勇・信義・寛容です。そして、それに続くのが、敬虔と礼儀です。
武勇 武勇に優れていなければ、騎士の名誉は保てない。
信義 主従の約束を守ること。ただし、相手が裏切ったのにこちらだけ守り続ける必要はない。
寛容 けちけちせずに物を与えよということ。プレゼントを送ったり、宴会に招いて豪華な食事を振る舞ったり、子弟を預かって教育を与えてやったりと、自分の家臣に気前のいいところをみせてやらなければならない。
さもなければ、あそこの主君は寛容ではないという評判が立って、家臣が離れていく。
敬虔 女神を信じて慎ましくすること。どちらかというと、騎士たちよりも、修道騎士の持つべき美徳である。修道騎士とは、修道士でもある騎士たちのこと。十字軍に参加したり、聖地巡礼をする人々を案内し道中の危険から守ったりといった行動をする。
礼儀 優雅で礼儀正しい振る舞いは、それだけで人々の注目を集める。
兜の面々
実在する兜の中で代表的なものを紹介します。
ノルマンヘルム(騎士とは無関係だが便宜上ここで紹介する)
8~12世紀のヴァイキングの兜として有名
鼻の前に面当て(ネーザル)があるが、これがあるだけで、大いに防御力が高まった。ちなみに、ヴァイキングの兜に牛の角のような飾りが付いているというのは、後世の誤解で、ほとんどのヴァイキングはそんな兜は使っていない。
バレルヘルム
12~14世紀のヨーロッパで使われた兜。頭を完全に覆うバケツ形である。目のところには横にスリットが入り、口のところには呼吸のために小さい穴がたくさん開けられている。目のスリットと顔の中央のラインで、十字架を象ったものも多い。グレートヘルムとも言う。
アーメット
13~15世紀のヨーロッパで使われた、頭を完全に覆う丸型の兜。頭をくるんで首のところできっちり止めるために、複数のパーツでできている。そのため、首まわりできっちり板金でカバーできている。頭を覆うバイザーは、口のところが尖っているのが特徴。この尖りは、前からの突刺に対して傾斜を付けて刃をそらす働きがある。バイザーは、両脇で鋲止めされており、上にあげて視界を広く盗ることができる。重さは3.5kgほどある。
バシネット
14世紀ごろに広まった、頭を覆う鉢形の兜。首のあたりまでの長さがあるので、すっぽりかぶってしまえば、後頭部もカバーできる。そして、その上で顔を隠すバイザーを降ろして、頭全体をカバーする。首全部はカバーできないので、コイフの上からかぶることも多かった。
コイフ
中世ヨーロッパで広く使われた、
参考書籍
『幻想用語辞典』
『幻の戦士たち』
『英雄列伝』
『武器屋』
『シナリオのためのファンタジー事典 知っておきたい歴史・文化・お約束121』
『マビノギオン』
『アーサー王物語』
『ホビットの冒険』
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