外伝 3-0話 ライブ会場で鬼ごっこにゃー


私は、合宿最終日の前日にあることを思いついてしまった。

今はこのライブ会場がほぼ貸し切りで、常時自由に使えるということ。

走る練習も、飛ぶ練習も合わせてしたい。

そして合宿ということで、楽しく遊びたい。

つまり両方できることと言えば。


「ライブ会場敷地全体を使った鬼ごっこ?」

「そうにゃ」

「本気で言ってますの?かなり広いですわよ」

「私はとても楽しそうですわ~」

「前代未聞です」

「私はいいと思うけど……」


エリとロミは若干反対派で、スライとミシュは肯定派で、ちょうど分かれることとなった。


「でも鬼は誰がするのですか~?」


スライの質問に私は目を見開いた。

そう、そこまで深く考えていなかったのだ。


「とりあえず今日は皆休みだし1回聞いてみたらどう?」

「それしかないですね、そもそもこんなところで鬼ごっこ。先生の許可がないといけませんからね」


私たちは、とりあえず他の組に全員での鬼ごっこについて提案した。すると、まさかの即答で参加したい!!というので全員あっという間に集まった。


「この敷地内すべてを使った鬼ごっこですか??制限時間は、朝8時から夜5時ですか」

「はい!」

「ふふ……面白いではありませんか!先生は大賛成!」

「ですがまだ鬼が決まっていなくて……」

「ふ~む……でしたら私が集めてきましょう」

「先生が!?本当ですか!!?」

「その代わり、私は鬼側につくわね」

「「「「ええええ!!?」」」」

「先生を含め集めた人たちと、ここにいる1年生たちでの鬼ごっこです!」


一応決まったということで、私たちはテントに戻っていった。


「まさか先生が鬼にゃあ……」

「ドラゴン族はかなり飛ぶのが桁違いに速いですわ〜先生にだけは見つかったらやばいですわ〜」

「逃げ切れないにゃ?」

「飛行戦は圧倒的不利ですわ~」

「となると、私たちが重要になってきます。とはいえ、上空から飛んでくるので毎回上に警戒しないといけませんが」

「先生の事ですわ~絶対とんでもない人たちを集めてきますわ~」

「1年生って何人にゃ?」

「全員で45人ですわ」

「それでこの大きさだよね?隠れれば行けると思うけど」

「呼吸音でバレますわよ」

「耳良すぎにゃ!?」


私達は今のうちに、必死で作戦を立てる。

隠れる場所、逃げる場所全て把握しないといけない。


「じゃあライブ会場の中や、山はどうにゃ?飛ぶところないし、上から見つけにくいにゃ」

「山は圧倒的に体力使いますわ、中だと隠れられますが、行き止まりが多いですわね」

「結局のところ有利な場所は、無いということですね……」

「誰が鬼になるか、によっても変わってきますわ~」

「とりあえず今日は寝袋あるので、ライブ会場で寝ましょうか、テント早くたたみますよ」


ロミの言葉に、私たちは急いでテントをたたんでいく。やはり作るよりも崩す方が時間がかからず、あっという間になくなってしまった。

ちなみにこの時大変だったのは、テントのシートをすべて取り終え、足場を抜くときだった。一応ミシュとスライが上空で持ってくれていたこともあるが、かなりの重さの為、上空2種族のは支えありでも、なかなかきつかった。その時のエリの怪力パワーには、目を見開くものがあり、なんと、ほぼ1人で下を支えていたのだった。


「なんかあの時の努力がむなしいですわね」

「仕方ないです。料理でも作るのは難しく、食べるのは簡単と言いますから」

「楽しかったですわ~」

「とりあえず行こうか、もう暗くなってくるし」


ということで、私たちはライブ会場の中に入っていく。


中はちゃんと荷物が固められており、ほかの組も、明日に備えて準備会議をしている所だった。

私達の事を見つけると、周りから作戦についていろいろと聞きに走ってくる。

私達はとりあえず、危険なところと注意するところを伝える。

ほかのチームもそのことは気づいており、結局なんも新しいことを聞けず終わるのだった。

私たちは明日に備えなるべく、今日は早めに寝ることにしたのだった。


次の日。


「おはようにゃ~」

「おはようございますわ~」

「おはよ」

「まだ眠たいですわ!」

「文句言わないでくださいエリさん!」


私たちは簡単におにぎりを食べている。

しばらく待機していると、周りも徐々に起き始める。

そうしてじっとしていると、いよいよ鬼ごっこ開始1時間前になる。

ひとまず私達は、ライブ会場全体を歩き、行き止まりだけを確認する。

そうしないと実際追い込まれたら、何もできず捕まってしまうからだ。

歩きだと残り1時間で、見つけることは不可能の為、小柄なミシュが飛んで、ライブ会場内を全て探してくれた。

このライブ会場では、個人的にミシュが最強だと思っている。

その理由としては、ライブ場ホールの中はかなり広い。

よって先生も飛べるが、ホール以外は天井が低いので、恐らく、高く飛び続けるのは、かなり難しい。

そうなると、ミシュの小回り低空高速移動がかなり強い。

と考えたのだ。


ピンポーンパーンポーン


『1年生の皆さん!それではライブ会場の正面出入り口に集まってください』


と放送が流れる。為鬼側のチームの発表だろう。

私達が向かうと、そこにはもうみんな集まっていた。


「はーい!それでは今から鬼ごっこをしたいと思います!ルールをまずは発表します。

まず鬼ごっこ範囲は、この敷地内全域として、30分後の8時から夜5時までの長期戦となります!

昼ご飯は放送で設置した。

と教えられるので、各自探して取りに行ってください!ちゃんと袋で全員分ありますので1人1袋づつです!

そうして今回。鬼は私を含め2人です!また、ここからは私たちが考えたのですが。

定期的にミッションがあります!

それに成功すると、逃げる側に有利になる報酬があり、失敗すると鬼1人追加です!!」


私達は大きく頷く。

つまりミッションは出なくてもいいけど、出なければ失敗扱いとなり、鬼が増加する。

こういうことだった。


「そうしていよいよ……私たちの鬼を発表します!鬼は全員で5人!まずはこの方です!」

「わぁー!推したちがいっぱい!!」


私たちの上を飛び越えると、そのままピョリンが先生の隣に立つ。


「高跳び第1級選手権【ホライズン】優勝者。

大会記録更新15mのピョリンさんです」

「高跳び15mにゃ!!?」


会った時から、ものすごい跳躍力だとは思っていた。

しかし、さすがにここまでとは思っていなかったのだ。


「推し達を捕まえるのは、いささか私には酷な話ですが。

間近で見れるならやってやりますよ!!」

「そして次はこの方です」

「ちょっとごめんね~」


後ろから1人歩いてくる、見たことある顔だった。


「お久しぶり!シャーリン達!」


夏祭りでサインをもらった。

サフィーだった。


「この方は、陸上3級王の称号の持ち主で、私たちの世代で活躍した1人のサフィーさんです!!」

「わああ~!!本物です~~!!」

「うそ……なんでここに……」

「本物……」


周りから衝撃の呟きが聞こえてくるが。

一番喜んでいたのは、ピョリンだった。


「そして最後は……この方です!!」


1人がまた後ろから歩いてくる。

マントを羽織っており、よく顔が見えない。


「私が最後の4人目だ」


とマントを脱ぎ捨てると、目の前にいたのは。


「「「「生徒会長!!?」」」」


私達全員の声がシンクロする。

まさか生徒会長が、来ると思わなかったのだ。


(もしかしてシュレーヌ生徒会長って、結構寂しがり屋にゃ?)


「そう!最後の4人目は歴代最強者。

シュレーヌさんです!」

「ちょっとシュレーヌさん!マントは片付けてくださいよ!?」


どうやらリンカさんも、後ろからついてきたようで、慌ててマントを拾い上げる。


「さぁ!皆さん今から8時になるまで、逃げてください!最初私とピョリンが、8時になり次第、放送で確保に向かいます!!」


という言葉を最後に、私たちはそれぞれ逃げる事にした。

こうして合宿最後の、鬼ごっこが開始されたのだった。

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