第73話 たこ焼き

カミヤ協魔国建国際ということで小さいがスプレッド邸内で催しが行われた


「ああ・・・」


手を膝についてどうすれば良いのだろうというようにナナは悩む。カミヤ協魔国の建国は前代未聞であり、他の魔王にも相談せず行われたこの宣言はいわば危険な宣言である


「ナナさんどうしたんですか」


贅沢な料理を前にアリスやルミナは相変わらず子供のようにはしゃいでいるがナナさんはあまり食欲がないように見えた


「自分の不甲斐なさに絶望しているかなぁ・・・」


何があったんだ?


「ロキ様になんて言おう」


「ああ、そういうこと」


確かにこんな勝手なことをして他の魔王も黙っていないのだろう。そこまで考えてなかったなあ


「アリスって子はスグルの妹なんでしょ。何とか止められないの」


「俺が止められるならそもそもこんな危険なことはせずに静かに暮らしてたよ」


でもアリスは自分の好きなように生きてほしい。過保護というのはアリスのためではなく俺が安心するために過ぎない。本当の意味でアリスの幸せを守るというのは見えないところで支えることだと思う


「あ~もう知らない。ロキ様も融通が利かないし・・・」


「誰が融通が利かないって?」


突然、冷徹な言葉がナナの首筋を通る


「ひゃっ・・・ロキ様・・お疲れ様です」


「奴隷も一緒なのか。ちょうどいい、今から状況を説明してもらおうか」


スグルは突然の魔王ロキの出現に驚き、咄嗟にその場から逃げようとしたが無理だった


「俺の名前は奴隷じゃないですけど・・・」


聞こえないくらいの声で文句を言ってやった


「説明なら私がするわよ」


今から殺されてしまうかのようにぶるぶる震えていた俺とナナさんを救うかのようにルミナが話に割って入った


「ルミナ、いったいこれはどういうつもりだ」


「そのままの意味よ、魔族と人間との懸け橋になるって決めたの」


「その考え方に対して文句は言ってない。なんで相談しなかった」


「時間がかかるから。これが私たちにとってベストな選択だったのよ」


ロキはルミナをひたすら問い詰めるがルミナは一歩も引かずに答える。その態度に諦めたかのようにロキは何とか対応しようと決心したようだ


「ロキ様、このたこやき・・というものがとても美味しいですよ」


納得のいかなそうにムスッとしたロキのもとに一緒に来ていたリオはたこ焼きを運んだ


「ん!」


「美味しいですよね」


「ああ、初めての感覚だ」


たこ焼きはロキの口に合ったようで機嫌を取り戻した


「魔王ロキ様、その食べ物は気に入ってもらえましたか?」


「ああ、お前は確か・・・」


「私はスグルの妹のアリスと申します。不肖な兄がいつもお世話になっております」


「兄とは違って礼儀正しいな」


「ありがとうございます」


アリスは向こうでのスグルの様子などを聞いていた。これはロキにとってアリスとの初めての交流になる。しかし、この時はまだアリスの恐ろしさなど知る由もなかった


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