第1話 異世界転移

「ねぇ・・・」


なんだアリス、俺は少し眠いんだ


「ねぇってば、お兄ちゃん。凄いよ!外だよ」


目を開けると、そこには見たこともない景色が広がっていた。町のど真ん中に二人で立っている。俺もアリスもここが元の世界でないことは少なからず感じた


「そんなことより、延命装置なしで大丈夫なのか」


「大丈夫!しかも自由に動き回れるよ」


妹は嬉しさのあまりはしゃぎまわっている


「ちょっ、そんなに走り回るなよー」


妹に手を引っ張られながらいろんな所に連れまわされた


「やったー!お兄ちゃん、ここ異世界だよお」


「すっげぇな」


見たことのない店、見たことのない文字であふれかえっている。人々の往来も盛んな街のようだ。服装も一昔前の西洋人が来ているような、そんな感じだ。俺たちの現代ファッションはここでは浮いた存在となっている


「きいてきいて、アリスこの世界の文字理解できたよ」


「まじかよ、俺にはさっぱりだ」


「これはね―」


アリスはお店の人が話した内容、文字、それに対応するものから規則性を見つけ出しそれを統合することによってこの世界の文字を理解していたようだ


「異世界もののライトノベルを読み漁っていたアリス様に任せなさい。」


アリスは自信満々であった


「でも、問題はお金だよね、この世界でのお金の単位はメリスだってさ、どうするぅ、盗んじゃう」


「いや、盗むなよっ!」


小悪魔のような笑い方をしているアリスを見てぞっとした。


「おいっ、誰かあの泥棒を捕まえてくれ!」


おいおいアリス、なにやってんだ、と思ったが横を見ると、えっ、私じゃないけど、と冷たい視線を送られる。


「捕まってたまるかよ」


前方から体をクルリクルリとうまく曲げながら、子ども?と思われるような獣っ子が行きかう人達をかわしていく。


「ちょっとアリスさん、なんでにやにやしてるんですか?」


アリスに返事はなく、ただ前の獣っ子をずっと見つめている。そして―


「ここだぁ!」


そう言って突然アリスは獣っ子の足をつかんだ。だが勢いに負けそのまま連れていかれてしまう。


「ちょっと、待てぃ!」


俺は焦ってアリスの後を追う。


「なんだコイツ、コノヤロー、離せって」


「おにいちゃ~ん、た~すけて~」


俺ってこんな足速かったっけ。そんなことはどうでもいいけど早く捕まえないと。


「おりゃあ!」


と俺は二人に向かってダイビングした。


「アリス大丈夫か?ケガしてない。」


アリスを見る感じ大丈夫そうだ。むしろ楽しそうである。


「犯人たいほお!えっへん」


「アリスさん、今人質だったよね。どちらかと言えば俺が捕まえてたでしょ」


なんやかんやで窃盗犯もしっかり確保できた。すると、周りに人たちからは拍手が送られる。


「助かったよ、君たち本当にありがとうね」


周りの人たちから褒められるのはなんだか照れくさい。


「「いやぁ、どういたしまして」」


ことの顛末は獣っ子は王国の騎士団に身柄を引き渡さることで解決した。そして、被害者である中年のおっさん、ミゲルさんはぜひ感謝をさせてほしいということで家に招かれることになった。


着いた場所はお店のようだ。


「おじさんの店はいろんな物がいっぱいありますね、これとかなんですか?」


「ほんとに何も知らないんだね、これは― 」


アリスは異世界にきてからずっとはしゃいでいる。少し疲れたが、あんなに元気にしているアリスを見れて幸せだ。


今日は特別にミゲルさんの店に泊まらせてもらった。


あぁ、ふかふかのベッドだ。


「お兄ちゃん、今日はいろいろ情報が集まったよ、しかもこの世界には魔法もあるんだって」


魔法か・・・もしかしたら俺、最強の魔法使いになったりして


「本当に異世界ってすごいなぁ、ところでアリスさん、なにしてるの」


「腹筋だよぉ、アリス強くなりたいの!」


まったく、とため息を吐いたが結局俺も負けてたまるか、と同じく腹筋をした。


「オラァァ!」 「ウリャァァ!」


今夜は二人で少し騒がしかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る