第86話 お前らしいな

 俺とレイン、雪奈の3人は休憩室から出て703の部屋でスタッフの人とセッティングをしていた。

 事前にパソコンのスペックや周辺機器等を伝えていたので、いつも使っているものと同じものを使える。

 

 スポンサーをしてもらっているとはいえ、こんなにしてもらっていいのかという気持ちにもなってきた。


「ま、試合まで時間あるしトレーニングモードでもしとく??」


「そうですね…… ただ、可憐ちゃんがまだです」


 俺たちがそんな話をしていると、部屋のドアが開いて可憐が斉藤先生と入ってきた。

 可憐はいつもの病院の服じゃなく、フリフリの白の半袖ブラウスにスカートといった女の子らしい格好をしていた。

 

  (普通に似合ってるな……)


「お待たせ〜 ごめんね、おそくなって〜」


「おはよ、可憐」


「おはようございます!! 可憐ちゃん!!」


「これが可憐さんのリアル…… だと……」


「どう?? ボク可愛い??」


 可憐は服をフリフリとさせながら言った。


「めっちゃくちゃ似合ってます、本当になんというか可愛いっす……」


「似合ってる」


「最高です!!」


「えへへ〜 ありがとね〜」


 俺たちがそれぞれ可憐の服を褒めると、可憐はニコニコして満足そうな表情を浮かべた。


「そいや、点滴は大丈夫なのか??」


 この前、病院に行った時は点滴を刺していたが、今日は無かった。


「うん、最近は良くなってきて 休憩の時に1回注射すれば大丈夫〜」


「そっか、よかった 少し遅れてきたから心配でさ」


 間に合いはしたが、可憐は集合時間より10分ほど遅れてきた。

 開始時刻まで余裕はあるが、何かあったんじゃないかと俺たちは心配していた。


 俺がそういうと、可憐は目を逸らして斉藤先生が呆れた顔をした。


「えっと、その〜 これはね〜」


「はぁ…… ご心配かけてすみません 可憐さんは普通に寝坊しただけです」


「ふっ……」


「なんだ、そういうことかよ」


「可憐ちゃんらしいですね!!」


 俺たち3人は可憐が寝坊したことを聞いた瞬間、安心と同時にくすっと笑った。

 

「ごめんね〜 アラームセットしてたけど起きられなくて、斉藤先生に起こしてもらった〜」


「まあ何事もなくてよかった とりあえずデバイスチェックするぞ」


 俺たちは各自パソコンの前に座り、スタッフの人と一緒にモニターやパソコンの設定をした。

 5分くらいで設定は終わり、開始時間まで30分ほど余裕ができた。

 

「どーする?? 少し練習してもいけど、時間的に微妙だよな」


「ん〜とさ、悠也 彩音ちゃんと会ってみたいんだけどいいかな……」


「確かにリアルじゃ会う機会もそんなにないだろうしな、いいよ ついてきて」


 俺と可憐は一緒に703を出ようとした。


「わ、私も行ってよろしいでしょうか??」


「雪奈はぜっっったいにダメ!!」


「そ、そんな〜 そこをなんどがぁ〜 なんかやる気うせできまじだ〜」


 雪奈は泣きなら俺に言った。


「……はぁ、しょうがねぇな まあいいからこの部屋にいて、多分いいことあるから」


「本当ですか……??」


「本当にいいことあるから、ここの部屋にいて ただし、絶対に手を出さないこと!! わかった??」


「よくわかりませんが、わかりました!!」







 俺と可憐は彩音たちのいる701の前へ行ってノックをした。

 中から彩音のどーぞという声が聞こえたので俺と可憐はドアを開けて中へ入った。


 部屋の中には、さっきいなかった有栖を含めた4人全員がいた。


「にーちゃんだ!! それと可憐ねーちゃん!!」


「おはよ〜」

 

 俺は有栖ちゃんのところへ行った。


「あのさ、有栖ちゃん」


「なんですか……??」


「一生のお願い、俺たちの703の部屋に一瞬だけ行ってもらってもいい??」


「どーしてですか……??」


「それは……」


 言えない、まさか雪奈のやる気を最大限に引き出して、大会の勝率を少しでも上げたいなんて。


「これは君にしかできないことだ…… なんか今度、有栖ちゃんのお願いを聞いたあげるからお願い!!」


 俺は手を合わせて有栖にお願いをした。


「そ、そうですか…… わかりました…… 約束守ってくださいよ……」


「助かる、本当にありがとう!!」


 有栖は俺のお願いを聞いてくれて、703の部屋を出た。


「へ〜 君が彩音ちゃんか、はじめまして〜」


「可憐さんですよね、はじめまして!!」


 可憐と彩音は握手をしていた。

 身長も可憐の方が少し高いくらいで大差がなく、同い年にも見えてしまう。


 地味に初代最強の少女と、現代最強の少女がリアルで対面という凄い光景だが全く殺意など感じられず、むしろ和やかというか優しい雰囲気が漂っている。


 彩音と可憐が挨拶をしているところに、緋奈も混ざりに行った。


「ねーねー、可憐ねーちゃん!! この前の修行の技は使ってみた??」


「まだだよ〜 切り札みたいな感じだから、大会で使おうかなって思ってた〜」


「そっか〜 にーちゃんたちをあっと驚かしちゃって!!」


「うん、ボクに任せて〜」


 そう言って可憐と緋奈はハイタッチをした。


(2人で練習したの本当だったんだ……)


「なんかいつの間にか仲良しになってますね……」


「ああ…… なんか意外な組み合わせだ……」


 俺と美佳は可憐と緋奈という異色な組み合わせを見て驚きを隠せなかった。

 こんな話をしていると、開始10分前の時間となり有栖が部屋に戻ってきた。


「みんな、開始10分前…… あの…… おにーさん……」


「どうしたの……??」


「い、いや…… 雪奈さんに…… がんばろーって応援したら…… 泣きながらバタッと倒れたけど…… 大丈夫……??」


「「ああ、いつものことだから気にしなくていいよ」」


 俺と可憐は同時に有栖に言った。


「んじゃあ、彩音 絶対に負けんなよ!!」


「うん!! お兄ちゃんたちもね!!」


「じゃあね〜 がんばろ〜」

 

 俺たと可憐は701を出て、自分たちの部屋へと向かった。



※後書き

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