第62話 お兄ちゃんの女たらし

 翌朝、俺は朝食を彩音と2人で食べていた。


「お兄ちゃん、そういえば新しいメンバーが決まったみたいだね」


「ん、ああ…… 昨日決まった、まあでも可憐の事情とか今日説明するから、まだ正式加入ってわけじゃないけどね」


「ふーん、そうなんだ」


 彩音はジト目で俺の方を見た。

 やきもちを焼いているのか、心なしか朝食のパンが少し焦げていた。


「な、なんだよ」

 

「別に〜 可憐さん美人だし、新しい人も美人さんみたいだから、お兄ちゃん女たらしだな〜って思って」


「ちょっと待って、別に女の子だからって選んでるわけじゃないからな!! 一応説明しとくけど、雪奈は……」


 俺が自分のスマホを彩音に見せようと、机から立ち上がると彩音は俺の口にパイナップルを入れた。


「むぐっ…… 美味しい」


「まあお兄ちゃんは女遊びするような人じゃないっていうのは知っているから、今回は許してあげる」


「ありがとうございます……」


 こんな会話をした後、俺と彩音は支度をして学校へ向かった。







 

 放課後、俺と雪奈は電車に乗って可憐の入院している病院に向かっていた。

 今日は職員会議があり、午前授業だったのでお昼ご飯にクロワッサンを駅のお店で食べたのち可憐のお土産に3つ買った。

 

「ここの病院だ」


 俺はクロワッサンの入った袋を持ちながら、病院に指を刺した。


「……よくある病院ですね、本当にこんなところに世界レベルのプレイヤーがいるんですか??」


「まあ百聞は一見にしかず、とりあえず行こう」


 俺たちは病院の中へ入って、受付に向かった。


「えっと、天草可憐さんの面会に来ました 加賀美です」


「加賀美さんですね、斉藤先生から聞いております ではこちらのエレベーターで5階にお願いします」


 俺たちは受付の女性の方に案内されて、エレベーターに乗った。


「天草可憐さん…… なんかカッコイイ名前ですね……」

 

「確かにかっこいいな、偉人とかにいそう」

 

「彼女はどんな人なんですか??」


「ん〜 一言で言うなら緩い人、偉人とは真反対かも」


「……??」


 俺たちが可憐の話で盛り上がっていると、エレベーターは5階に着いた。


「ここだよ」


 俺は可憐の病室のドアをコンコンとノックした。


「入るぞ、可憐」


 俺はノックしたのち、可憐の病室に入ると可憐はベッドの上から外を見ていた。


「よお、久しぶり」


「おひさ〜 まあ毎週ゲームの世界で話してるけどね、リアルだと久しぶり〜」


 俺は可憐の横に行って、クロワッサンの入った袋を置いた。


「何これ」


「お土産のクロワッサン、美味しいよ」


「わざわざ、ありがとね〜」

 

 可憐は袋を開けて、クロワッサンを食べ始めた。


「美味しい〜」


「それはよかった」


 俺は美味しそうに食べる可憐を見て、嬉しく思った。


「白髪ショートで片目隠れ美少女…… 好きかもしれない…… むふふ……」


 俺が雪奈の方を見ると雪奈は可憐の顔を見て、ニヤニヤしていた。


(ゲーム環境の整った病室の方は何も思わないのかよ……)


「そっちの方は、確かYUKIさんだよね ようこそ〜 えっと、チーム名はなんだっけ??」


「まだ決まってない」


「あ、そういえばそうだったね〜 ならとりあえず、正体不明『unknown』へようこそ〜」


(相変わらず適当すぎる……)


「あ、はい!! よろしくお願いします!!」


 雪奈はそう言って、可憐の横の椅子に座った。


「よろしくね〜 YUKIさんのことは悠也からリプレイもらってみたけど、中距離のアタッカーで補助が得意なんだよね??」


「はい!!」


「ちょうどサポートできる人が欲しかったんだよ〜 うちのチーム脳筋だからね〜」

 

「えっと、可憐ちゃんも脳筋なんですか??」


「そうだよ〜 可憐ちゃん…… なんか久しぶりにちゃん付けされたかも〜 YUKIさんもちゃん付けで呼びたいから本名教えて〜」


 可憐は嬉しそうな表情で、雪奈に本名を聞いた。


「雪奈です!!」


「んじゃあ、雪奈ちゃん よろしく〜」


「よろしくお願いします!!」


 可憐と雪奈はお互いに笑って、楽しそうにしていた。

 思った通り2人が仲良くなれて安心した。


「んじゃあ早速で悪いけど、これからの方針についての作戦会議をしよう」


 俺はスマホの画面を2人に見せた。


「えっと、来週の土曜日に第2回スクリムがあるんだけど現状3人なのでもう1人メンバーが欲しいです だけども時間がないのでSNSで募集をかけてみようと思ったんだけど、2人のアカウントって……」


「ボクはないよ〜」


「あいうえクラン応援アカウントならあります!!」

 

「……だよね」


 予想はしていたけど、2人はSNSのアカウントがないみたいだ。


「前回俺が失敗したけど、時間がないし…… とりあえず俺のアカウントでメンバー募集かけるから、なんかそれっぽい文章考えるのを手伝って欲しい」


「なら、私に任せてください!!」


 雪奈はそう言って、スマホのメモ帳に打ち込み始めた。


「悠也〜 雪奈ちゃん1人に任せちゃって大丈夫なの??」


「あ、多分大丈夫 雪奈はこう見えて学校では、真面目で成績優秀だから」


「こう見えてってどういう意味ですか!!」


「いや、可憐も雪奈の限界オタクモード見たらドン引きするぞ……」


「限界オタク……??」


「ちょっと、悠也君!!そのことは秘密ですって!!」


「まあ、明日くらいに見られると思う 正式加入したら共通サーバー入ることなるし……」


「共通サーバー…… もしかして悠也君の言ってたのって…… ふへへ……」


「あ〜 そういうことね…… 理解した〜」


 可憐はニヤニヤしている雪奈を見て、何か察していた。



※後書き

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