第45話 GW明けは忙しい


話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。

宜しくお願いします。


―――――


 俺、坂口悠。五月三日に真理愛と遊園地でデート中に襲われた。公安警察の人が助けてくれたけど、二度も狙われるなんて。

 だから二日後の五日に絵里と会う予定だったが、学術委員会の事が忙しい事を理由にして会う事を止めた。

 また襲われて、万一にも絵里に何か有ったら、俺は自分自身の責任の重さに潰れてしまう。


 そして、GW明けに公安調査庁サイバー特別調査室に顔を出した。サイバーセキュリティシステムの開発進捗を確認する為だ。

 概ね進捗通りだが、量子情報分析の所で少し時間が掛かっているみたいだ。まあ、あれは仕様理解するだけでも大変だからな。


 俺はその後、住吉さんに声を掛けられた。

「坂口君。五月三日に君を襲った犯人が分かったよ。神門組の残党だ。下っ端だがね。ただそいつに指示した奴がいる。工藤元警察庁長官だ」

「何ですって!」

「君が驚くのも無理ないだろうけど。工藤元長官が君を狙うのは、君がネットにあげた情報より、君が工藤元長官の目の上のたんこぶになったという事だろうな。彼が今後警察機構に復帰する為には、君の存在が邪魔になるからな」


「逮捕はしないんですか?」

「する訳が無い。証拠も何もないのだから。君にだって分かるだろう。犯人がいくら喋ってもそれを証明できなければ逮捕は出来ないんだよ。

 まあ、そういう訳だ。当分君の安全確保の為に今の警備を継続する。工藤真理愛には気を付けろよ」

「彼女が俺を売っているなんて考えられない」

「売ってなんかいないさ。父親が娘の心配をする振りをして彼女から君の事を聞き出しているって事だ。気を付ける事だな」


 なんて事だ。そこまで考え付かなかった。真理愛の父親はあれで終わったかと思ったのに。甘かったようだな。

 しかし、彼女は何も知らない。今更、会わないなんて言えないし、彼女への対応は考えないといけない。



 俺は、翌週から始まった中間試験を除いて五月中はずっと公安調査庁サイバー特別調査室に放課後と土日に行った。絵里と真理愛が随分文句を言って来たが、学術会議を理由に会う事を断った。


 六月に入った。公安調査庁の初期テストも上手く行き、今月からシステムが始動する。学内では体育祭があるが、俺は欠席だ。去年までは一応形だけでも出たが、今年は俺の身の保全が第一という事で出場禁止になった。上(公安)から何処を通したの分からないが校長に話が有ったらしい。


 絵里と真理愛は、俺が一緒に参加するものとばかり思っていたらしく、やたら俺に文句を言って来た。まあ、適当に誤魔化したけど。




 六月の第二週に入ると例のシステムも本格稼働に入った。いきなり入って来たのは、内閣府に対するハッキング、そして陸海空各自衛隊の情報収集分析システムに対するハッキングだった。


 相手国は直ぐに分かったが、これを理由に抗議しても意味も無く、むしろこちらの手の内を明かしてしまう事になる。


 そこで偽情報を掴ませるように仕組んだ。侵入した相手を偽情報データベースへアクセルする様に仕向けた。

後はこちらから事実をちらっと入れて重要な所は偽にすればいい。勿論辻褄が合う様にして。それも俺がちょっと手伝った。


 公安調査庁サイバー特別調査室の担当者達は、最初はやはり疑心暗鬼だったのだろうけど、この事実(実績)を前にして俺を尊敬の目で見る様になった。俺に対する言葉遣いも全て敬語だ。流石にこれには参ったけど。


 これがきっかけで公安委員会の谷委員長の夜のお誘いの回数が多くなったけど、全て断った。彼女曰く国家の為と言っていたけど意味が分からない。俺は未成年だぞ。



 後の運用は公安調査庁に任せて今後は月一度の会議に出席するだけで良くなった。これで元の学生に戻れる。


 それは良かったのだが…。放課後、


「悠、最近付き合いが悪い。いくら学術会議の手伝いが忙しいからって、何で放課後全く会えないの?」

「そうよ。悠、日曜位デートしてよ」

 おい、お前ら学術会議の事言っちゃ駄目だろうが。



「ねえ、坂口君、日本学術会議の手伝いしているの?」

「さあ、でもあそこって日本でも優秀な学者達の集まりよね」

「やっぱり坂口君って…」

「「「「優秀なんだ!」」」」

 そこでハモるな!


 何故か急に話した事もない女子達が近付いて来た。

「ねえ、坂口君。今度お話しない、二人で」

「私もしたいな。私の大事なものも上げたいな」

「坂口君が望むなら私だって」

 おい、何てこと言い出すんだ。


「「何言っているのあんた達!」」

「あーら、友坂さん、工藤さん。坂口君はあなた達の物じゃないわ。私達だって坂口君と仲良くする権利有るわよね。クラスメイトだもの」

「「そうよ、そうよ」」

 これは不味くなったぞ。だからばらしちゃいけないんだ。


「あははっ、何を勘違いしているんだ。俺は学術会議の簡単な手伝いをしているだけだ」

「「「しているんじゃない」」」

 説明を間違えた。



-くそう、坂口ばかり。

-だが事実だ。

-何とかならないのか。こっちは高三になってまだ彼女いないんだぞ。

-知るか!


 おい、男子諸君。心の声が駄々洩れだぞ。



「みんな、俺用事あるから今日はこれで」

 俺がスクールバッグを持って席を立とうとすると

「悠待って。私も帰る」

「私も」

「絵里、真理愛。今度にしよう」

「「駄目!」」


 何故か俺の隣に絵里と真理愛がいる。後ろにはさっき俺に声を掛けて来た三人がいる。これは絶対に不味いぞ。駅まで来ると


「じゃあ、みんなまた明日」

 俺は急いで改札に入ると後ろから騒いでいる声が聞こえたが無視をした。明日からどうなる事やら。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。

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