第34話 餌は美しくないといけない


話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。

宜しくお願いします。


―――――


 俺は少し悩んでいた。真理愛の父、工藤警察庁長官は広域暴力団神門組の会長と繋がっていた。

 これを世の中に流せば、音声だけにしてもマスコミは十分に動いてくれるだろう。そうすれば、真理愛の父は失脚する。


 メディアやマスコミを押さえたのは木崎法務大臣と工藤警察庁長官そして武藤総務大臣。復讐の対象者だ。

 だが、これをする事によって息子の工藤大樹の動きを止めてしまう可能性もある。実行犯の奴らが亜紀姉ちゃんにまた手を出す前に叩き潰さなければいけない。やはり餌が必要だ。どうする?



 正月に大分情報を手に入れたが、それ以降、これといった情報は彼らの会話からは聞きとる事が出来なかった。



 既に二月に入っている。大学が始まる前に何とかしないと亜紀姉ちゃんが危ない。俺は情報量が多くなるが、トレース時にスキッピングするワードを少し減らしてみた。



 マンションに帰ってからはトレースされた情報にキーワード検索を掛けてそれらしい会話が無いか聞き取る事、二週間。もう二月も終わろうとしていた時、とんでもない情報が入って来た。

 木崎洋平と武藤武それに工藤大樹の三人の会話だ。


木崎『工藤、武藤いい話がある。橋本美優が妹と友達を連れてスキーを兼ねた温泉に行くそうだ』

工藤『本当かそれは。何処の温泉だ?』

木崎『仙田温泉だ。あそこはスキー客が温泉を兼ねて行く所で有名だ。何処に泊るかも分かっている』

武藤『そうか、なら四月に入る前に彼女をものにする事が出来るな』

木崎『ああ、問題ない。俺達も同日に宿泊する。勿論名前を変えてな』

工藤『じゃあ、早速準備にかかるか』


 橋本美優。いったい誰だ?橋本?まさかな、偶々一緒なだけだろう。しかしこれは役に立つかもしれない。



 俺は翌日朝もジョギングに出かけた。そしていつものコンビニ寄ると橋本さんがレジにいた。俺は二種類のサンドイッチと五百CC牛乳を持ってレジに行くと

「橋本さん、スキーする?」

「うん、好きです」

 まさか坂口君が誘ってくれているの?でも今度お姉ちゃんと行くし。


「そうか、もうすぐ冬も終わるけどスキー行く予定ある?」

「はい、今度お姉ちゃんとその友達と一緒にスキーに行きます」

「そうなんだ。残念だな。ところでお姉さんいたんだ?」

「うん」

 橋本さんはそう言うと定期入れの様なものから橋本さんと姉が移っている写真を見せてくれた。


「自慢の姉。凄い美人でしょ。私と全然似て無くて、良く姉妹じゃない見たいって痛い冗談を言われる時がある。頭も良くて今は帝都大に通っている」

 凄い美人だ。スタイルも抜群だ。確かに似て無いな。


「そんな事無いよ。お姉さんは確かに美人だけど。橋本さんはとても可愛いよ」

 何故か彼女が顔を真っ赤して


「あっ、直ぐレジします」

 精算が終わると


「そうか、スキー楽しそうだね。気を付けて行って来て」

 俺は残念そうな顔で言うとコンビニを出た。


 坂口君行きたいのかな?でも私なんかとね。まさかお姉ちゃんの写真見たから。でもそんな人とは思いたくない。



 これであいつらの目的が分かった。しかしなんて奴らだ。酷い事しては親の力で揉み消す。多少バレたって、知らない振りすればいいだけか。

 何とかこれを生かす方法はないものか。…無くはないが。



 俺はその日、学校から帰って来ると父さんに連絡を入れた。

『父さん、悠です』

『悠か、嬉しいな。お前から連絡をくれるとは』

『父さん、お願いが有る。俺スキーに行きたいんだ。でも高校生じゃ、予約できないから父さんの方から宿泊先に連絡してくれないかな?』

『それは構わないが、悠がスキーとは珍しいな』

『うん、ちょっと気晴らしに。仙田温泉の雪山ビレッジ』

『予約は良いが、悠一人か?』

『いや友達も行く。皆親からホテルに連絡してもらう予定になっている』

『そうか、分かった。気を付けて行って来なさい』

『ありがとう父さん』


 父さんには嘘をついてしまったけどこれで良い。後は奴らの証拠写真と音声を取るだけだ。橋本さんには悪いがこんなチャンスは他にない。だが、奴らに橋本さんのお姉さんに手は出させない。徹底的に叩きつぶしてやる。



 

 三月に入って、もうすぐスキーに行く。マンションにあるレシーバのトレース設定を通常モードからスキッピングを少し上げたモードにした。

 警視庁のサイバーセキュリティ対策本部では昨年末以来、犯罪を見つけられない事に苛立つ輩も出ていたが、そんな声は無視をした。もうすぐ別の意味の大ヒットが出る。



 学校には小委員会が忙しくて数日休むと言っておいた。出席に数は足りているし、何も問題はない。

 だが、あの二人、絵里と真理愛が文句を言っていたが、小委員会の手伝いだという事で言い聞かせた。


 後は、実行するだけだ。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。

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