第32話 正月は情報過多


話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。

宜しくお願いします。


―――――


 真理愛と絵里のクリスマスが終わった後、真理愛がもう一度来たいと言っていたが、警視庁サイバーセキュリティ対策室の対応と俺のレシーバソフトの改良で時間が無かった。仕方なく、今は学術会議の研究が忙しいと言ってごまかした。


 日課の午前六時のジョギングを終わらせるとシャワーを浴び、朝食を摂ると直ぐにレシーバのトレースフィルタのパラメタを変更してスキッピングするワードやテキストを変更したりした。


 サイバーセキュリティ対策室では、あれから更に病院へのハッカー攻撃を防ぎ、犯人を捕まえたようで喜んでいた。後、細かい事案が何件か。


 流石に目立った成果の無い警察庁サイバー局に対して上(公安)からクレームが入り始めた。あまり警視庁側が目立っても困る。


 今の所、警視庁側は機密保持の為といって俺が考えたシステムを教えていない様だが、警視庁は建前上警察庁の一組織、それに法務大臣が動いて貰っても困る。


 なので、警視庁のサイバーセキュリティ対策室には気付かれない様に少しパラメタを変更した。これで二月末までは機能しないだろう。


 正月が来る前に父さんから連絡が有った。今年は帰ってこれるかと聞かれたが、まだ無理だと答えておいた。

 母さんと姉さんも精神的に大分健常人に戻って来たと言っていた。この件が終わった後、俺も顔を出せる様になりたい。多分俺が一番病んでいるのかも知れない。




 正月元旦にとんでもない情報が俺のレシーバに入って来た。真理愛の父さんとその相手の会話だ。


「工藤警察庁長官。明けましておめでとうございます」

「これは丁寧なごあいさつを。あけましておめでとうございます。神門会長」

「長官、これは年始の挨拶です。お受け取り下さい」

 何!広域暴力団神門の会長が警察庁長官と会っている!


 ジャリ、ゴト、ゴト。


 何だこの音は。直ぐに解析しよう。その後も二人の会話は続いている。


 なんだと!金塊が揺れ動く音とは。まさか、警察庁長官が広域暴力団から年始挨拶として金塊を貰っているなんて。


 これは、益々相手が大きくなってしまった。



 二日目、あの三人、工藤大樹、木崎洋介、遠藤武の会話が入って来た。

「工藤、坂口亜紀が大学に復帰したらしいな」

 何!亜紀。お姉ちゃんの事か?


「ああ、俺と木崎の顔を見ても分からなかったよ。亜紀の弟のお陰で顔を変えなくては行けなくなったからな」

「そうか。亜紀が俺達の言う事を聞いて簡単にやらせてくれれば、あんな事せずに済んだのにな」

「でも宅急便の恰好はバレなかったな」

「ああ、あの時は上手く行った。もう一度したいな。母親も良かったしな」

「亜紀の弟は今、家にいないらしい。やるならチャンスだぜ」


「いや、流石に同じ事を二度やるのは愚だ」

「大学内でしてしまえばいいさ。あの時はまだ俺達も学内の事分からなかったが、今は良く知っている。誰も来ない場所なんていくらでもある」

「いつやる」

「四月しかないだろう」

「そうか楽しみだな」



俺は、直ぐにトイレに駆け込んだ。そして胃の中の物を全て吐き出すと座り込んだ。


許さない。絶対許さない。こいつらを地獄の底に突き落としてもまだ許さない。


少しだけ落着くと考えが出来る様になった。


 四月までにあいつらが表に出る様に仕掛けるんだ。時間はあるようでない。だがこれはあいつらを表に引き出すいいチャンスだ。映像で全世界ネットで流してやる。


 亜紀姉ちゃんは絶対俺が守る。



 しかし、真理愛と元旦に初詣に行っておいて良かった。もしこれを聞いた後なら俺は彼女に何をするか分からなかったからな。


 だが、明日は絵里と初詣に行く事にしている。精神が落着くか?




 翌朝、三が日とはいえ、欠かせない午前六時のジョギングに出かけた。途中いつものコンビニに寄ると

「あけましておめでとうございます」

「えっ、君、三が日も出ているの?」

「はい、ここ空けていないと、お客様の様に困る方がいらっしゃいますから」

「それはそうだけど」

 俺はいつものサンドイッチ二種類と五百CC牛乳を買って精算している間に


「あの、住まいこの辺ですか?」

「ああそうだけど」

「やっぱり、私も結構近いんです」

「そう、じゃあ」

「あの…。いいえなんでもないです。ありがとうございました」

 あーぁ、行っちゃった。名前くらい聞きたかったけどお客様にプライベイトな事聞けないし。


 何なんだあの子。もうあのコンビニはよすか。でも他に無いしなあ。



 午前十時に絵里の家のある駅の改札で待った。五分前になると絵里が着物姿で現れた。青を基調とした着物に薄紫の帯、金の簪を付けて化粧をしている。綺麗という言葉は彼女の為に有るのかと思う位綺麗だった。流石に俺も驚いた。


「絵里、明けましておめでとう」

「明けましておめでとう、悠。どうしたの私をじっと見て」

「いや、綺麗だなあと思って」

「ふふっ、そうでしょう。悠、早い者勝ちよ」

「何の事だ?」

「悠の意固地」

 何言っているんだ?



「悠、神社は隣駅から歩いて十分の所にあるの」

「分かった」

 友恵と初詣に行った神社か。


「良いかな?」

「ああ、もう気にしていない」

「それならいいけど」


 隣駅を降りて絵里に合わせてゆっくりと歩く。前から来る人が目を丸くして絵里を見ている。やがて参道の入口に来ると


「三日目だというのにこんなに並んでいる。凄いな」

「この辺じゃ有名な神社だからね」

 去年、悠はここを高橋友恵と歩いていた。でも今年からは私。このポジションは誰にも絶対に渡さない。


 この後、俺達はおみくじを引いた。絵里は中吉だが、俺は、…凶だった。神仏の加護は時には必要だが、この結果は、あまり気分がいいものではない。


 だが、やるしかない。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。

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