第30話 工藤真理愛と二人でクリスマス
話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。
宜しくお願いします。
―――――
絵里と真理愛との決着がついた?日以来、俺は武道場に行った後は、家で真理愛、彼女の父兄のスマホから聞こえてくる会話をトレースする事にしている。
不必要な会話を聞いても仕方ないのでフィルタリングしてのトレースだ。終業式までに重要な情報を一つ得る事が出来た。
真理愛の兄工藤大樹、そしてその友人木崎洋平の他にもう一人の重要と思われる人物が見つかった。その男の名前は遠藤武、五尾物産営業部勤務で父は遠藤総務大臣。
これで、我家を陥れた犯人の父親は工藤警察庁長官、木崎法務大臣そして遠藤総務大臣だ。なるほどこれなら、メディア、警察全てを抑え込むことが出来る。例の一億円の出所は官邸機密費といったところか。
大分相手が大きいという事が分かった。周到な準備をしないと、発表しても情報そのものが無かった事にされる。だが、そんな事は絶対にさせない。
二学期の終業式が終わった翌日土曜日はクリスマスイブ。去年イブは高橋友恵と迎えた。そして新学期を迎えてあの事件が起きて友恵が転校した。あれから五か月間位か。随分時間が経った気がする。
そういう事を思い出すと、あまりこういうイベントはしたくない気分だが、今日は俺の部屋で真理愛と二人でクリスマスイブを過ごす事にしている。もちろん泊まるなんてとんでもない事なので昼食を挟んだパーティだ。
彼女は、一度俺の部屋に来た。仕込みに時間のかかる料理を前日から作ったという事でそれを冷蔵庫に仕舞うと、近所のスーパーに出かけた。
サラダにする野菜、チーズとかジュースはここで買う予定だったらしい。
スーパーまで俺の手を繋いでルンルンしている真理愛の横顔を見ると本当に可愛い。俺が歩きながら彼女の顔を見ていると
「ふふっ、どうしたの悠。私の顔をずっと見ていて」
「ああ、可愛いなと思って」
「か、可愛い。そう思ってくれるんだ。嬉しいー。今日はしっかりと私の手料理を食べさせてあげる」
「楽しみにしているよ」
本当は止めたい気分だが、なるべく家族の事は思いださない様に心の中に押し込めている。
スーパーで俺が買い物籠を持って真理愛が材料を籠に入れていると
「ふふっ、私達一緒に暮らしているみたいね。本当にそうしようか」
「あははっ、気持ちは嬉しいけど、流石に俺達は高校生だ。それは出来ないよ」
「えっ、いいじゃない。お父さんに許可貰えば良いだけだし」
「そんなに簡単な事じゃないだろう」
変な方向に話が行っている。話題を変えないと。
「ところで真理愛、今日は何を食べさせてくれるんだ?」
「それは内緒。楽しみに待っていて。こう見えても料理は得意よ」
「へーっ、それは楽しみにしている」
「任せて」
俺達は、スーパーで買い物を済ませるとマンションに戻った。結構な量を買ったが、こんなにいるのか?
「真理愛、材料少し多くないか?」
「そんなことないよ。今日終わっても後で悠のマンションに来た時、料理作ってあげれる。いつもコンビニじゃあ駄目だよ」
「まあ、それはそうだが」
確かに、朝はコンビニ、夜もコンビニ。昼は学校のある時は学食だが、休みの日はコンビニだ。料理はほとんどした事がない。彼女に言われても仕方ない所だ。
部屋に戻ると具材を一度、キッチンに置いた後、洗面所に手洗いに行った。先に彼女に手洗いとうがいをして貰うと次に俺がした。洗面所を出ようとする彼女が側で待っている。
「どうした真理愛?」
「うん、ちょっと、ちょっとだけ」
いきなり俺に抱き着いて来た。そして上目遣いに俺を見て目を閉じた。これって…。どうしようか考えあぐねていると、また目を開けて俺をジッと見た後、目を閉じた。
仕方なく、唇を彼女に付けるとぐっと強く付けて来た。ずっとそうしている。舌を入れて来そうになったので、唇を離すと
「真理愛、後で」
「ごめん、なんか思い切り抱いて欲しくて」
「そうか」
少し強く抱いてあげるともう一度彼女の唇に合わせた。
「ふふっ、ありがとう。心が落ち着いた。今から料理作るね」
キッチンで、可愛いウサギの柄がプリントされているエプロンを着けると手早く料理し始めた。
「悠は、テーブルクロスと取り皿出して。オードブル用とサラダ用とチキン用の三つね。あと、ジュース用のグラスも。スープはこちらで盛り付けるから」
彼女が言う通りに準備すると、出来上がった料理からテーブルに運ばれてきた。運ぶといってもオープンキッチンだ。キッチンからダイニングテーブルに持って来るのはいたって簡単。持って来たのは確かにオードブルと野菜サラダ、メインのチキンにスープだ。
「後これね」
小さいけどホールケーキが出て来た。凄いな。ちょっと胃辺りがきつくなって何も言わず洗面所に行ったが、戻すような事は無かった。ダイニングに戻ると
「悠、大丈夫?」
「ああ、問題ない。どれも美味しそうだな」
「うん」
悠、夏から随分我慢出来る様になったけど、やっぱり苦しそう。家族の事でどんなに大変な事が有ったのか知らないけど、私が悠の心を支える。そうすればもっと悠と心を通わせる事が出来る。
一通り料理が出て来ると俺はアップルジュースを氷の入った二つのグラスに注いで一つを彼女に渡した。対面でテーブルに着くとグラスを持って
「「メリークリスマス」」
「悠、これクリスマスカードとプレゼント」
「えっ、くれるの?俺用意してなかった。ごめん」
「いいの。悠が喜んでもらえればと思って準備したんだから」
「そうか、ありがとう。開けていいかな?」
「もちろん」
クリスマスカードを開けると
悠へ
二人でクリスマスを迎える事が出来て本当に嬉しいです。
これから毎年、ずーっと悠と一緒にクリスマスパーティが出来ます様に。
真理愛より
俺は涙がこぼれそうになった。シンプルだけど真理愛が本当に俺の事を思っている事が良く分かる。久々に感じる優しさだ。この時だけはあの事を忘れた。
「ありがとう真理愛。とても嬉しいよ」
プレゼントは紺色のブランドマークの入ったマフラーだ。去年絵里から貰ったけど二つあっても困らない。
真理愛は食事中、家族の会話はしない様にしてくれた。学校の事や、俺の将来の事、出来れば一緒にずっと居れると良いという事も言葉の節節に交えながら話してくれたけど、多分それは出来ない。本人の望む望まらずに関わらず、彼女は俺から離れていくだろう。仕方ない事だ。
食事が終わり、二人で食器を片付けた。残った料理はラップしてアルミホイールで気密状態にした後、ジプロックに入れて冷凍庫に入れた。こうすれば後で解凍した時、美味しく食べれる。
その後は、俺の寝室に行った。
「どうかなこれ?」
彼女は下着だけになると俺に声を掛けて来た。とても情熱的な下着だ。ちょっと目を逸らしてしまった。
今日の彼女はとても熱烈だった。俺が驚く位に。彼女曰くこれもプレゼントの内だと言っていたが、俺の体力消耗が激しいプレゼントだ。
でも流石に二回戦も行うとこちらがプレゼントしている気がするのは、気の所為か?
全部終わった後、真理愛は、
「ねえ悠。私はあなたの事でまだ知らない事が一杯ある。でもそれはゆっくりと教えて。あなたが私に言っても問題なくなった時。勿論その前に言ってくれたら嬉しいけど。
私はあなたの傍で私の心とあなたの心がシンクロするようにあなたを支えたい。あなたが行きたいと言っているスタンフォード大は入れないけど、一緒に行ってあなたをサポートしたい」
「ありがとう真理愛。でも君は帝都大に行かないといけないんだろう。だからそれは出来ないよ。気持ちだけ貰っておく」
「それって、私達の関係は高校までって事?」
「そんな事ない。君が大学を卒業したら僕の所に来ればいい。多分、その頃はアメリカとチリとスイスを行ったり来たりかもしれないけど」
「悠の言っている意味が分からないけど、高校を卒業してもずっと一緒なんだよね」
「ああ、そうしよう」
少し胸が苦しいが、仕方ない。
「ふふっ、ありがとう悠。じゃあもう一度して」
「体力的にもう無理かな。あははっ」
「駄目、して」
結局、彼女の家の最寄り駅まで送って行った時は午後八時近くになっていた。明日が大変だ。
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
次回以降をお楽しみに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます