第28話 実現したい事出来ない事
話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。
宜しくお願いします。
―――――
俺、坂口悠。二学期の学期末試験も終わった。来週月曜日に答案が返却され、その後二週間で二学期も終わり、そして今年も終わる。
真理愛と家族の会話、真理愛の兄や父親との会話はトレースしているが、新しい出来事はなかった。
だが、もうすぐクリスマスそして正月だ。そこで新しい情報を得れる可能性は高い。警視庁サイバーセキュリティ対策室のシステムの試験も順調だ。この時点で、企業二社に対して行われていたハッキングを見つけた。
犯人の所在も直ぐに分かり、ハッキング中に逮捕するというスピードに対策本部長も警視総監も俺への態度が全く変わってしまった。
これが出来上がるまでは子供の眉唾程度に思っていたんだろう。今は、上にも下にも置かない対応のされ方だ。
彼らとしては、警察庁にある同種のシステムを遥かに凌ぐシステムを自分達が開発したという優越感と出世争いに使いたいのだろう。
俺には、他にもいろいろ誘いが有ったが全て断った。他の研究が忙しいという理由で。今となっては俺の言葉も重みが有るのか簡単に引き下がった。
もっとも今回のシステムは、国としての管轄が法務大臣を頂点とする組織だから、その点でも余計面白い。あの事が明るみに出たら警察庁、法務省は大騒ぎになる。楽しみだ。
懸念はある。あいつらは口が軽い。このシステムを餌に自分の出世を条件に他省へ漏らす可能性はある。関係者には厳しくかん口令は敷くよう言っておくか。かん口令は、もっと成果を出してからの方がいい。
二学期末試験が終わった翌月曜日。いつもの様に学校に行き、下駄箱で上履きに履き替えて階段の側に行くと、例によって掲示板の所に人だかりが出来ていた。大方成績順位表だろう。
そのまま素通りしようとすると
「悠、今回は二位を奪還出来たよ」
「何の事だ?」
「これ」
絵里が指差したのは、成績順位表の二位の位置だった。
「そうか」
それだけ言うと階段を登ろうとした俺に絵里が
「がんばったんだから、褒めてくれてもいいでしょう」
「何でおれが絵里をほめないといけないんだ?」
「だって、二位だよ。工藤さんより上だよ」
確かに良く見ると絵里が二位、三点差で三位は真理愛。横にいる真理愛を見るとすこし悔しそうな顔をして絵里を見ている。仕方なく
「絵里、良くやったな」
それだけ言うと、急いで階段を数段登った。後ろで何か言っているが無視をした。
教室に入り、自分の机で本を読もうとしていると絵里と真理愛が教室に俺を追いかける様に入って来て、
「悠、お昼私と一緒に食べよ」
「駄目よ、友坂さん、坂口君は、私と一緒にお昼を食べるの」
「「私よ!」」
「ねえ、どうしたのかしら、あの二人。坂口君のお昼ポジであんなに言い合っている」
「分からないの坂口君、今回も満点でしょ。多分それよ理由は」
「なるほどねー。まあ、二年も一緒に居ると坂口君、なんかクールでかっこよく見えて来たし」
「私達も参戦する?」
「「うるさい!」」
「ひっ!ごめんなさい」
「うるさいのはお前達だ。他の人に迷惑だろう」
「「だってぇ」」
もう授業は午前授業になっている。授業は午前中だけだが、学食は親切に午後二時まで開いている。昼食を食べ終わったら武道場に行くか。
午前中の授業も終わるといきなり両脇から
「悠、お昼行こう」
「坂口君、お昼食べよ」
結局、二人共俺に付いて来た。廊下を歩いていると、周りから小声でうわさ話ばかりされる。この二人が一緒に居ると流石に目立つ。
自動発券機に並ぶと、何故か二人はいつも俺が座っている二人席に向かい合う様に座った。俺は何処で食べるんだ?
カウンタからB定食を受取、テーブルへ行くと
「おい、そこは三人じゃあ食べれない。そっちで食べるぞ」
俺は開いている四人掛けのテーブルを顎で示すと自分で先に座った。隣には絵里、俺の前には、真理愛が座っている。
何故か二人共無言で食べている。俺には助かるが。
食べ終わる頃
「悠、放課後一緒に行って欲しいところが有る」
「駄目よ友坂さん。坂口君は私と用事があるの」
「えっ、ほんと悠?」
「俺は、二人に用事はない。放課後は武道場だ」
「「えーっ、そんなぁ」」
この二人に付き合う気になれず、食事が終わると何も言わずに立ち上がり、トレイを食洗室に戻すと一人で教室に戻った。
「あーぁ、悠帰っちゃった。全く工藤さんが邪魔しなければ」
「何を言っているの友坂さん。坂口君は私と一緒に帰る予定だったのよ。貴方があんな事言わなければ、彼と一緒に帰れたのよ」
「彼?今そう言ったでしょ」
「言ったわよ。坂口君は私の彼よ」
「「「「え、ええーっ!」」」」
周りに座っている子達が騒いでいる。
もういいわ。坂口君には悪いけど。これ以上友坂さんに邪魔されたくない。
「悠が工藤さんの彼だって。あははっ、悪い冗談ね。あいつがあなたを彼女なんか絶対にしないから」
「何で言いきれるのよ。その自信は何処から来るの?」
「だって、悠は将来私の夫になる人よ」
「「「「え、ええーっ!」」」」
「何ですってぇ、冗談じゃないわ。じゃあ二人の前ではっきりして貰いましょうか」
「そんな事して悠が喜ぶと思っているの。貴方は全然悠の事分かっていない。最近何が有ったか知らないけど、妄想はいい加減に止める事ね」
「ふ、ふざけないでよ」
俺が去った学食でこんな事が起こっているとは露知らず、
全く、こんな時は芳美でもいればな。そうだ、帰り2Cに寄ってみるか。
しかし、絵里はどうしたんだ。前はこんな事無かったのに。真理愛がああいう風に言う理由は分かるが。どこかで聞いてみるか。でも藪蛇は嫌だしな。やっぱりやめとくか。
一度教室に戻りスクールバッグを持つと、学食から帰って来た絵里と真理愛を振り切り、2Cに行くともう芳美はいなかった。入り口近くにいた男子に
「芳美は帰ったのか?」
「ああ、あいつか、先生に呼ばれて職員室に行っているよ。あいつ学期末試験良くなかったからその事だろう」
「そうか」
やっぱり勉強は息切れか。2Cになったから、勉強やっているのかと思ったんだが。仕方なしに、2Cの教室から下駄箱に行こうと階段を降りると芳美が階段を上がって来た。
「芳美、一緒に帰らないか」
「悠か、いいぞ」
二人で廊下を歩いているだけで目立つ。俺達が並んで歩くと前から来る全員が両脇に避ける。
「悠、いいのか俺なんかと歩いていると誤解されるぞ」
「構わないよ。俺は芳美と一緒に歩きたいだけだ。それより、なあ武道場へ戻らないか。役に立つか分からないが俺も頼むから」
「悠にそんな事させる訳にはいかねえよ。それに、武道場より勉強しないと。この冬休みも俺向けに宿題が出る」
「じゃあ、俺が芳美に教えるよ」
「悠、嬉しい事言ってくれるが、冬休みの宿題だけで良いよ。もう共通部分も大分ないけどな。別途宿題出る分、自分でやらないと、本当に学校から追い出されてしまう」
「そうか。困ったら絶対に連絡しろよ」
「その時は頼む」
芳美とは武道場にある駅を挟んで両側の駅だ。俺が先に降りた。俺はこのまま武道場に行けると思ったのだが。
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
次回以降をお楽しみに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます