第11話 炎魔法、驚異

…ってこんな事してる場合じゃない...!

このままお嬢を放置してたらここら一体のキレイキレイ草が焼き尽くされてしまう。

かといって俺はただのプレイ初日の1Lv(レベル)男だ。

お嬢のLv(レベル)が分かんないけどたぶん今の俺では勝てる相手では無いと思う。

さて…どうしたものか……


こんな事考えてる間にもお嬢の邪魔は止まらない。


「『ハイフレア』」

「ちょ…まっ…」


俺がどんだけ叫ぼうが辞める気配さえない。


もう…こうなったら…


「じゃあね!」


俺は颯爽と採集ポイントから走って逃走を始めた。


「まちなさい!」


すぐさまお嬢も追い掛けるように走り出した。

俺はとにかく後ろを振り返らず走り続けた。


-10分後


「はぁはぁ…やっと追いつきましたわ…」


やはりLvの差があってか採集ポイントから少し離れたところで追いつかれてしまった。

俺も体力が尽きもう走れない。


「観念なさい『ハイフレア』」


無惨にもお嬢は俺にまたしてもあの魔法を放ってきた。


「っっぶね…!」


幸いにもこの『ハイフレア』という炎魔法は範囲があまり広くなくすんでのところで交わすことができた。

安心したのも束の間、またすぐに攻撃が飛んでくる。


「『ハイフレア』」「『ハイフレア』」


毎度毎度俺がすんでのところで交わし、その後すぐにまた次の攻撃がやって来る。

それが続くとお嬢側も避ける先に攻撃を置いたりと対応してきている。

こんな小手技はもう通用しなくなってきていた。


「『ハイフレア』」


ヘトヘトな俺にこれでもかとまた攻撃がやって来る。


はぁはぁ避けないと...


俺は屈んだ体を起こし隣に動こうとしたその時だった。


「うわぁ」


足元にあった小石に気が付かず、躓き転んでしまった。

それに構わず攻撃は飛んでくる。


「がぁぁぁあぁ」


ついに俺は足に『ハイフレア』を食らってしまった。

痛みが脳を突き刺し思考を止める。


もう…俺はダメなのか…


「もう終わりですわね…全く…とんだ阿呆でしたわ。手間をかけさせる…」


お嬢は無惨にも俺に手を向け魔法陣を展開する。

その様子は何処か楽しんでいるようにも見えた。


「『ハイフレア』」


お嬢が詠唱し、手元が光った。


……


「……なん…」

「…ふんっ…勝った」


しかし、ハイフレアは出ず、何も起こることは無かった。

これこそが俺の狙いだった。


「なんで出ませんの!?私の魔法!!なんで!なんで!!」


困惑するお嬢を横目に俺は勝利の優越に浸りながらお嬢のそばまで足を引きずりながら近づき、肩をぽんと叩いた。


「魔力切れだよ。普通に考えこんなよく計算されたゲームで無限に魔法が撃てる訳ないだろ?お前は魔力が切れたんだよ」

「で…でもわたくしの魔力がいくつだなんて分からないはずでは!?」

「そうだよ。そこが賭けだったけど良かった。お前が思ったより魔力が少なくて」

「くっ……」


お嬢は足から崩れ落ち地面を思い切り叩いた。


「じゃあ俺は戻るよ。あの採集ポイントで炎魔法をバンバン撃たれたらキレイキレイ草が燃え尽きてヤバかったけどね。では…




…ご機嫌よう!」

「キィィイィィイ」


お嬢の発狂を勝利BGMに、俺は燃え盛る森から離れた。

--続く

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