第7話

 古い我が家の隙間から差し込む陽光に雄三は飛び起きた。目が醒めなかった自分を責めつつも祖父がいるはずの場所を見たが、やはり祖父は家の中にいなかった。慌てて外に出た雄三であったが、外はもう足跡も見えないほど雪が降り積もっていた。外に飛び出ようとした雄三を父が呼び止めた。そして感情を押し殺すように拳を握りしめながら言った。

「じいちゃんは、山に入ったんだ。」

 吹雪の夜に山に入る、それが何を意味しているか分からない雄三ではなかった。そして父は話してくれた。父も祖父自身も自分たちの祖父が山に入っていくのを見送ったことを。そして二人とも食い扶持減らしとはいえ、自分たちの祖父を見送ったことを後悔していた。雄三の祖父は何かを探していた。もしかしたら雄三の祖父は山に入った自分の祖父を探していたのかも知れない。そしてついに昨晩巡り会えたのかも知れない。雄三もいつしか拳を握り締めていた。爪が自分の手のひらに突き刺さるほどに握りしめ続けていた。

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