第18話 クレーム対応(その2)

「喰らえぇぇぇぇぇぇっ! ギルダーッ! キーック!」


 俺は必殺技の、ギルダーキックを、怪人セロドリアンに叩きつけた。


「グワ~ッ!」


 ドガーン!!


 よし、怪人セロドリアンを倒したぞ! 地球人も無事だ!


「おのれ、ギルダー、覚えておれよ! 次こそ必ず始末してくれるわ!」


 ガルドネスが、負け惜しみのセリフを吐いて逃げて行きやがる!


「いつでも来い! ガルドネス! 地球の平和は俺が守る!」


 決めポーズもバッチリだ!


 子供達が駆け寄ってきたぜ……


「すごいや! ギルダー! どうしたら、僕もギルダーみたいに強くなれるの?」


 おっと、たけし君からの質問だ!


「たけし君! 毎日ごはんをたくさん食べて、体を鍛えるんだ! ただし、勉強もちゃんとしないとダメだぞ?」


「僕も体を鍛えれば、ギルダーキックができるようになるかな?」


「ははは! きっとできるようになるさ! それじゃあ、坊や達、さらばだ! また会おう!」


 俺は宇宙用エアーバイクで、その場から華麗に去っていった。

 ―――――――――――――――――――――――


「ただいま戻りました~」


 俺が署に戻ると、新人刑事のミニィさんが、月別怪人出現表の作成をしていた。


「あ、お帰りなさい、お疲れ様です。どうでした、怪人は?」


「楽勝でしたよ。そのあと子供達に囲まれちゃって、そっちの方が大変でした!」


「うふふ、先輩、子供達に大人気ですもんね! うらやましいです!」


「いや~、そんな、えへへへ!」


 よし、最近ミニィさんともいい感じだ! 怪人退治も順調だし、いい波に乗れてるぜ!

 ―――――――――――――――――――――――


 ――後日――

 

 プルルルル……プルルルル……

 

「はい、刑事課……あ、署長、はい、ギルダーですか? はい、承知しました、伝えます、はい、失礼します」


「何すか、課長? 今の内線、俺あてですか?」


「おう、署長が署長室に来いってよ」


「え~、何かやったかなぁ、俺……とりあえず行ってきます」

 ―――――――――――――――――――――――


 コンコン!


「失礼します! ギルダーです!」


「おう、まあ、そこに座れ」


 俺はギャリバン署長の真向かいのソファに座った。


「実はな、ギルダー、お前に苦情が入っている」


「えっ、苦情? 最近は戦う場所にも気をつけてるし……私は何も悪いことしてない――」


「日本の小学校のPTAから手紙がきた」


「PTA……ですか?」


「小学生の間で『ギルダーキック』が流行っているそうだ。先日、その真似をしてたけし君という男の子が怪我をしたらしい。子供の前では暴力行為は極力控えてほしい、とのことだ」


「いや、でも、署長、相手は怪人ですよ? 倒すためには――」


「ギルダー、お前の言うこともわかる。しかし、こうして苦情が入っている以上、何らかの対策を考える必要がある。わかるな?」


「……はい、でも具体的にはどうすれば……」


「……そうだな、まず最初に、怪人を説得してみてはどうだ?」


「説得ですか? でも、説得が通じるような相手では――」


「ギルダー、怪人がすべて悪い奴とは限らん。『愛』が通じる奴も中にはいるはずだ」


「……」


「ギルダー、『愛』とは何かわかるか?」


「えっ? 『愛』ですか? えーっと、相手を思いやって――」


「違う! 『ためらわないこと』だ! 慎重に行動しろ!」


「???」


 俺は混乱した。


「とにかく、課長と対策を考えろ。いいな?」


「……はい。わかりました」

 ―――――――――――――――――――――――


 俺は釈然としないまま刑事課に戻った。


「おう、どうした、ぷりぷり怒って?」


「聞いてくださいよ、課長! 日本のPTAから苦情が出たらしいです……」


「苦情? 何の?」


「『ギルダーキック』を子供達が真似するから危ないって……真似して、子供が怪我をしたらしいです。それで子供達の前では戦闘するなって……」


「それで? 署長は何て言ってたんだ?」


「『怪人を説得してみたらどうだ?』って……そんなの無理っすよ!」


「『ご両親が泣いてるぞ』とか、言ってみたらどうだ?」


「怪人の生みの親って、ガルドネスですよ?」


「それもそうかぁ。まぁ、しょうがねえな。できるだけ子供のいないところで戦うようにしとけ。署長には俺から上手く言っといてやるから」


「は~い」


 俺の名前は宇宙刑事ギルダー! 仕事が上手く行っているときは要注意だぜ! 

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