俺は宇宙刑事ギルダー! 公務員さ!

はち

第1話 有給休暇

「喰らえぇぇぇぇぇぇっ! ギルダーッ! スラーッシュッ!」


 俺は必殺技の、ギルダースラッシュを、怪人バルバスに叩きつけた。


「グワ~ッ!」


 ドガーン!!


 よし、怪人バルバスを倒したぞ! 地球人も無事だ!


「おのれ、ギルダー、覚えておれよ! 必ず始末してくれるわ!」


 宇宙秘密結社グラバルドの幹部、時代遅れの軍服を着たガルドネスが、負け惜しみのセリフを吐いて逃げて行きやがる!


 ワンパターンな奴め!


「いつでも来い! ガルドネス! 地球の平和は俺が守る!」


 決めポーズもバッチリだ!


 子供達の視線が熱いぜ……


「坊や達、危険が迫ってきたら、俺を呼んでくれ!」


(……ただし9時~17時の間にな)


「さらばだ! また会おう」


 俺は宇宙用エアーバイクで、その場から華麗に去っていった。


 ―――――――――――――――――――――――


 さっきまで戦っていた工事現場から少し離れたところで、俺はパワースーツを解除した。


 汗びっしょりだ。

 夏場はきつい。


 銀河農協からもらった粗品のタオルで汗を拭きながら、俺は銀河北警察署に電話した。


「あ、もしもし、課長ですか? ギルダーです、お疲れ様です。はい、はい、今、終わりました。はい、それでなんですけど、今日はこのまま直帰で――え、報告書ですか? はい……わかりました、戻りま~す……失礼します」


 くそ、報告書なんて明日でいいじゃん。

 戻ったら18時にはなるぞ、まったく……


 仕方なく、俺は宇宙用エアーバイクで飛び上がった。


 ―――――――――――――――――――――――


「ただいま戻りました~」


 俺が署に戻ると、先輩刑事のヴェルダーさんが、エクセルで集計表を作っていた。


「おう、お帰り、どうだった?」


「怪人、倒してきました。勘弁してほしいっすよ、真夏に征服しようとするの」


「まあ、そう言うなって。麦茶、冷えてるぞ」


 俺たち銀河北警察署の宇宙刑事は、普段は地球人に扮しているから、食事は地球人と同じなんだ。


「あざっす。いただきます。課長は?」


「さっき、総務に行ってたぞ」


 麦茶を飲んでくつろいでいたら、課長が戻ってきた。


「おい、ギル、報告書は?」


「今からやりますよ。あの~、課長、来週の火曜日、有給を取りたいんですけど……」


「その日はシュバットが非番なんだ。水曜日にできんのか?」


「いや、その日にライブに行きたいんで……」


「何時からだ? そのライブとやらは?」


「16時からですけど……」


「じゃあ、時間休で十分だろ」


「マジっすか……」


「文句があるなら、秘密結社さん達に言え」


「わかりました……じゃあ、15時から17時で時間休を取ります」


「ちゃんと勤怠管理に入力しとけよ、あと、今日の怪人の記録、今日中に出せよ」


「わかりました~」



 俺の名前は宇宙刑事ギルダー! 年5日以上は有給休暇取得が必須だぜ!



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