『海水浴』

今日は絶好の海日和だ。天気も晴れだし、水着だって菜乃花先輩をドキドキさせたくて新しいものを着てきた。正に準備万端だったし、きっとそれは真白先輩も奏先輩もそうだ。



だから私はウキウキしていた。集合時間

よりも早めに来たからまだ誰もいないと思っていたら、二人とも既にいたし、後は菜乃花先輩を待つだけだった。



……そう、待つだけだったのだ。だけども――、



『ご、ごめんなさい!行けなくなりました!』



そんなグループLINEを見るでは。



……この時点で解散するつもりだった。菜乃花先輩の来ない海水浴とか何の意味もないし、価値もないし。勿論、菜乃花先輩は一ミリも悪くはないけど。



だけど、菜乃花先輩が来ない海水浴なんて絶対に行きたくないし、季節は七月。夏休みが始まったばかりだったし、楽しみで仕方なかっただけにショックが大きかった。



だからこの後は時間の無駄だとわかっていても、真白先輩の説得により海に行くことにした。



△▼△▼



そして私――白鳥真美は時間の無駄遣いをしていた。最初の二十分は楽しかったよ。泳げたし。



だけど、泳ぐのを辞めてお昼にしようか……というところで、視線を感じる。……正直言って不快だ。菜乃花先輩以外の視線なんていらないのに。



しかも、菜乃花先輩を来ることを前提にしていたからか、いつもより露出度の高いビキニを着てきてしまったことも原因の一つだろう。



今思えばどうしてこんな露出度の高い水着なんて着てきたのだろう。最悪だ。



「(……まぁ、不幸中の幸いなのは……)」



「なぁ、俺らと遊ばない?お姉さん達」



「お断りしまーす」



「あ?何でテメェらと遊ばなくちゃいけねーんだよ?」



ナンパ男達はあの二人の圧に押されていて私が言う前に帰っていくのが不幸中の幸いと言えるかもしれない。



「……ったく、何でこんなに声掛けられるんだ?やっぱり真美が際どい水着を着てるからじゃねーの?」



……今回ばかりは奏先輩が正論過ぎて何も言い返せない………早く、水着脱ぎたいな……そして小説を書きたい……。

そんなことを考えながら歩いていると、



「へーい、そこの金髪ガール!ちょっといいかな?」



今度はチャラそうな男の人が声を掛けて来た。この人もナンパだろうか?……怠い……早く、奏先輩達が追い払ってくれないか……



「(……ってあれ!?奏先輩と真白先輩は!?)」



考え事をしていて気づかなかったがいつの間にかいなくなっていることに驚き、左右をキョロキョロと見渡すが、二人がいない。……しょうがないか。



「お断りします」



そう冷たくあしらうように言った後、さっさと歩き出したのだが、男はしつこく付いてくる。



「えぇ〜冷たいこと言わずにさ〜」



イラつきながらも無視して歩く。本当にしつこくてうざいし、気持ち悪い。もういっその事殴ってしまいたくなる程には。



そんなことを思っていると、



「すみません。その子私の連れですので……」



真白先輩の声が聞こえたので振り返るとそこには少し息切れした真白先輩がいた。どうやら走って追いかけてくれたらしい。



「あ、そうなの?じゃ、お姉さん達も入れて遊びましょうよ!」



しつこいなこのナンパ男。諦めろよ……と思いながら、私達は海の家へと入った。



△▼△▼



あの後、ナンパ男達はしつこくついてきて、うんざりしていたが、奏先輩と真白先輩の圧に負けて、即退散していった。



その後、海は早々に終わって、小説を書くことになった。………やっぱり三人のときはこれがいい。だって、これじゃないと楽しめないもの。



そしてみんなで、感想を言い合って終わって別れた。



「………んー……まぁ……振り返ってみたら……」



悪い一日ではなかったのかもしれない。私はそう思いながらスマホを取りだしたのだった。



これは余談だが、菜乃花先輩と行く時は海ではなく、プールの方がいいよ〜……と何故か華恋さんにLINEで言われたことをここに示しておく。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


Q 菜乃花は何で来なかったの?


A 次回書きます

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