はじめての共同作業

9 名前:名無しさん@実況禁止

箱の新人って、元からほかのVTuverと知り合ってるもんなんかね?


11 名前:名無しさん@実況禁止

スタジオとか持ってんなら、その関係じゃね?

部屋に入って止めるくらいだから、そういうことでしょ


15 名前:名無しさん@実況禁止

くー子ちゃん、やっぱり優しかった


16 名前:名無しさん@実況禁止

あれで?


18 名前:名無しさん@実況禁止

口悪いけど、優しいんだよな

くー子ちゃんに健康とか気遣われたい人生だった


21 名前:名無しさん@実況禁止

そんなことより周きゅん健気すぎるだろ

次の放送も見に行くからね、お姉ちゃんの名前覚えてくれてありがとね


22 名前:名無しさん@実況禁止

実際認知されるのは嬉しい


25 名前:名無しさん@実況禁止

コネ使いまくりの箱の新人より個人勢の話しようぜ


32 名前:名無しさん@実況禁止

まぁ、いきなりコラボだし、ちょっとやり過ぎ感ある

どんだけ頭下げて回ったんだよ


34 名前:名無しさん@実況禁止

>>32

コラボなの? 告知出てた?


39名前:名無しさん@実況禁止

>>34

でてた

王子とコラボらしい

最初の配信のコメント欄でもいたもんな

女なのに女ファンばっかだから、男と絡んだりしたら荒れそう


44 名前:名無しさん@実況禁止

>>39

は? 俺は男だが王子の姫だが?


52 名前:名無しさん@実況禁止

>>44

頭おかしなるからやめろ


◇◇◇


「ところで、白波さんは今日何をやるか聞いてますか?」

「Plain Craftって聞いているよ。まぁ、多くの時間は質疑応答になる気がするけどね」

「この間失敗しちゃいましたもんね……。巻き込んでご迷惑をかけてしまいそうなので、一人でやった方がいいかなとも思うんですけど……」

「気にしないでいいから一緒にやろう。余多君を藤崎さんに推薦したのは僕だしね」


 やっぱり白波さんも話をしてくれていたんだ。

 迷惑がかかることしかないだろうに、一緒に配信してくれるなんて、白波さんは優しい。


「それで、ゲーム配信やコラボをするときのコツはね、コメントを拾いすぎないことだ。メインはゲーム、コメントは空いた時間にちょろっと拾えばいい。ただまあ、今回に関しては積極的に拾って構わないよ。コラボの目的が、周君をパソコンに慣れさせることだからね」

「わかりました、気を付けてやってみます」

「まぁ、進行は私の方でやるから、肩の力を抜いてやっていこう」

「はい。……ところでそのゲーム、僕はよく知らないのですが、どんなゲームなんでしょう?」

「……かなり有名なゲームなんだけれどね。簡単にうと、ゲームの中で木を切ったり土を掘ったりしながら、物を作って自由に過ごすゲームだね。やってみたほうが早いけど……、時間があまりないかな」


 白波さんが時計を見たところで、部屋に藤崎さんが入ってくる。

 藤崎さんはテーブルの上に置かれた防犯ブザーを見て手に取り、僕に差し出しながら言う。


「これは余多さんに上げますので、ポケットにでも入れておいてください。さて、では部屋を移動しましょう。私は念のため余多さんのほうの部屋の端で書類仕事をします」

「同じ部屋でやらないのかい?」

「ええ、通話ソフトの使い方にも慣れてもらいたいですから」

「なるほど、わかったよ」


 軽い打ち合わせをしながら移動をして、白波さんが先に配信部屋の扉を開ける。


「余多さんには部屋でアカウントを作ってもらいます。こちらからフレンド申請をしますので、白波さんも準備をお願いします」

「ログインして、ワールドを作って待っていようかな。私の方では配信しないで、余多君の方のコメントを見ることにするよ。藤崎さん、念のため言っておくけど、部屋で二人きりだからといって……」

「はい、わかりましたから」


 何かを言おうとした白波さんを部屋に押し込んで、藤崎さんが隣の扉を開けた。


「それじゃ、クリックするだけで入れるところまで準備してから、配信を始めることにしましょう」


◇◇◇


『待機』

『待機』

『結構来てるな』

『確かに思ったより人が多い』

『また変なことやるかもしれないから待機』

『玲先生と周君のパソコン教室、でなんでPクラやるの?』

『Pクラが配信の基礎ってことじゃね? よくわからねぇけど』

『忙しいゲームじゃないしな』

『目的も特になくていいし』

『お、画面変わった』

『はじまるな』


◇◇◇


 左クリックが決定で、右クリックはなんか設定とか開くボタン。

 始まってゲームを始めるぞってなったら、ゲームの画面のDONEって書いてあるところを右クリック。


 よし、これで大丈夫。


 正面の画面にPlainCraftの画面を、右側にコメントや周が映っている配信用のソフトを準備。マウスを横へ動かしていくと、矢印が配信開始ボタンの上に乗った。

 これを左クリックで開始。


 よし、大丈夫。


「こんばんは、お兄さんお姉さん。聞こえるでしょうか?」


 返事を待ってから言葉を続ける。


「大丈夫そうですね。先日はバタバタしてしまってすみませんでした。えっと、今日はですね、高遠さんとPlainCraftというゲームをすることになりましたので、どうぞよろしくお願いいたします」

「お待たせ、姫たち。リベルタスの一般人、高遠玲だよ。何か気づいたことがあっても、人に喋ったらダメだからね? さて、周君、私のことは高遠さんではなく、玲先生と呼ぶように」


 流れるような自己紹介に続いて、コメント欄がわーっと一気に流れていく。

 白波さん、人気があるんだなぁ……。


「わかったのかな、周君?」

「あ、はい! 玲先生」

「……いいね」


『王子?』

『いい』

『いいかも』

『なんかアヤシイ』

『いいねじゃないんだよなぁ』


「んんっ、さて、それではゲームを始めていこうか。今日は、質問とかに答えながらのんびりやっていくつもりだから、コメント欄もあまり遠慮しないでいいからね。ただ、お互い慣れないことをしているから、もし見逃してしまっても拗ねたりしないでね?」

「はい! 僕パソコンでゲームをするのは初めてなので、お手柔らかにお願いします」

「よし、ワールドは作ったから、周君も入ってきてくれるかな?」

「わかりました」


 予定通りDONEを左クリックすると、画面が暗転してからぶわーっと景色が一気に広がっていく。

 

「おー……すごい……」

「無事に入れたみたいだね。まずは合流したいから、目印があれば教えてもらえるかな?」

「ええっと、高いところにいますね」

「なるほど、周りには何かある? マウスを振ると上下左右を向けるんだけど」

「そうですね……、雪山が後ろに。それから正面には海があって、右手には……家らしきものがいくつか見えますね」

「ずいぶんすごいところに生まれたね……、探してみるから少し待ってて。適当に動いて操作の仕方を学ぶといいよ」

「わかりました」


 左クリックでパンチ、右クリックは……何も起こらない。後はマウスを動かしてぐるぐると景色が回るくらいだ。

 ……どうやって動くんだろう? 試しにキーボードの矢印マークをそっと押してみたが何も起こらない。

 延々と宙を殴り続ける拳。

 たまに回転。


『ずっとパンチしながら回ってんだけど』

『確かに動いてるけどそういうことではない』

『周きゅん動こうね?』

『せんせー、周くんが一歩も歩きませーん』

『首傾げるなwww これ操作の仕方分かってないだろ』

『w押してみ』


 ああ、このwが三つ並んでるのは、wを押せって意味だったのかな。

 試しにwを押すと、はじめてそこでキャラクターが動き始める。

 おお、すごい! 景色が変わって……。


「あっ、あ、あー……」


 ものすごい勢いで高いところから落下してしまった。

 思わず目を細めているうちに、ぐちゃっとなんか嫌な音がして画面に『死んでしまった』と表示されている。


「……周君?」

「あの、なんか、ごめんなさい。死んじゃいました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る