2024.07.27 マイクロビット

 今年の夏は、息子の行きたい所、やりたいことを引きだして、なるべく連れて行こうと思っている。


 電車で行ける距離に、プラネタリウムのある科学館があり、夏のイベントとして色々なワークショップがある。そのチラシを見てすぐに息子が「なにこれ! 行きたい!」と目を輝かせた。行くだけでも楽しいのだが、ついでに「やりたいのある?」とワークショップを選ばせた。

「これ!」

 と一発で指さしたのが、マイクロビットの教室だった。


 パンフレットを読んで、迷いが生じた。

 小学3年から大人が対象。保護者は外で過ごしてください、とある。(スペースがないから、と書いてあるが、スペースがあったとしても、大人も対象だから、教室に入るなら予約の人数枠にはいってお金も要るのだろう)


 うーん……。

 小学4年だし、年齢は問題ないけど、その年齢の発達をしているかと言われると、まだ保護者が横にいないといけない発達状況では……?

 集団の指示が入りにくいし、……マイクロビット? どうなんだろう。理解できるのか?


「マイクロビットってなに?」

 私が聞いて、返ってくる答えは

「……わかんない!」

 だった。(一発で指さしたのは、どういう判断なのか……? なんとなく面白いものであることは知っているけど、母に伝達することができない、という『わかんない』なのか。本当に全くわかんないけど指さしたのか。


 しかし、本人は乗り気だ。好きな事のためなら努力をする子だから、というか好きな事でないとスイッチが入りにくいのだから、こういうときが成長のしどきであって……やらせてあげたい。


 迷った結果、「独り言は言わないんだよ」等説明し、ワークショップに参加させることにした。



 その後、別のイベントがあって、参加した。

「高校生と科学であそぼう!」という小学生向けのイベントで、本人が行きたがったものだ。「あそぼう」か……これなら、大丈夫かな? と。


「あそぼう!」のイベントは、想像していた以上に座学っぽい時間があった。本人は楽しく集中していて立ち歩きもなかったが、座学が長くなると「ん~~」という独り言、ご機嫌唸り声が出てしまっていて。そのたびに私と夫が大人の見学席から「シー」という表情を見せた。気づくと黙るのだけど、しばらくすると激しくヘドバンを始めたりしており……。

 ブースに分かれての体験でも、集中して聞いているときは聞いていて、受け答えもするのだが、そうでないときもあり……。せっかく高校生のお兄ちゃんが一生懸命息子にむかって説明しているのに、自分の話を喋り続けてしまったり、独り言を言っていて話しかけられていることに気付けないまま、私が話しかける言葉も入って行かなかったりして、

「ああ……なんだか……申し訳ない……」

 というハラハラした気分でその日を過ごした。


 これ……マイクロビットの座りっぱなしの教室、どうなんだ……?


 支援級ならともかく、定型発達の子が当たり前という世界で、「一人で参加させる」ことに対して、ものすごく不安になってしまった。


 当日、科学館で、息子に障害がある旨と事情を説明し、相談した。結果、「スタッフ沢山いるので大丈夫ですよ~」と明るく言って下さったので、「なにかあったら、もし補助に入ったほうがいい、となったら電話ください」と伝えて電話番号を渡し、一人で参加させることになった。


 教室の近くのカフェでずっとコーヒーを飲んでいたので様子はわからなかったが、終わった後教室に行くと、「一回焦っちゃった様子も見られましたが、全然大丈夫でしたよ。なにか他にもプログラミングやってましたか? 気が付いたら他のアレンジまで進んでいたりしましたよ。保護者がついていられるイベントも他にもあるし、保護者が外で待っているタイプの、一人で参加するものも大丈夫だから、また是非来てください」と言って貰えた……教室が無事に終わったことで、もの凄くホッとした。この二週間ほど、かなり私はこのことで気を揉んでいたようだ。


 息子は完全に集中状態。スタッフさんにマイクロビットの話を色々聞いていた。


 その日は他にプラネタリウムなども楽しんで帰った。

 帰ってすぐ、息子はマイクロビットの教室で教えてもらった内容を復習し始めた。私に「このアプリを入れて欲しい」と頼み(教室でスタッフさんから教えてもらったアプリなので、入れた)、サクサクと進んで、ずっと何かをしていた。


 翌日の朝(今日の朝)も、マイクロビットで遊んでいて、夫からも色々教えてもらっていて。


 周りに迷惑がかかるのではないかと本当にずっとハラハラしていたのだけど、今回は参加させてあげられて、有難かったな……。科学館とスタッフさん、本当に有難かった。連れて行って良かった、そう感じさせてくれたことが、有難かった。

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