2023.4.15 あぶないよ、テトラポッ……消波ブロック

 テトラポッ……、ゲフンゲフン、テトラなんたらは、商品名であって、正式名称じゃない。商標登録の問題とかあるらしいから、ええと、消波しょうはブロック。

 あれは、子供には非常に楽しそうなアスレチックに見える。


 今日も「小説書きさんと、ふたり」で海のシーンを書いていて。

 ちょうど子供が来たので、消波ブロックの危なさを、色々なサイトの絵を見せながら説明した(そのうち子供連れて消波ブロックが見える場所を散歩するかもしれないので)。


 おかげで子供は「これが見えるところには行かない!」とまで怯えてしまった。


「見るのは大丈夫だよ。台風のときとか、そういうときは海に近づいちゃだめだけど。海は危ないけど、楽しくもあるからね、これの上に乗らないようにってだけだよ……」


 お出かけの際に消波ブロックが見えるたびに、子供に危ないと説明しているわけだが(今回子供に説明するのは四回目だ)、記憶に残らないらしい。説明するたびに初めて聞くみたいな反応をされる。


「もう、わかってるよ!」


 と言われるまで何度も説明してやる。


 私自身が小学生の頃、親戚と海に行って、「子供みんなで消波ブロックをアスレチックがわりにして遊んだ」のだ。親たちは消波ブロックの危険性を知らず、のどかに子供たちが楽しそうに遊ぶのを見ながら、自分たちも消波ブロックの上を歩いていた。


 ブロックからブロックへと飛び移っている最中、苔の生えたブロックで滑った私は、ブロックの中央にあいた大きな四角い穴にすっぽりと落ち、今は無い反射神経で運よく両手をついてブロック上にとどまることができた。

 腕だけで体を支えた状態で。脇から下はブロックの中。


 ひっぱりあげてもらい、親戚のおばさんに絆創膏を貼ってもらったのだが、手は擦り傷だらけ、足にも切り傷。一番怖かったのは、落ちた直後に足元を見たら、強い波にさらわれてサンダルが片方、もう見えなくなっていたことだった。ほんの一瞬だった。


 ネットを使うようになって、なにかで「危ない」という書き込みを見て、「消波ブロック」「危険」などで検索して知ったが、消波ブロックは、落ちると助かりにくいかなりの危険スポットだった。あれ本当に危なかった。


 ブロック内部は潮の流れが複雑になっていて、波にさらわれたり吸い込まれたりしかねない。

 苔などで滑りやすく、隙間に落ちると苔などで滑って上がれない。ブロックにびっしり生えたフジツボなどで皮膚が切れる。大声を出してもブロックや波の音でかき消されて周囲が気づけない。


 落ちたら、最悪、遺体すら回収できない場合もある……らしい。


 決してジャングルジムがわりにしてはいけないものだった。


 昭和の当時、他にもたくさん危ないものはあった。例えば粗大ごみ置き場には無造作に冷蔵庫などが置かれていた。親たちは必死に「窒息するから、冷蔵庫などにかくれんぼで入ってはいけない」「友達にすぐ出してあげると言われても、絶対に入ってはいけない」「ベランダから下を見てはいけない」と言い聞かせた。辛い事故がニュースで流れるたびに、毎回毎回言い聞かせた。


 しかし、消波ブロックに関しては、当時うちの親戚は誰も危険性を知らなかった。


 ずいぶん前、職場で「ヒヤリハット」の話になったとき、仕事に関係ないけど夏休み前だったから、お子さん連れで海に行く人も多いだろうと思い、その話をした。


 後から同僚が「私の友達のお子さんも川でそれで亡くなったんです」と言ってきた。


 子供をあのブロックで遊ばせてはダメです。

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