閑話22 1週間プロ野球(交流戦直前拡大版)
さあ、今週もやって参りました『1週間プロ野球』のお時間です。
激闘続く日本プロ野球の1週間を余すところなく伝えていく本番組ですが、交流戦のスタートを明日に控えた本日は序盤戦を振り返る拡大版でお送りいたします。
司会はわたくし、羽澤朗一。
コメンテーターは毎度お馴染み、パーフェクトサブマリンこと綿原博介さん。
更に、ゲストコメンテーターとして次期日本代表監督とも噂されている落山秀充さんをお呼びしております。
本日もよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
まあ、噂は噂ですよ。
今は監督もコーチもしていませんからね。
しがない解説員です。
とは言え、最初から真っ当に村山マダーレッドサフフラワーズや野村選手を評価していたのは落山さんぐらいですからね。
何の遺恨もなく彼らを呼べるという点では、あり得る話では?
自分の動画配信チャンネルで、好き勝手言っていただけだよ。
それを言うなら、綿原君も素直に彼らの活躍を受けとめているじゃないか。
数字は嘘を吐かないですからね。
生で見ても、選手としてモノが違うことは一目で分かりましたし。
いや、そういうのをちゃんと受け入れられる素直さがね。
やっぱり必要なんだと思うよ? 俺は。
選手として監督として以前に、人間としてね。
(先輩選手である落山秀充に対し、綿原博介が同意するように頷く)
冒頭から含蓄のあるお言葉、ありがとございます。
今日この場においても素直な感想、率直な意見をいただければ幸いです。
では、早速ですが、今シーズン現時点の順位表から見ていきましょう。
シーズン序盤戦45試合の結果です。
(画面が切り替わり、順位表が順に表示されていく。
【公営セレスティアルリーグ】
順位 チーム名 試合 勝利 敗戦 引分 ゲーム差
1 東京プレスギガンテス 45 30 14 1 ―
2 大阪トラストレオパルズ 45 24 21 0 6.5
3 東京ラクトアトミクス 45 22 22 1 1.5
4 神奈川ポーラースターズ 45 21 24 0 1.5
5 広島オリエンタルバハムーツ 45 19 25 1 1.5
6 愛知ゴールデンオルカーズ 45 17 27 1 2
【公営パーマネントリーグ】
順位 チーム名 試合 勝利 敗戦 引分 ゲーム差
1 兵庫ブルーヴォルテックス 45 31 14 0 ―
2 宮城オーラムアステリオス 45 26 17 2 4
3 福岡アルジェントヴァルチャーズ 45 23 20 2 3
4 千葉オケアノスガルズ 45 22 21 2 1
4 北海道フレッシュウォリアーズ 45 22 21 2 0
6 埼玉セルヴァグレーツ 45 7 38 0 16
【私営イーストリーグ】
順位 チーム名 試合 勝利 敗戦 引分 ゲーム差
1 村山マダーレッドサフフラワーズ 45 41 4 0 M97
2 静岡ミントアゼリアーズ 45 21 24 0 20
3 札幌ダイヤモンドダスツ 45 19 25 1 1.5
4 横浜ポートドルフィンズ 45 18 26 1 1
5 長野ハイドバックウィーツ 45 17 27 1 1
5 富山ブラックグラウス 45 17 27 1 1
【私営ウエストリーグ】
順位 チーム名 試合 勝利 敗戦 引分 ゲーム差
1 岡山ローズフェザンツ 45 27 18 0 ―
2 奈良キーンディアーズ 45 24 20 1 2.5
3 堺ノーブルオーロックス 45 23 22 0 1.5
4 宮崎サンライトフェニックス 45 21 23 1 1.5
5 京都フォルクレガシーズ 45 20 25 0 1.5
6 熊本ヴァリアントラークス 45 19 26 0 1)
……色々とおかしなことになっている部分もありますが、とりあえず1つずつ消化していくことにしましょう。
ええと、まずはどこから行きます?
一先ずは最も平和な私営ウエストリーグから行きましょう。
まあ、平和と言っても昨年リーグ優勝を果たした京都フォルクレガシーズが現在5位と波乱の序盤戦となっていますが……。
綿原さん、京都フォルクレガシーズの状態は如何でしょうか。
やはり主力選手の怪我が大きく響いていますね。
そのせいで打線がうまく機能していません。
とは言え、残り117試合。
後半戦までには彼らも帰ってくる予定ですし、まだまだ分からないと思います。
落山さん。
逆に、岡山ローズフェザンツの好調の要因は如何でしょう。
補強選手が下馬評通り、うまく噛み合っているのが非常に大きいですね。
特にリリーフが盤石になったのが大きいです。
リードして終盤戦に持ち込むことができれば、まず負けませんからね。
この調子で行くことができれば、今年はリーグ優勝も夢ではないでしょう。
勿論、そうそう好調が続かないのも野球というものですが。
シーズン開始前の落山さんの順位予想では岡山ローズフェザンツが1位、そして京都フォルクレガシーズが2位でしたか。
ええ。
戦力のバランスという点では、この2球団が特に優れていましたので。
まあ、怪我人が出てしまうと予想も何もありませんが。
最近では遺伝子情報から怪我のしやすさも分かると聞き及んでいますが……。
うん。筋損傷と遺伝子に関わりがあることは報告されているみたいだね。
ただ、まあ。
さすがに傍から見ただけでは個人の遺伝子情報までは分からないし、それを探るのはある意味でプライバシーの侵害にもなりかねない。
たとえ分かっていたとしても、この選手は使い過ぎると怪我をしそうだから球団の順位予想は低くしておきますなんてのはちょっとね。
怪我はしない想定で考えざるを得ないよ。
そうですね。
ですが、遺伝子検査でそんなことが分かるとなると、海峰選手がよく言う怪我をするもしないも才能という話が否めなくなってきますね。
とは言え、怪我を絶対にしないって訳じゃないんだから、それで野球選手の道を閉ざすのは違う話だろうけどね。
どちらかと言うと、その上で怪我をしないようにリスク管理をしたり、怪我をした後のケアを手厚くしたりするとか、そういう方向で考えたいところだね。
これまで怪我をしてこなかった選手、それこそ海峰君だって限界を超えた負荷がかかれば怪我をしてしまうんだから。
ええ。
私もそう思います。
(ここで羽澤アナが話を本筋に戻し、私営ウエストリーグ45試合のダイジェスト映像を流しながら振り返りを行う)
さて。続いて、同じく私営のイーストリーグに移ります。
こちらは……既にマジックナンバーが点灯している球団がいるのですが。
リーグの直接対決は残り15試合で、2位とのゲーム差が20となっています。
2位以下の自力優勝消滅がマジックナンバー点灯の条件なので、まあ、当然と言えば当然のことではありますが……。
落山さん、こんなにも数字の大きいマジックナンバーは見たことがありますか?
これ、史上初の出来事でしょ? ある訳ないよ、そんなの。
……ああ、いや、でも。
息子がやってる野球ゲームでは見たかもしれないね。
正にゲーム染みた成績という訳ですね。
マジック97。
異常極まりない数字だけど、あれだけの選手がいれば不思議はないと思うよ。
村山マダーレッドサフフラワーズには特別な選手が何人もいますが、やはり野村秀治郎選手が目を引きますね。
45試合終わって15勝は異常としかありません。
公言していた50勝が現実味を帯びてきています。
打撃成績の方も、申告敬遠が増えて数字が伸びにくくなってはいますが、それでも既に30本塁打以上打っていますからね。
彼の個人成績については、もはやゲームすら超えていると言っても過言ではありませんが、1人の力でチームの41勝はなし得ません。
勿論、野村秀治郎選手の貢献は計り知れないものがありますが、野球は1人の力だけで勝ち続けられるようにはできていませんから。
それは他のリーグを見ても明らかです。
1人だけなら、四球攻めである程度影響力を減らすことはできますからね。
50勝したとしても更に40勝は積まないとリーグ優勝もできませんし。
ええ。現時点でも彼の15勝以外に26勝している訳ですから。
そして、これだけ勝利を積み重ねることができた根本的な要因は打線でしょう。
野村秀治郎選手へのフォアボールが増えて以降も平均して2桁得点を叩き出す。
そんな打線があれば、このような成績にもなろうというものです。
とは言え、そんな球団でも4回負けています。
まあ、そこは敗因がハッキリしていますからね。
ブルペンデーで大炎上。大量2桁失点。
打線の力で肉薄するも最後まで届かず、敗北。
投手力は村山マダーレッドサフフラワーズの弱点ですからね。
防御率0点台、15戦15完投勝利の野村秀治郎選手。
防御率2点台で尚且つ毎回の援護で負けなし7戦7勝の浜中美海選手。
この2人は別格なので、ともかくとして。
他の投手はローテーションピッチャーでも防御率が6点とか7点とかですから。
リリーフの中には10点超えているのに普通に起用されている選手もいますし。
リリーフの方がこんなにも防御率が高いのも、ちょっと意味が分かりませんね。
不思議としか言いようがない球団です。
どうしてこのような状況になっているのでしょうか、落山さん。
まあ、企業チームからプロ野球に昇格して、僅か1年で日本プロ野球1部リーグにまで成り上がった球団だからだろうね。
急激な成長の歪みと言うべきか、個々の選手の能力差が大き過ぎるんだ。
ただ、2部リーグでも同様の傾向は見られていたのに1部リーグで悪化している訳ではないことを考えると、能力の底上げはなされていると思うよ。
実際、去年よりも全体的に球速もK/BBもよくなっているしね。
変化球を増やしたピッチャーもいる。
この1年戦い抜けば、1部リーグにも十分通用するようになるんじゃないかな。
そうなったら、もう手がつけられませんね。
現時点でこれと考えると……。
まあ、当面の村山マダーレッドサフフラワーズについては、もう別次元の球団と認識しておいた方がいいでしょう。
他球団のファンは特に、気にしないでおいた方がいいと思います。
打線の方は如何でしょうか。
私としては1番の野村茜選手。4番の倉本未来選手。
この2人の女性選手の活躍を取り上げたいですね。
彼女達の存在が今現在の強力打線を形作っていると言っていいと思います。
特に4番の倉本未来選手は間もなく200安打というところに来てますからね。
長打の数が少ないといったことを指摘される方もいますが、90%以上が単打にもかかわらず長打率は0.8を超えてOPSは1.6以上と正に異常です。
OPSが3.0を超えている野村秀治郎選手のせいで陰に隠れてしまっていますが、彼女は女性選手ですからね。
女の子相手にこう言うのは何ですが、化物としか言いようがありません。
長打率は塁打÷打数なので、単打も計算に入りますからね。
倉本選手の活躍が続けば、IsoPあるいはISOとも表記される長打力の指標が取り上げられる機会も多くなるかもしれません。
ただ、まあ。単打がほとんどとは言っても8割打者ですからね。
長打力が低くても異次元ですし、OPS1.6も理解できます。
落山さんが三冠王を取った時のOPSでも1.244ですからね。
生物としてレベルの違う存在のようにも思えますよ。
だからこそ、同じ化物同士の対戦を早く見たいんだよね。
ある程度の指標になりそうなのは、今のところ公営パーマネントリーグの磐城選手と山崎選手の対戦成績ぐらいのものだし。
2試合8打席の対決で山崎選手の2安打1本塁打でしたか。
エース対主軸のバッターとして考えると、割と現実的な数値のように思います。
そうそう。だからね。
実力が拮抗した選手同士であれば、俺達の時代のような数字に戻るのか。
また更に別の形になっていくのか。
それが楽しみなんだよ。
しばらくは過去の記録が塗り替えられていくだけになりそうですけど……。
後々全体のレベルが上がったら、一過性のものってことになっちゃいますよ。
まあ、それはそれでいいでしょ。
アメリカ大リーグの方でも記録がぶっ壊れてる訳だし。
そもそも記録なんてものは破られるためにあるんだからね。
それに日本に限らず、プロ野球選手の究極の目標はWBWで勝利することだ。
突出した選手が出てくることは何も悪いことじゃない。
問題はその中身。時代に合わせて、ちゃんと質がよくなっていっているのか。
他の選手達も追従していくことができるのか。
それ以上でもそれ以下でもない。そうだろう?
……ですね。
やはり綿原君は素直だね。
(笑みを浮かべる落山秀充の言葉に、綿原博介はどう反応したらいいものやらと迷っているかのような曖昧な表情を浮かべる)
話は尽きませんが、拡大版と言っても尺があります。
続いて公営セレスティアルリーグに行きましょう。
このリーグは大松選手。
それに尽きますね。
7戦6勝。負けなし。
打者としても6割20本塁打超え。
東京プレスギガンテス大幅躍進の原動力ですね。
ただ、最近は四球攻めを食らっている姿が多く見られます。
それに伴って、球団の方も当初の勢いはなくなっています。
勿論、四球攻めとは言っても出塁はできている訳なので、その機会をものにできなかった方が悪いと言えば悪いのですが……。
これは公営パーマネントリーグの磐城選手や山崎選手にも同じことが言えます。
そこのところ、落山さんはどのようにお考えでしょうか。
世間では物議を醸しているようですが。
まあ、作戦としてはアリでしょう。
綿原君も言いましたが、無条件で出塁できている訳ですからね。
後の選手が打てばいいだけのことです。
それは村山マダーレッドサフフラワーズが証明しています。
まあ、あそこの真似をしろというのは酷な話ではありますが。
大リーグでは制限をかけていますが……。
日本も追従すべきなのでしょうか。
結局のところ、何のための試合、何のためのプロ野球かってことだと思います。
単なる興行、あるいは逆に、何をしてでも勝たなければならない大事な試合ということであれば四球攻めも立派な戦術でしょう。
出塁というリスクを負って選択している訳ですからね。
ただ、1部リーグのペナントレースも日本プロ野球界そのものも、結局のところはWBWで勝つための前哨戦のような場です。
そんなところで申告敬遠をすることがWBWで何の役に立つのか。
私は疑問を抱かざるを得ませんね。
つまり?
私は制限賛成派ということです。
アメリカ代表は全員が全員、野村秀治郎選手クラスの選手ですからね。
なら、相手全員を敬遠するのか。
そんなことはできるはずがありません。
結局は勝負せざるを得ない。
だったら国内の化物に勝負を挑み、少しでも自身の成長の糧にすべきでしょう。
磐城選手は山崎選手と勝負をしていますからね。
抑えられる可能性があると自覚していてのことだとは思いますが、それでも根本的な意識の高さも感じざるを得ません。
勝負を避けて後のバッターを抑えた方が、磐城選手にとっても楽だろうしね。
後々の大舞台での戦いにおける引き出しを多くするために、優れたバッターとの対戦機会を逃さないようにしているんだろう。
そんな現状最高峰の対戦を唯一交流戦以外でも見ることのできる公営パーマネントリーグですが、ちょっと心配な球団が1つありますね……。
埼玉セルヴァグレーツですね。
このままのペースで行くと……シーズン100敗は当然の通過点として、シーズン最多敗戦記録も更新してしまいそうです。
一体、何が原因なのでしょうか。
選手の顔触れはそう変わっていないはずですが。
直接的な原因は投手陣の不調ですね。
昨年度に比べ、明らかに球速もK/BBも下がっています。
打線も尽く不調です。
ただ、全員が全員そうというのは不思議な話です。
個々の問題と言うよりも何かしらチーム環境に問題がありそうな気がしますね。
あれ?
そう言えば、今回のWBWでも似たような状況にあったような……。
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