076 今後も継続して
変化球を用いて徹底的に外角を攻める。
それだけで大法さんの次に打席に立った選手は面白いように空振りしてしまう。
しかし、ステータス的には特にそうとは見えない感じだ。
状態/戦績/関係者/▽プレイヤースコープ
・内海良蔵(成長タイプ:バランス) 〇能力詳細 〇戦績
BC:812 SP:791 TAG:795 TAC:800 GT:799
PS:160 TV:802 PA:788
好感度:2/100
・内海良蔵
〇能力詳細
▽取得スキル一覧
名称 分類
・内角打ち◎ 通常スキル
スキルも内角に強いだけで外角打ちにデバフがかかっている訳ではない。
にもかかわらず、【戦績】を見ると得意なコースがあからさまに偏っている。
コース別の打率を分析し、高打率を赤、低打率を青で示したヒートマップを見る限り、いわゆる
かと言って、ホットゾーンが著しく狭い訳ではない。
平均的な大きさのものが極端にズレているだけ。
これはもう能力的な問題ではない。
ゲームではなく現実であるが故の問題だ。
「内海さんはもっとホームベースに寄って立った方がいいですね。今の状態だと外角の球に対応できません」
彼は自分のバッティングフォームに対して立ち位置が悪い。
ゲーム的に言うならカーソルが最初からインコースにズレてしまっているのだ。
そこからアウトコースを打とうとすると、真ん中からカーソル移動する時よりも誤差が大きくなり易くなる。
結果、打ち損じや空振りが多くなる訳だ。
対して俺の助言は、最初からバッターボックスの立つ位置を変えてしまうこと。
これまたゲームで例えるなら、カーソルを真ん中に補正することが目的だ。
「これ以上ホームベースに寄れって? 内角が打てなくならないか?」
「大丈夫です。内海さん、多分内角打ちは得意でしょう? 打ち方で分かります」
「いや、それは、そうだが……」
あれだけ偏りがあると彼も自分の傾向ぐらいは理解しているようだ。
まあ、さすがにそれぐらいは当然だろう。
内海さんもこの対処法を頭の片隅では考えていたはずだ。
しかし、今時点でスタンダードな立ち位置よりも若干内に寄っている。
そこから更に、となると躊躇してしまうのも分かる。
「内海さんの場合、そこまで内に寄った上でも打つのに窮屈過ぎるなと思ったら、もうそれはボール球です。見逃していい」
ヒットにできるなら別にボール球を打ってもいいとは思う。
けど、それが弱点となるコースを生んでしまうのであれば話は別だ。
しっかりボールを見極めて有利なカウントを作った方がいい。
何より――。
「それよりも外角に全く対応できない方が危険です。大概、ピッチャーは困ったら外角に投げますから」
「そう、だな……」
さすがに中学生に外角球で翻弄されてしまっては受け入れざるを得ないだろう。
いいきっかけになるはずだ。
よし。次。
「――貴方はホームベースから離れて立った方がいいですね」
今度の選手は逆にホットゾーンが外に寄り過ぎている。
こちらもその広さ自体は平均的なので、下手にフォームを弄るよりも立ち位置を変えるだけに留めた方がいい。
ホットゾーンが狭いのなら、さすがにフォームの方に問題があると考えた方がいい。
実際、それを勧めた選手も中にはいた。
ともあれ、そんな感じで一通り選手にアドバイスをしていくといい時間になる。
そうして帰り際。
「今日はありがとうございました」
「いえ……むしろ私達の方が感謝すべきだったかもしれません」
尾高コーチに頭を下げると、逆に彼から礼を言われる。
おお。器が大きいな。
余計なことをするなと怒られても不思議じゃないのに。
「可能であれば、また来て選手達と対戦して欲しいぐらいです」
「俺としては問題ありません。是非」
その申し出は非常にありがたい。
1も2もなく承諾する。
「……まあ、おじさんが連れてきてくれれば、ですけど」
「秀治郎が大丈夫なら俺は喜んで送り迎えするけど……負担にならないか?」
「問題ないですよ。平日は余り投げないですし、右と左、どちらでも投げられるようになりましたから。交互に投げれば負担も少ないですし、いい練習になります」
まあ、それは一種の詭弁だけれども。
俺は【怪我しない】のおかげで肩を壊す勢いで連投しようが問題ないからな。
一応、疲労は溜まるけれども【Total Virality】がカンストしているし、それ以外にも疲労回復に役立つスキルがある。
▽取得スキル一覧
名称 分類
・休息効率向上 通常スキル
・超回復 極みスキル
(取得条件:通常スキル「休息効率向上」の取得)
・疲労しにくい 通常スキル
・24時間戦えます(断言) 極みスキル
(取得条件:通常スキル「疲労しにくい」の取得)
この程度で潰れたりはしない。
そんな俺の自然な様子に、明彦氏は納得したようだ。
「そうか。じゃあ、また頼む」
「わたしもついてく。次は防具も一式持ってくる」
と、あーちゃんが父親の服を引っ張りながら強く主張する。
そんな彼女に明彦氏は苦笑するばかりだった。
「あ、そうだ。尾高コーチ。ちょっとお耳を」
「はい? どうしました?」
1個忘れていたことがあった。
なので、近づいて他の選手に聞こえないように小声を出す。
「村木さんですけど、外野手よりセカンドかショートの方がいいですよ」
今回は打撃関連ばかりだったが、さすがにこれだけは伝えておきたい。
適性Fの守備位置のままでいさせるのは正直酷だ。
「……覚えておきます」
「お願いします」
もう一度頭を下げてから、明彦氏とあーちゃんのところに戻る。
「じゃあ、帰りましょう」
こうして俺は初めてのクラブチーム見学を終えたのだった。
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