スキルぐちゃぐちゃ ・・・ で勘当されました (全2話)

平行宇宙

第1話

 なんで俺がこんな目に!

 ぐちゃぐちゃになった森の木々の真ん中で俺は絶叫した。


 それはほんの半日前のこと。

 子爵家長男の俺マドラス・ビューラーは、15歳成人の誕生日を迎えて、教会を訪れた。もちろん両親やたくさんの家臣と一緒に、だ。


 俺は子爵家の跡取りとして勉強も剣も魔法も頑張ってきた。その頑張りはスキルとして根付き、成人になる頃には形となることから、成人の儀の一環としてスキルの鑑定が行われる。

 無論、鑑定には多額の喜捨が必要だ。

 これを受けられるのはごく一部の、まぁ俺たちのような立派な者だけだがな。


 スキルの鑑定をしなくてもスキルは生えているらしい。

 が、鑑定によって自分のスキルを知ることで、自分の内にスキルと対話ができるようになり、スキルの使い方を自ずと理解する。

 つまりはスキルを使えるようになるためには、この行程が大事ってこと。

 俺はこの成人の儀で鑑定を受けることを楽しみにしていた。

 だって、スキルは努力の結晶だと言われていて、俺は誰よりも努力をしてきたって自負があったのだから。


 なのに


 「マドラス様のスキルは・・・?・・・ぐちゃぐちゃ?・・です。」

 はてな格好をした神父が迷いながら首をかしげながら言った。

 ・・・・・

 教会の大きなフロアになんとも言えない戸惑いの沈黙が覆う。


 「ぐちゃぐちゃ、とな?・・・それは一体?」

 重苦しい空気の中、かすれた声でそう聞いたのは父だ。


 「・・・申し訳ありません。不勉強にも私は聞いたことがありません。珍しいのは珍しい、と、思われます。」

 「珍しいのは分かった。で、どのようなスキルなのだ?」

 「それは・・・・分かりかねます。分かりかねますが・・・」

 「が?」

 「その、いろいろとぐちゃぐちゃ、つまりは壊したり混ぜたり散らかしたり、そのようなスキルではないかと愚考します。」

 「・・・それは役に立つのか?」

 「・・・申し訳ありません。私には子爵様のご期待に添える答えを思い浮かべることができません。」

 「つまりは、役立たずのスキル、と?」

 父のその質問に、神父は黙って頭を下げた。





 「勘当だ!出て行け!努力をすれば有用なスキルが得られたはず。我が家にぐちゃぐちゃなどと、汚らわしい者はいらぬ。目障りだ、さっさと出て行け!」


 屋敷に着くなり、父がそう怒鳴りだした。


 「ちょっと待ってください。俺、いや私はずっと努力をして参りました。学校でも一番を取り卒業生総代の栄誉を得たではないですか。父上もご存じのはずですよね。それをスキルが気に入らない、と、ただそそれだけで勘当とは、あまりにご無体です。どうか思い直してください。」


 俺は必死に父に訴えた。


 が、それは火に油を注ぐ行為だった。


 父は俺を足蹴にし、「二度と顔を見せるな!」の捨て台詞を残して、俺の目の前から去って行ったんだ。


 近くにいた家臣たちは気まずそうに俺を見た。

 主である父の手前、止めることも取りなすこともできない奴らは、俺の視線を避けるようにその場を去った。

 ただ、母だけはメイドに命じて簡単な旅装を用意させ、平民であれば3ヶ月はしのげる程度の金子きんすを持たせて送り出してくれた。力強いハグと、おでこへのキス、そしてこらえきれない涙とともに。

 

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