第17話 幼馴染みと神社

首が、肩が重い。

身体が、重い。

「優ちゃん」

僕は、冬華に支えられていた。

「優ちゃん、絶対それ大丈夫じゃないよね」

「あはは・・・ごめん」

「教えて、優ちゃん。

隠してるのは、私の為だよね。

私は、大丈夫だから」

僕は、深く息を吐く。

そして、冬華を見る。

彼女は、心配そうに僕の顔を見ていた。

「なんかさ、今朝から徹の声が聞こえるんだ」

「え!」

「だよな、僕も驚いてるんだ。

なんで、僕の事をこんなに恨んでいるんだろうな。

僕が幸せになるのが許せないんだってさ」

僕は、時計を見る。

午後2時。たぶん、今頃告別式の最中だろうか。

葬式には、さすがに行く気はない。

「冬華、すまないけど。

このまま、神社に行きたい」

「うん、行こ」

僕は、冬華に支えられながら商店街の奥にある神社へと向かった。

徐々に重くなる。

息が切れる。

「優ちゃん・・・」

心配そうな冬華の声。

辛いけど、いま意識を飛ばしちゃだめだ。

頑張ろう。

『ユルセナイ。ユルセナイ。ユルセナイ。・・・セナイ。・・・セナ・・・ナイ』

徹の声が徐々に人の言葉ではなくなっていく。

もう、こいつも憎しみに染まっているのだろう。


神社の鳥居が見える。

あと数歩だ。

やっと着く。

そして、鳥居をくぐった瞬間。

少し身体が軽くなった。

「冬華、受付いこう」

僕らは、そのあと受付を済ませてお祓いをしてもらう。

本殿へ入ったとき、僕の意識は途切れた。


後頭部に柔らかいなにかがある。

ああ、これは膝枕か。

目を開ける。

そこには、冬華の顔があった。

「おはよう、優ちゃん」

肩の重みがなくなっていた。

もう、徹の声は聞こえない。

「優ちゃんの顔色だいぶよくなったね」

冬華は僕の頭を撫でていた。

気持ちいい。

「たぶん、優ちゃん。お祓いの時の記憶ないよね」

「うん、本殿に入ったあたりから記憶がないな」

「本殿に入ったとき、優ちゃん。徹くんの声で「ユルセナイ」って言ってた」

そのあと、僕は冬華から詳しい話を聞いた。

本殿に入った後、僕は一度倒れたらしい。

そのあとから、ずっと「ユルセナイ」っていってたらしい。

顔色もとても悪くなっていたみたいだ。

お祓いが終わったら、声も元に戻っていて顔色も戻っていたみたいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る