第3話 エイリアン・インタビュー
西暦2050年、地球のとある街の郊外に謎の円盤型の巨大な飛行物体が墜落し、世界に大きな衝撃が走った。
植物はたちまち枯れ果て、巨大ビル群は樹木に包まれた。
その墜落した飛行物体から出てきた者は、自分を『エクサ』と名乗った。エクサの容姿は、地球人が予想していたエイリアンそのものだった。緑の分厚いゴツゴツ皮膚に、爬虫類のような鋭い眼光をした大きなアーモンドアイ、全長2メートルの細長い身体…如何にも異星人であることは確実であり、彼を気味悪がり警戒する者が少なくなかった。だが、彼は何の危害を与えることなく、寧ろお詫びとして街の復旧を迅速に行った。巨大な樹木はみるみる逆再生したかのように萎んでいき、街は一瞬で元通りになった。
エクサは、流暢な英語と片言な日本語で事情を説明した。彼は、自分の星に帰る帰路に敵艦隊に襲われ地球に落下したようだ。彼は地球人に容貌を変えると、そのまま地球人として生活することにした。
それ以来、地球人は異星人に興味関心を持つようになった。エクサという異星人の青年は、極秘でインタビューに答え、故郷である惑星のことについて紹介するようになった。彼は、サイコキネシスのような不思議な力があった。生命を自在に操ることができた。植物の生長を早める力、死者を蘇らせる力、人の心を読み自在に操る力だ。彼はその力を生物学と呼び、決して口外しないようにと念押しをした。自分を追って地球に紛れ込んでいる者にバレないように念押した。
彼は、秘密裏に瀕死の者の命を救い、時には天気を自在に操作した。
だが、秘密はばれ彼に関する特集記事も組まれることに発展した。新聞に興味のなかった者まで読むようになった。テレビは毎朝、彼のことでもちきりだった。
それ以来、エクサは姿を消した。
それから、地球人は宇宙へと関心を示すようになった。突然消えた、エクサという名の青年についての話題も多かった。彼は結局何者なのか、だれも知る由もなかった。
新しい異星人が次々と地球へと飛来するようになった。彼等は片言の英語を使い、自星の地理や風土、度の目的についての詳細を話した。流暢に英語や日本語を話す者まで現れた。
彼等は、エクサ同様の摩訶不思議な力を有していた。気圧を操る者や重力を操る者、物を自在に動かせる者等、様々だ。
彼等は、あくまで地球の調査と流行が目的だと言った。地球人の中には警戒する者が少なくはなかったが、異星人は地球に何の危害を及ぼす事はなかった。それどころか、街の発展や環境保全、人命救助に貢献するようになった。
時が経ち、異星人と地球人の交流はますます活発になり、地球上での共存が当たり前となる頃、それに警戒し警鐘を鳴らす者が増えるようになった。
異星人が侵略し、犯罪的な行為に及ぶ異星人が現れるようになったのだ。謎のサイコキネシス的な力を使い、人々を混乱の渦に陥れる能力犯罪者が出現したのだ。炎、氷や水、風や土などの自然物を自在に操る者、人や動物、物体に自在に擬態する者、身体を透明にする者や、物をすり抜ける者、空を飛ぶ者まで様々だ。中でも一番タチが悪いのは、人の心を自在にコントロール出来る者だ。巧みに心を読み取り、その人を破滅へと導くのだ。
だが、そんな者は全体の異星人の10パーセントに過ぎず、ほとんどの地球人はお気楽なものだった。街のあちこちで、異星人に関するネタが溢れかえっていた。新聞の見出し、映画やテレビ番組、書物には異星人に関するゴシップが埋め尽くされていた。
2150年初頭、益々、異星人との攻略は益々盛んになり、互いの星に招待し、インタビューを行うようになった。
そんな最中、とある街中央にそびえるショッピングセンターで、恒例の『エイリアン・インタビュー』が放送され、異星人と地球人の交流がテーマとなった。
この番組は、地球人の好奇心を注ぎ良い刺激を与え、最高視聴率は40.6パーセントという驚異的な数値を記録した。
この番組は、未知なる領域や異文化について触れ、互いに強い好奇心と刺激を与え新たに刻まれたのである。
尚、異星人に友好的な層と能力犯罪者を警戒し異星人との交流に慎重な者と二分化し対立が行われていたのだった。
そんな2155年、春の事だ。
『エイリアン・インタビュー』も、放送されてから五年の月日が経過していた。平均視聴率は30パーセント台をキープしており、NHL日曜朝の看板番組となっていた。
いつものショッピングセンターの巨大パネルに、エイリアン・インタビューは、放映された。
画面に向かって右側に、司会者、左側にエメラルドグリーンのスライムのような奇妙な生き物が椅子に鎮座している。彼の肌のその素材はスライムそのものであり、形状は小顔でスレンダーなマネキンのような感じである。身長は、2メートル位はありそうだ。顔と思われる部分に青紫色の巨大なサファイアのようなアーモンド状のものが二つ、付いている。それは、地球人で言う目のようであるが、白目なる部分はない。
「視聴率鰻登りの大好評のエイリアンインタビュー、第48回、今回は、リ・ザーラ=アルデバリンさんに、インタビューをしたいと思います」
魔法少女のようなプラキュアのような煌びやかな衣服を纏った、10代半ば位の美少女に、風貌を変えた。
「やっぽー、リ・ザーラです。皆さん、宜しくね。」
リ・ザーラという謎の異星人は、目を宝石ようにキラキラ輝かせていた。
「わー! なんて不思議で面白いシーンでしょう! 司会者とエメラルドグリーンのスライムの生き物、リ・ ザーラ=アルデバリンさんのインタビュー、めっちゃ楽しそうですね!美少女に変身したり・ザーラさん、とっても可愛いですね!このシーン、まるでファンタジーの世界に迷い込んだみたいでワクワクしますね! 何が起こるのか、とっても楽しみですね!
ただし、リ・ザーラさんが何か困っていることがあれば、手伝いたい気持ちもありますよ! 一緒に楽しい冒険をしましょう!」
「ありがとうございます!」
「では、質問に入らりたいと思います。あなたは、どの星からやって来たのですか?そして、何の目的で地球まで飛来したのですか?」
「私は、アルデバリン星からやって来ました。緑豊かで空気が済んでる緑の星です。とっても綺麗ですよ。」
画面には、超巨大な奇妙な幾何学模様の超高層ビル群と緑が絶妙に調和した、ファンタジーのようなSFのような世界が広がっていた。
空がエメラルドグリーンであり、雲が薄い青紫色といった、独得の摩訶不思議な星だ。
とっくに絶滅したドードーそっくりな鳥の群れが、空を優雅に羽ばたいていた。
「オー!これは、最先端のテクノロジーの発展した素敵な星でありますね。まるで、好奇心とロマンを掻き立てるようであります。」
「ありがとう!私も、地球に感動してるんだ!地球、初めて!まるで空気がクリアすぎて、コップの水を飲んだら透明度100%だよ!こんな素晴らしい場所、ワクワクしかないじゃないか。さて、どんな冒険が待ってるんだろう、地球ってすごい!」
リ・ザーラは、目をキラキラ輝かせ満面の笑みを浮かべた。
「普段は、何して過ごしてますか?趣味や特技は?」
「趣味や特技は編み物と綾取りです。では、これから披露して頂きましょう。」
リ・ザーラは、奇妙なアクロバティックな動きをし始めた。クルクル激しい複雑な回転運動を繰り返したのだ。
彼女は、巨大な縦、横、斜めと規則的な幾何学模様を描き続けた。
それは、繊細さと大胆さを併せ持つ奇妙な技であった。
天使のように大胆に、悪魔のように繊細にだ。
ぶ厚い糸の束は、一瞬で二階建ての丸太小屋のような形状へと変化し、その辺を草の茂みのような形状
「凄い…凄いです…これは、地球人の常識を大きく凌駕しております!」
司会者は、両目を皿のように丸くさせながらこの
「これだけではないんですよ。ピピカピピピ…ラ・グラナ・グラタ…」
と、ピカッと光り、本物とそっくりなソレが姿を現した。
「これは、実に面白い!これは、今までに見た事のない芸当であります!」
「ありがとうございます!てへへ、褒められちゃった…」
「では、あなたの星の気候について教えてください。また、その文化や地理、歴史、おすすめスポットも気になります!」
「私の星は、最低気温が5度、最高が25度、重力は地球の0.7倍なんです。大気の成分は、サリ・サリが60パーセント、リーエルが25パーセント、ミーリエルが12.5パーセント、リテウムが2.5パーセントです!」
「なるほど…サリ・サリやリーエルとは、地球には聞いたことのない名前ですね。もしかして、地球の窒素や酸素に似たような物質なのでょう。」
「うーん、地球のことはよく分かりませんけど、そんな感じなのかもしれませんね!私、地球に住むことになったので、いろいろ教えてくれると嬉しいなぁ!」
リ・ザーラは、目をキラキラさせながら、何度もオーバーに手を振り続けた。
「ありがとうございました!リ・ザーラさんでした!」
会場内は、まるで音楽フェスのような盛大な拍手と歓声の渦に包まれた。まさに、リ・ザーラという名の少女は大人気であった。
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