第39話 【ジュ〇シックワールド】

39.【ジュ〇シックワールド】








とんとんっと耳の裏をつつき神宮寺さんに作ってもらった〝展開型フルフェイス防具〟を起動する。

初めはこの防具を貰ったときにギミックが楽しくて必要もないのに起動して遊んでいた。

ダンジョンへきてから気づいたのだが〝展開型フルフェイス防具〟を使っていると顔に風が当たらない、なんだか違和感を感じるし匂いもシャットアウトされているのか無臭だ。


音は普通に聞こえるし視界も晴れていてつけている事を忘れそうなほど自然な着け心地だがやっぱり多少は違ってくるところもある。



さて、そんな感じで新しい装備を楽しんでいる俺だが。さきほど軽く出てきたと思うが今現在ダンジョンにいる。


【ジュラ〇ックワールド】フィールド型のこのダンジョンの名前だ、理由は言えないが一文字伏せさせてもらう。

そしてこの名前からダンジョンで出てくるのが何か、勘のいい人なら既に分かっているだろう。


「ぎゅぉぉぉぉぉん!」


「おー、声がでけぇ」


巨大な木の森から姿を現したのは全長10メートル以上、体高は一軒家ほどもあり足跡の沈み込み具合を見る限り相当な重量があるのがわかる。

使えそうにもない小さな前足に比べ物にならない程発達した後ろ足、大きな口に大きな牙。


そう、言わずとも知れた有名な恐竜『ティラノサウルス』だ。


〝徹甲榴弾〟を装填したマガジンをアサルトライフルに装備して構えて撃つ。


「ぎゃ………!」


『ティラノサウルス』の小さな頭のこめかみのあたりを狙い撃った弾は寸分たがわず当たり、小さな爆発を起こし一撃で標的を沈める。


「このぐらいなら楽勝か」


周りに追加の敵が来ないか少しまってから動き出す、倒した『ティラノサウルス』をそのままGPへと変換していく。


「1匹で1500GPか、中々に美味しい」


『ティラノサウルス』にドロップ品は無く、その死体がそのまま素材となるのでもしその場で解体せずに持って帰るなら収納袋が必要になる。

解体する場合は牙や皮などを剝いでいく必要があるだろう。


『ティラノサウルス』の肉は食用には向かない、なのでちゃんとするなら解体するべきだがめんどくさいので大体の人はそのまま持っていくって聞いた。

それにこのダンジョンへ来れるぐらいのレベルになったのなら収納袋をパーティで共有しているのが普通だしな。

俺の場合は【空間庫】があるし邪魔ならGPに変換できるし荷物になる事は無い。


Cランクダンジョン【ジュ〇シックワールド】、今日ここへ来たのはレベル上げと新天地を求めてとここが人気の観光地なので一度見に来てみたかったっていうのがあった。


世界中にダンジョンができて、中には魔物がいて危険だというのに人間とは好奇心には勝てない生き物なのか護衛を雇い安全を確保してダンジョン内を観光するのが一時期流行っていった。


初めは名前もよく知らない怪しい業者の観光ツアーだったが次第に大手もダンジョン観光へ手を出し始め今では当たり前のように一部のダンジョンは観光地になってしまった。


そりゃあ理解出来るとこはある、魔法のような幻想的な風景を直接見れるんだ見たいと思う人はいるんじゃないだろうか?という事ではじまった事業だ。

今では国が主催のツアー何かもあるし、お偉いさんが視察と称してダンジョンへ来ることもある。


探索者になってランクを上げて行けば自分で色んなダンジョンに好きなだけ安全に見に行くことはできるが人類みな全てが探索者になるわけでは無いのでお金で解決できるならと、ツアーを頼む人はそれなりにいる。

まさに今そこにも。



「あちらの空をご覧ください。あそこに飛んでいるのはかの有名な『プテラノドン』です!」


ツアーガイドのお姉さんがそう言うと観光客が一斉に空を見て歓声を上げる、そして持参したカメラでパシャパシャと写真を撮っている。


「続いてはあちらの方へ、『トリケラトプス』が見れますよ~」


そう言って彼らは森の奥へと消えていった。



あれが観光ツアーの人達だ、入口に近い所で大体見かける。

入口に近い場所だとは言ってもさっきみたいに『ティラノサウルス』が出てくることもあるというのによくやるよ………あ、心配しなくても【空間庫】に入れたりGPに換える作業は周りに人がいない事を確認してから行っているから安心してほしい。



ツアー客はほとんどが10人ぐらいから20人ぐらいの集団でそれにツアーガイドの人と護衛をしている探索者が6人ほどいる。


ああいった集団が1日にだいたい10組ほどツアーを行っているようだ。


ツアーの安全はある程度確保されているとは言ってもやっぱり【ダンジョンウォーカー】などのイレギュラーが出てくる可能性はあるし、それでなくとも何かしらトラブルは起きそうなものだが。

ツアー会社によっても護衛の力量はピンキリだろうし。

あの集団を見る限り自分が観光している間はそんなトラブルが起きないと高を括っているんだろう。


戦う力もないのにCランクダンジョンへきて、ある意味勇者だな。






◇  ◇  ◇  ◇






「お?強い敵が出るようになってきたか」


見える範囲、とはいってもおおよそ200メートルは離れているが赤色をした恐竜が出てくるようになった。

あれは『アンキロサウルス』だったか?亀みたいに背中に固い部分をもっておりでこぼことしている、そして赤黒い色をしている。


ここのダンジョンでは恐竜の強さが色分けされていてわかりやすくなっている。


入口近くは茶色だったり緑だったりと比較的みんなが想像する恐竜の色をしている、しかし中層あたりに来ると赤黒い色になりその強さもあがる。

なので観光ツアーなどは入口付近である程度恐竜を見たら帰っていくのでこのへんに人は滅多に見かけない。


色が変わるとどうなるかというと、具体的には体が大きくなりステータスも上がっているのか素早く動くやつがほとんどだ。

もちろん力も強くなっているので単純に強い。


あの赤黒いのが見えてきたって事は2層が近いって事だ。


【ジュ〇シックワールド】は全2層のフィールド型ダンジョンで1層には普通の恐竜と奥には赤黒い恐竜、2層からは赤黒いのと最奥には紫色のがでてくるようになる。


『アンキロサウルス』、本来なら10メートルいかないぐらいの大きさだがあの赤黒いのは多分20メートルを超えている。

大きさでは入口で倒した『ティラノサウルス』越えだ。


標的はまだこちらに気づいていないのか呑気にのっしのっしと歩いている。


「ここから狙うか」


アサルトライフルで200メートルなら十分射程圏内だ、しかもスキルで購入した銃は実物よりも強化されているのか、実際の物よりも射程距離が長い気がする。

実銃を手に入れる事が出来ないのでネット情報と自分のスキルの銃との比較だがそんな気がする。


一撃で倒せるように〝徹甲榴弾〟を装填したマガジンを使い狙い………あ?


「あー、まぁそういう事もあるのか」


今まさに撃つぞーってタイミングで『アンキロサウルス』の奥から小型の恐竜が何匹も出てきた。

『ラプトル』型の恐竜で多分名前があるんだろうけどここからじゃ細かい所まで見えないのでわからない。

大きさもダンジョンの特性で変わっているだろうし色も変わってるし特徴で判断するしかないがそこまで恐竜に詳しいわけでは無いのでわからない。


「これも自然の摂理ってやつか?」


果たしてダンジョン内を自然と言ってもいいのか分からないが、恐竜は弱肉強食だしああいったことは頻繁に起きているんだろう。


見えるだけで数十体もいる『ラプトル』の群れが『アンキロサウルス』に群がっていく。

多勢に無勢で『アンキロサウルス』も尻尾を振り回して頑張っているがどうしようもないのか徐々に動きが鈍っていっている。



「ふむ………」


襲われている『アンキロサウルス』とそれに群がる『ラプトル』、もはや団子状態になっており何が何だか分からなくなっている。

そんな状況に少しずつ近づいていく。


じりじりと速すぎず遅すぎず気づかれないように近づいていく。


そろそろいいかな?ってぐらいの距離に近づいてから【空間庫】へと手を突っ込む。

おもむろに取り出したのは手榴弾、それも3つ。


「うむ」


ピンを抜き大きく振りかぶって連続で3つ団子状態の所へと投げ込む。


「たーまやー」


爆発音が3度響き団子になっていた『ラプトル』と『アンキロサウルス』が爆散する。

あちこちに肉片が飛び散り投げ方がよかったのか生き残りは1匹もいない。



「ちょっとグロイな」


自分でやっておきながらこの言いぐさである。

取り合えず大き目に残っている素材になりそうな部分を【GunSHOP】スキルの売却画面を直接押し付ける形でGPに換えていく。

さすがに直接さわる勇気はない。


あらかた売却し終わったら残りの細かいのは無視しておく、全部拾うのは無理があるからね。


それにしても結構倒したけどレベル上がらなかったか、もうちょいかな?

早く50以上にして試験受ける資格を満たしておきたい。






◇  ◇  ◇  ◇







『経験値が一定値に達しました、レベルが49から50に上がりました』


「お、レベル上がった」


『アンキロサウルス』と『ラプトル』の団子を爆散してから、一応2階層を目指して途中で何度か恐竜を倒していった。

そして今2度目の団子状態を発見したので手榴弾で爆散したところ、レベルがあがった。




名前:神薙 響   年齢:15


レベル:48 → 50


STR:62 → 65

VIT:25 → 28

AGI:63 → 67

DEX:523 → 547

INT:8

MND:7


≪スキル≫

<ユニーク>【GunSHOP】Lv:4

<上級>【空間庫】Lv:3

<スキルリンク>【野営地】Lv:1

<上級>【射撃】Lv:6 → 7

<初級>【銃術】Lv:9 → <中級>【銃術】Lv:1

<上級>【堅忍不抜】Lv:─

<中級>【気配感知】Lv:6 → 7

<中級>【遠目】Lv:─

<スキルリンク>【イーグルアイ】Lv:3 → 5

<ユニーク>【風読み】Lv:─





「なんか色々あがったな」


ステータスはいつも通りなのでスルーするとして、【銃術】スキルが初級から中級へとランクアップしていた。

【気配感知】と【イーグルアイ】は常に使っているので、まぁ上がるよねって感じ。


そして【銃術】スキルが中級になったことでなのか新アーツスキルを覚えていた。


その名も【リロード】だ。


うん?って思った人もいるかもしれない。なんでリロード?って、リロードってマガジン交換の事か?って。


リロードがアーツスキルってどういうことだ?って思ったので早速使ってみる。


「【リロード】………おぉ!」


腰につけていたアサルトライフルのマガジンが独りでに動いて持っているアサルトライフルのマガジンと交換された。

交換したマガジンはそのまま腰の空いた場所へと自動で収まった。


「リロード、そのまんまだけどこれは強いな」


リロードスピードもそんな遅くない、普通に交換したときぐらいのスピードでさすがに全力で最速を目指して交換したときに比べると遅いがそれでも十分すぎるスピードでのリロードだった。



【リロード】

マガジンの入れ替え、弾の補充などが出来る。




「このアーツスキルを覚えたって事は、アレが出来るな」


アレとは一体何なのか、それは今度のお楽しみにして今は取り合えずもうちょいレベル上げよう。


目標は55ぐらい、何となくちょっと余分にレベル上げしておきたい気分。


「どこかにまた団子状態の所がないかなぁ」



手榴弾で爆散はちょっと快感だった。










◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

7/10 修正

【リロード】の説明を変更しました。

マガジンの交換のみから弾の補充も出来るように説明文を変えました。







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