第2話 パニック少女

「お会計半額にさせていただいて……あっ!」

 半額ボタンを連打した結果、小計がどんどん小さくなり最終的に175円になってしまっている。


「すいません、最初からやり直して……あっ!」

 エンターキーを押した途端ピ――ッと、高い電子音が鳴り響く。


「すいません! すいません!」

「いいからちょっと落ち着こう? 取り消しボタン押してみて?」

 ペコペコと頭を下げる女の子が取り消しと書かれたボタンを押すと、とりあえず電子音は止まった。


 前には半泣きの女の子、後ろには長蛇の列。後頭部に刺さる視線が痛い。

 俺か? これは俺が悪いのか!?


 とりみだしまくる女の子へ俺は慎重に指示を出す。

「落ち着いてもう一回やってみよう。いい? ハンバーグ定食1つとドリンクバー1つ。まずはそこまで押してみて?」


 まるで新人研修だ。『俺は客だぞ!?』と言う言葉を飲み込む。とりあえず会計を済ませればこっちのもんだ!


「半額ボタンは一回だけ押して。そう! もうそれ以上は触らない!!」

 女の子は両手を上げてフリーズしている。

「いや、それだと会計終わんないから! 次いくよ? 支払いはこのカードでお願いします」

 よし、あと一息だ!

俺はキャッシュカードを差し出す。


「カード……」

 女の子はマニュアル本を取り出した。

「おいおい、嘘だろ?」

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