『子殺し』らの撃破と黙禱


 美月は6歳の男児に深手を負わせた女3人を流木で一蹴し、亮介と直美のもとへ急ぐ。亮介が51歳の巨漢(アレックスの父親)からアレックスと直美を守り、「アレックスの妹を餓死させたらしいな」と怒りのこもった声で言っているのが見えた。



 2トントラック内に入ると盗撮防止の黒いカーテンを閉め、亮介の黒い短髪に唇をつける。(外からは見えないようになっている)。

 清一はバールを持った『子殺し』の口内に練りワサビを入れ、荷台から振り落とし広場に戻った。

 

 「幼い甥っ子に、深手を負わせたな!」オオキバドロバチのラフにオレンジ色のキバであごをはさまれた30代の男が絶叫。ヒュージも「3歳の男児が『やけどがいたかった』と号泣した!」と別の男の腰を尾で絞め上げる。

 「俺の奨学金返せよ!トミコ‼」アキラが実母トミコに向かって絶叫し、トミコが400万円の入った封筒を渡し去って行く。

 『子殺し』たちは催涙スプレーをかけられて撃破され、無期懲役となった。

 



 亮介は喪服に着替え、美月や勇樹ら20人も亡くなった子どもたちと36人のアニメスタッフの墓に花を供え、手を合わせる。アレックスやゴルバチョフたちも、水色や白のメッセージカードを花の上に乗せた。

 黙禱を終え、茶摘の紅茶店で紅茶を飲んでいると「亮介先生。俺は空音たちとロンドンに残ります」と猛雄が声をかけてきた。

 「そうか。気を付けて」「はい」と答え、猛雄は亮介に向かってニカッと笑った。



 ―――帰国日。茶摘やサム、勇樹のペインター仲間らが空港に集まっていた。

 「勇樹。一緒に絵が描けて、楽しかった」ペレが勇樹と握手する。「ありがとうペレ、アプリコット。体に気を付けて」


 「亮介。また紅茶店に来てくれ」「はい。ありがとうございます」茶摘は亮介を抱きしめ、背中をポンとたたいた。

 「美月さん」ジュリアが満月の形をした髪飾りで美月の髪を留め、嬉しそうな顔になった。「ありがとうございました、ジュリアさん、弥生さん」弥生も美月に向かって手を振っていた。

 「直美。ロンドンに戻って来てね」「うん」ジョニーが直美に便箋を渡し、顔を赤くする。ジョブズが息子の肩に手を置き、亮介に笑みを見せた。



 鎌倉に戻ると、賢や明人らが「おかえり」と駆け寄って来た。「『子殺し』の逮捕が連日新聞に載っている。『ミーン』はブルーベリー農園でジュースを作っているらしい」賢が小声で言い、湯気の立つ昆布のおにぎりを持って寺へと向かう。



 「おかえりなさい」小中学生たちが亮介と美月に手を振り、おにぎりを食べ始める。僧の男性と無毒のヘビ・源次郎が落ち葉や雪を集め、古いちりとりに入れていた。

 

 『子ども食堂 キンモクセイ』では「数学で追試だ!」「漢字、20個覚えなきゃ」という声が響いていた。



 


 



 



 


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る