野菜の散乱とアキラたちの過去
カミツキガメのアントニオは通りに未開封の青ネギやトマト、レタスなどが散乱しているのを見て激怒し、イギリス中の水道水が一時熱湯に変わった。
「アントニオはトマトをヘタごと食べるんだ」アリゲーターガーのエリックが小声で佑樹に言う。「農家が作ったものだ。栄養たっぷりで、風邪も引かなくなる」アントニオはトウモロコシを葉とひげごと豪快に食べ終え、段ボール箱をたたんでトラックに積んだ。
アキラと優、栞はフードバンクの制服を着てトラックに乗り、タマネギとナス、
ジャガイモを親と離れてラジオ局『Young Flowers』で過ごす子どもたちに渡した。
「ありがとう」ローズと8歳の女の子が栞に嬉しそうな笑みを見せ、ジャガイモを塩ゆでする。賢哉が「おいしそう」と言いながら竹ぐしを用意し、火が通っているか見ながらジャガイモに刺しているのが見えた。
「福さん。段ボール箱がからになりました」「ありがとう」福は寮へ戻る3人に塩せんべいを渡し、手を振った。
「俺の母親は交際相手の男6人と夜11時から朝6時までやかましく過ごしてたね。4歳で砂を団子にして食ってた」とアキラ。
「俺は父親とめしを食べたことがない」「私は6歳から母親と離れて『トー横』で暮らしてました」優と栞が制服をハンガーにかけ、台所でアレックスたちと一緒にロールキャベツと焼きトウモロコシを作る。
「めしがうめえ。『トー横』にいる20人にも渡したい」アキラがコーンスープを冷まし、木のスプーンでリズに飲ませながら言う。栞はロールキャベツを深皿によそい、「春香は秋次郎さんに保護され、源泉中で元気にしてるらしいです」と便箋を優に渡す。
「書道部に入ったんだな」「高校生たちと活動してるのか」優とアキラは便箋を
防水ポーチに入れ、焼きナスを食べ終えた。
「おいしかったね」「ああ。風邪引かないぞ」アレックスは机を拭き、自室へと
戻って行った。
「子どもに重傷を負わせる相手と付き合うな!」声を荒らげるアキラ。「ジュリアさんたちも、『子育てに必要なのは相談相手!』ってプラカード持って巡回してるよ」優が言い、広場をぐるりと一周するジュリアたちをちらりと見た。
「『赤ワイン』も警察官として勤務しながら、学び直しに参加してる。弥生さんが『飲酒事故が減少したわ!』と歓喜してたらしい」
「番組内で出されるパスタやハンバーグも、『満腹になった』と思ったら食べるのをやめる』と変えると、食材も保存できる」アキラの案に、美子と道也が「『Young Flowers』の夜番組で出したらええな!」と用紙を渡す。
アキラが出した案はローズが司会の夜番組で採用され、通りに散乱する野菜やパン、ブルーベリーなどが減ってアントニオとエリックが驚いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます