第29話 破壊と創造 前編
テウリアから遥か北のロミウル王国ー王城内の応接間。
調達の担当者が腕時計を見ながら今か今かと約束の時間を待っていた。
そして入り口の兵士が扉を開ける。
「きましたか。」
扉の奥から城の気品さとは不釣り合いな不気味なオーラを纏った商人が歩いてくる。
「今日はお時間いただきありがとうございます。アダ殿」
「それで、今日の用事というのは?」
「例の品の紹介となります。」
「おぉ、ということは特典武器ですかな?最近市場にも出まわらないと聞きましたが。」
「はい。それも上物にございます。」
「ほう。このご時世に上物とはありがたいですな。」
商人はアタッシュケースを取り出しその上部をゆっくりと開ける。
光があたり一つの武器が現れる。
そのアサルトライフルに近いボディーは不思議な禍々しい模様をしていた。
商人はそれに手をかざしスキルを発動させる。
「アイテム鑑定スキルによると武器名 D2018 風属性の銃器にございます。威力も申し分ないかと・・・」
「おぉ、素晴らしい!芸術性と実用性・・・・特典武器の特徴ですね。」
「はい。手に入れるのに苦労しました。」
「そうでしょう。お代のほうは弾まさせていただきます。」
「ありがとうございます。アダ殿」
商談が終わる。
商品を受け取った担当官が満足気な表情をする。
「これで我が国がまた一歩リードできますね。」
そして近くにいた兵士に声をかける。
「おい、ミュレを呼び出せ。」
「はっ!」
極寒の地で転生者がもたらしたであろうイージス艦を主とした、連合艦隊が流氷を割りながらロミウル王国へ向けて進軍中だった。
よほど氷が厚いのか戦車も周辺に展開していた。
その遥か上空ーステルス戦闘機内
操縦者らしき男が乗っている二人に話しかける。
「作戦遂行地点上空です。」
白髪の少年がつぶやく。
「オッケー。こっちはいつでもいいよ。」
その声を聞いて黒髪の少年も呟いた。
「あぁ、こっちもだ。」
操縦者がボタンを押し貨物投下用ハッチを開ける。
そこから極寒の風が音を立てながら入り込む。
「では作戦開始ですね。グッドラック!」
「んじゃーねー」
「了解。」
二人は勢いよくハッチから飛び降りる。
艦長に連合艦隊の対空監視員が連絡が入る。
「上空から対人反応2、おそらく双子です!」
「なに!?ということは破壊と創造か・・・戦闘態勢に移行、撃ち落とせ!」
「はっ!」
落下しながら白髪の少年が艦隊を見つけつぶやく。
「ひゃっほー。あれが目標かな?」
「だな。」
艦隊の砲台が複数光り、ミサイルの砲台が連続で煙を上げる。
白髪の少年がニコリと笑い黒髪の少年の方を向く。
「おぉ!?まずいね、頼むよ兄さん。」
「お前が俺の兄貴だろ・・・ったく。」
呆れ顔で黒髪の少年が手をかざす。すると二人を紫のオーラが包む。
そしてオーラに飛んできた砲弾は触れたところから消滅していった。
「やっぱ、すごいなぁ弟の破壊は。僕はかなわないよ。」
「ふざけるのも大概にしろ、お前の番だぞ。」
「仕方ないなぁ・・・」
白髪の少年が手をかざす。
少年の周辺に銀色の輪が複数現れ稲妻が走る。
「うーん、時間かかるなぁ・・・」
空気が大きな振動を立てながら、銀色の輪の中心よりイージス艦が船首から徐々に生成されていく。
出現したイージス艦は重力の影響を受け徐々に加速しながら真下の艦隊に突っ込んでいく。
艦隊は火力を最大にしてそれを撃ち落とそうとするが、その質量に対してほとんど効果がなかった。
飛来するイージス艦は次々と艦隊のイージス艦の中央部に落下し、金属が悲鳴を上げながら沈む。
白髪の少年はそれを見ながら笑顔で手を降る。
「ばいばーい。」
双子は白旗のような煙を上げて沈んでいく艦隊を横目にゆっくりと氷の上に降り立つ。
しばらくして、氷に振動を伝えながら戦車の大群がこちらへと向かってくる。
それをみて白髪の少年は呆れる。
「ありゃりゃ。素直に沈んでればいいものを・・・。兄さんまた頼むよ。」
「あぁ。」
黒髪の少年は地面の氷に手を当てる。
次の瞬間二人を中心として、縦3mほどの衝撃波が水の波紋のように発生した。
それは氷を割りながら周辺を海に変えていき、戦車はそれに抗えず海へと沈んで行った。
「んじゃ、帰りますか。」
「まだ終わってないぞ油断するな。」
突然海が山のように盛り上がり潜水艦の頭が顔を出す。
「ありゃりゃ。」
「お前の番だぞ。」
「おっけー。」
一瞬少年の手が光る。
潜水艦が横になった瞬間、突然メキメキと音を立て出す。
するとイージス艦の船首が海中から潜水艦を中心から真っ二つにして出現した。
出現したイージス艦の船首から不気味な男が現れ、あたり一面の海が凍った。
白髪の少年は元気よく男に挨拶する。
「やっほー、奪取者さん。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます