第26話 炎の勇者 前編
奪取者がテウリアを襲撃していた頃、少し離れた河原で少年が必死に逃走していた。
「はぁ・・・はぁ・・・無、無理だ。ヤツハシさんがあんなにあっけなくやられて、コウも死んだんだ。おれも・・・」
するとそこにすさまじい勢いで小石が追尾しながら向かってくる。
「う、うわーっ!あ、アイスガード!」
少年は氷で自分の上半身を覆いをガードするも、小石は少しずつ氷を食い破って少年の心臓に近づいていた。
「こ、このままじゃダメだもっと魔法を強く!!」
魔力を上げて小石を完全に止めるも、少年自身も凍ってしまった。
「し、しまった・・・・」
少年はそのまま川に流されながら気を失った。
「お、起きてください!大丈夫ですか?」
「う、うっ。ここは?」
「ここはレイネルという村です。あなたが川で倒れているのを見つけてこの村まで運んできました。」
「あ、ありがとうございます。あなたは?」
「私はルコと申します。」
「ぼ、ぼくは・・・・・あれ思い出せない?」
「だ、大丈夫ですか?あっ、そういえばこんな物があなたの服の内側に。」
女性は小石を少年に渡そうとする。
すると少年はその小石をみて、驚き逃げ出す。
「う、うわああああ。」
「あっ、待ってください!」
女性は少年の手をつかむ。
「は、離して!その小石を僕に近づけないで!」
「わ、わかりました。」
女性はその小石をポケットに入れた。
「だ、だいじょうぶですか・・・・」
「は、はい何故かその小石が怖くって・・・」
「は、はぁ・・・・」
「す、すいませんでした。助けていだいてありがとうございます。ぼ、僕はこれで失礼いたします。」
すると勢い良く村人が入ってくる。
「おい、大変だ。モンスターがこの付近に出たぞ!」
「えっ!早く避難を!」
女性は少年の手を引き家を出る。
すると3mはあろうかという熊のモンスターが家の前まで迫っていた。
「何ですか、あんなモンスター見たことありません!」
「うわっ!」
女性と少年はモンスターに驚きその場で立ち止まってしまう。
すると次の瞬間一本の剣が空から降ってきて近くの地面に刺さった。
女性はそれに驚く
「なんですか!?」
少年は見覚えのあるその剣をまじまじ見て決意した。
「これしかないっ!」
少年はその剣を構え、熊のモンスターに立ち向かう。
熊のモンスターは鋭い爪を振り回し襲いかかるが、少年は軽やかな動きで熊のモンスターの攻撃を見切り背中に斬りかかる。
(あれ?どうすればいいか分かる・・・)
「やああっ!」
しかし少年が振るった剣はモンスターの剛毛と堅牢な皮膚によって防がれてしまい、大したダメージは与えられなかった。
次の瞬間モンスターが薙ぎ払った腕が少年を近くの民家まで吹き飛ばした。
「ぐあっ!」
モンスターは少年のほう目掛けて走り出だす。
次の瞬間、剣は炎をまとい出す。
「もう一度だっ!!」
少年はモンスターの急所となるみぞおち目掛けて剣を突き刺す。
剣は突き刺さり、熊のモンスターは一瞬で炎に包まれた倒れた。
「や、やりました。」
「す、すごい。も、もしかしてあなたは炎の勇者様ではありませんか!?」
「えっ!?」
「えーっと、この村には勇者の伝説があって・・・その勇者様は炎の武器でモンスターに立ち向かったそうです。」
「そ、そうなんですか!?でも僕は平凡な人間で・・・。」
「そんなことありません・・・あの軽やかな身のこなし。きっと勇者様ですよ!」
「は、はぁ・・・」
その少年は一日でその村の英雄となった。
「勇者様、村長の娘であるルコをお救いくださり、ありがとうございます。」
「えぇ・・っと、僕は当たり前のことをしたまでですよ。」
「やはり村の伝説は本当だったんだな。」
「俺は空から勇者様の炎の武器が降ってきたのを見たんだ。」
「さすがは勇者様だ。」
ルコがみんなにその少年の事情を伝える。
「そ、その勇者様は記憶がなくて困っているそうです。」
「そうなんですか?勇者様?」
「は、はい。何も思い出せないんです・・・」
「そして、手がかりはこの小石だそうです。」
ルコは勇者から小石を離してみんなに見せる。
村人は相談しだす。
「そうか・・・」
「それならやっぱり・・・」
「そうだな」
村長が声を上げる。
「勇者様、であればその小石が落ちている地域にさらなる手がかりがあるかもしれません。」
「そ、そうなんですか・・・」
「えぇ、そして勇者様の倒れていた川の上流の地域のギルドで情報収集してみるのが良いかと。」
「なるほど、そうしてみようと思います・・・ですが・・・僕はその小石を持つこともできないんです。」
「そうなんですか。となると・・・ルコ、手伝ってあげなさい。」
「お、お父様!?いいのですか?」
「あぁ、勇者様次第だが。」
「ぼ、僕は構いません。むしろ迷惑をかけるかと。」
「そんなことありませんよ!むしろ助けて頂いた命ですから協力させてください。」
「あ、ありがとうございます。ルコさん。」
「は、はい」
「それじゃぁみんな乾杯だー!」
そして炎の勇者の冒険が始まった。
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