第22話 奪取者再び

俺が自由になったのはそれから30分後だった。

「二人共、今日は用事があるから俺抜きで観光を楽しんでくれ。」


二人が不満そうな顔をする。

「えー」

「ならコウさんの用事を私も手伝います。」


「ダメだ。これは転生者の俺にしかできないことなんだ。

それに二人を危険な目に合わせるわけにはいかない。」


「え、コウ君危険なところに行くの?だめだよ!」

「えぇ、ダメですよコウさん。それは私も見過ごせません」

(しまった・・蛇足だったな・・・)


俺は二人の顔をみて真剣に話す。

「必ず帰ってくるから、俺を信じてくれ。」


「うん・・・必ずだよ!」

「えぇそこまで言うのなら、わかりました。」


その後宿を出ると三度笠を被ったロモを見つける。


「おはようロモ。」

するとロモは俺に近付き鼻を動かす。

「おはよう・・・なんか昨日とは違う、二つの甘い匂いがするにゃ」

「え、そうか・・・気のせいだろ。」

「それならいいけど、女遊びはほどほどににゃ。」

「あ、あぁ」

(バレてるし、そういえば猫って嗅覚よかったな・・・)


昨日の観光で見えていた、日本のお城のような場所まで来ていた。

「やはりここだよな・・・」

「ここがテウリアのお城だにゃ」


城の地下へと案内される。

そこには俺の見慣れた顔と動きがあった。


「おや、コウさんではありませんか。お久しぶりです。」

「久しぶりだなヤツハシ。」


「さて、連絡はしていなかったはずですが。

ロモさんといるということはそういう事ですか。」

「あぁ事情は察してくれ。」


「えぇお噂はかねがね・・・。次は獣人を・・・・ということですか?」

「そ、そうなのかにゃ!?」


「違うわ!!てかロモ、お前が驚いてどうする。」

「たしかに・・・・でも女遊びしてる匂いがあったにゃ。」

「おい。」

「ははっ、コウさんらしいですね。」

「俺らしいって・・・そういえばなんで連絡しなかったんだ?」

「えぇ今回はそこまで脅威ではないと私が判断したんです。」

「そうなのか?」

「はい、相手の持っているスキルは回避系のみです。それに今回はこれがあります。」

ヤツハシは前回使用された2つの槍を机の上に置いた。

(前回俺がアカネに渡したやつだな・・・うまく会話を合わせよう・・・)


「これは?」

「前回空から降ってきた槍です。幻を見せる能力とスキルを封印する能力を持っています。」

「なるほど余裕だな。」

「えぇ」



「そこまで甘く見られていたとは心外ですね。」

廊下の突き当りから不気味なマントを着た男が歩いてくる。


「奪取者か!いつの間に!」


「探す手間が省けましたね!!」

ヤツハシが手をかざすと奪取者の後ろに2体の土人形が現れ、殴りかかる。


奪取者は何かをつぶやく

「・・・・・・・・・」

するとなぜか2体の土人形はお互いに殴り合いバラバラになった。


「は?」

(今まで以上にやばいな・・・距離が近い、そして能力が謎すぎる。)


俺は隙を見て金具を飛ばす。

奪取者はまたつぶやく。


「私には当たりませんよ。」


すると金具は違う方向へと飛んでいった。


「!?」

俺とヤツハシは身構える。

「あ、動かなくて大丈夫ですよ。無駄に終わりますから。」


「なっ!」

「あなたはそこで死んでいてください。」

するとヤツハシは力が抜けるように倒れた。


奪取者が槍の置かれた机に近づく。


「やばいな・・・ロモ!手裏剣を槍に当てろ。」

「あぁ!」


手裏剣の衝撃で2本の槍が地面に落ちる。

すると2本の槍は消えた。



俺の視界に通知が表示される。

----ヌルポインターを取得しました。----

----イマジナリーショートを取得しました。----


「はて?あなたの特典は何でしょうか?」


奪取者は近くにあった木製手すりを引きちぎり、こちらに投げてくる。


「この手すりはあなたの心臓を貫きます。」

「は?」


俺はとっさに2枚の鉄板を取り出し展開する。

しかし手すりは紙を突き刺すように、いとも簡単に2枚の鉄板を貫通し俺の心臓に突き刺さる。


「ぐっ・・・・!!」


俺はあまりの痛みに磁力を展開できなくなり鉄板が散らばる。

ロモが俺に近づき必死に声をかける。

「こ、コウ!死ぬんじゃないにゃ!!」


視界にアイテム自動使用結果が表示され続ける。


...

----最上位回復薬ファイナルエリクサーを使用しました。----

----最上位回復薬ファイナルエリクサーを使用しました。----

----最上位回復薬ファイナルエリクサーを使用しました。----

----最上位回復薬ファイナルエリクサーを使用しました。----

----最上位回復薬ファイナルエリクサーを使用しました。----

----最上位回復薬ファイナルエリクサーを使用しました。----

----最上位回復薬ファイナルエリクサーを使用しました。----

...


いつまでその回復薬が持つかわからない。切れたら終わりだ・・・俺は必死に考える。


(これしかない!!)


俺は外から見えない密閉された箱をイメージして聖剣を取り出す。

(うまくいってくれ・・・・)

「きえた!?そんな馬鹿な。槍といい、瞬間移動系ですか。まぁあの傷では長くは持たないでしょう。」


(うまくいったようだな・・)


男は通路の奥へと進んでいった。


ロモが泣きながら俺に声をかけ続けていた。

「こ、コウ!しっかりするにゃ!」

「ロモ...手すりを...抜いてくれ...」

「お、お前死んじゃうにゃ。」

「いいから・・・は・・・やく!」

「くっ!」

ロモは手すりを引き抜く。


「ぐっ・・・!!」


「こ、コウ!・・・傷が!!」

ファイナルエリクサーの効果により傷がゆっくりと塞がる。

「あぁなんとかなったな・・・」


俺はファイナルエリクサーの数を確認する。

(あと3本だった。)


ロモは目を丸くしてこちらを見ながら質問する。

「お前も不老不死にゃ!?」

「は?どういうことだ?」

「答えるにゃ!」

「違う。」

「そうか・・・とりあえず安全なところに逃げるにゃ。」

「あぁ。」

「それと今のは・・・・?」

「あとだ。」

俺たちは聖剣に隠れながら宿へと戻る。




戻る途中でテウリアの城が爆発、炎上していた。


「なっ!?テウリアの城が!!」


それを見ていた観光客や店員などが騒ぎ出す。


ロモが俺を置いて戻ろうとするがとっさに手を握って引き止める。

「だめだ・・・今は逃げたほうがいい。」

「くっ・・・」

「散々な修学旅行だな・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る