第9話 とりあえず全員で魔法のトレーニング?

奪取者討伐から2ヶ月後、学園では魔力測定が行われていた。これにより魔法が評価され進級の評価が行われる。

ロウウェルは魔法の才能が評価され飛び級で高等部に進級したらしく、すでに初等部にはいなかった。


「次の方ナシェさん」


「はい!」


火 → 加熱 威力A 範囲B


「これはかなりの成長ですね!このまま行けば卒業も確実でしょうね。」


「はい、ありがとうございます。」


どうやら特訓の成果が現れているようだ。

ナシェが笑顔でこちらを見てきた。


「えへへーやったよ!」


次に俺の番だ。出せる実力をあげるため、測定前に金具は外しておいた。


雷 → 電磁力 威力S 範囲A


「これは!!」


教師が驚くと共にまた周りがざわめいた。


「ここまでの成長となると・・・高等部の飛び級も出来ますよ。」


「はい、ありがとうございます。」


周りの声援を受ける。


「コウ君すごいね!!私も頑張らなきゃ!」


「コウ!どんな練習したんだ教えてくれよ!」



測定が終わりナシェの元へと行くと悲しい顔をしていた。


「どうした?」


「高等部に・・・飛び級しないよね・・・・・?」


「あぁ、ナシェと一緒に進級するさ。」


「そうなの!?やったー」


本気で嬉しかったのだろう、笑顔でナシェが抱きついてくる。


幼なじみを置いて飛び級するのは後ろめたい。

それに現状の俺にはこの世界の基礎知識が足りないのだ・・・。


初等部の教本を読み尽くし知識を習得したとはいえ、やはり段階を踏んでおくべきだろう。




しばらくして委員長的ポジションの赤髪女子に声をかけられた。

名前はリンというらしい。


「コウさん・・お願いがあるんだけど・・・・」


「はぁ・・・」


俺は面倒事の予感がして控えめに返事をする。


リンは少し困った顔をするが、その後仁王立ちポーズをして説明する。


「なんかやる気のない返事だけど、まぁいいわ!クラス全体で魔法の特訓を実施する予定なのだけれど、その・・・教師をしてほしいの!」


「すまない、自分の魔法の特訓で手一杯なんだが・・・」


下手に実績を作ってしまうとそこから芋づる式に面倒事が巡って来た経験があったのでこの手の厄介事はやりたくなかった。


すると近くの男子が呟く。


「俺からも頼むよコウ!」


しまった、これは・・・・。

それを皮切りに次々と声が上がる。


「私もお願い!」

「借りはいつか返すからさ・・頼む!」

「頼みます!」



逃げるコマンドを押したつもりが周りを取り囲まれて失敗したようだ・・・


「コウさん・・・私からもお願いします。」


教師までこう言ってきた。こうなると断れない、アンタが教師だろうが・・・

それに魔法の概念の無い世界から来た転生者に頼むとは酷な話だ。


「はい・・・・」


「もちろん我が学園の教え通り、努力した者には報酬を用意しますよ」

ここでこの学園の教育指針を知った。


放課後、俺を教師とした形でクラス全員が集まった。


「えーっと、今から魔法の訓練を教える。訓練内容は魔法特性によって変わるから、まずは全員特性を教えてくれ」


全員が黒板に自分の魔法特性を書き出す。


火特性 15人(単炎10人、獄炎4人、加熱1人)

水特性 10人(単水8人、氷2人)

雷特性 4人(単雷3人、雷撃1人)

風特性 4人(単風3人、烈風1人)

土特性 3人(単土2人、剛土1人)

光特性 1人(閃光1人)


(こうやって統計を取ると面白い・・・これだけでも参加した価値があるかもしれないな。)


やはり生活基盤で必要となる火、水特性が多い。

特に光に限っては一人で、闇はほとんどいないようだ。



単の漢字がつく魔法は純粋な属性を持つ、威力は低いが操作しやすく応用範囲が効く特性だ。


獄炎、氷、雷撃、烈風、剛土、閃光はそれぞれの属性の上位特性だ。

先ほどの特性と逆で威力は高いが操作しにくく応用範囲が少ない。


そして最後の特性としてそれぞれの属性の上位特性以外のユニーク特性がある。

ここでは、ナシェと俺の魔法特性がユニーク特性らしく、威力と範囲のバランスが取れているそうだ。




俺は教壇に立ち全員に向けて伝える。

「先生が魔法はイメージ力と言っていただろう。俺はそれを守り続けたんだ」


全員がそれに頷く。

「へー、そうなんだ。」

「もっと難しいことを教えられるのかと思ってた。」

「なるほどな。」


ナシェはドヤ顔で頷く。

「そうだよー」



「とりあえず単のつく特性の奴は空き時間があるときに常に魔法を球体状に発生させ続ければいい。」

これで威力と範囲がバランスよく上がるはずだ。


すると教室の所々から魔法が発動しだす・・・・。


「待て待て、人のいないところでな・・・・。っておい!」


次の瞬間レーザー?のようなものが俺目掛けて飛んでくる

ギリギリのところで交わすことができた。

「っ!」


当たったであろう、黒板の一部が赤く変色していた。

(これ・・・当たったら死ぬやつだろ・・・。閃光って魔法か・・・)

飛んできた方向をみると先程の委員長的ポジションのリンがいた。

(ドジっ子・・・か・・)


俺が叱ろうとした瞬間ナシェが叱りだす。

「危ないよっ、リンちゃん!私のコウくんなら大丈夫だけど!」


「まぁ何だ・・・気を付けてくれ。」


リンは少しウルウルしていた。

「ご、ごめんなさい。」


「あと最初はきついが慣れると常に出来る。」


「はーい」

「わかったー」


そして問題は上位の魔法を持つ奴だが・・・先程の件もあり発生させるにしても威力が大きく周りに被害を与えかねない。

それに維持が難しい。俺はナシェがやっていた特訓を利用することにした。


「ナシェ手伝え」

「うんっ。」


俺は持ち物からそれぞれの耐性を持つモンスターの素材を渡した。


「これは耐性を持つモンスターの素材だ」

「ひいいい」

「すごーい」


一部の生徒がそれを聞いて驚いたり怖がったりしていた。


「これに魔力を込め続け、破壊できるまでやるんだ」

「なるほど」


それを後ろで聞いていた教師が頷く。


それに対しリンが素朴な疑問をぶつけてきた。

「でもこんな素材・・・どうやって手に入れたの??冒険者でもないとそうそう狩れないよ。」


「あぁ、俺の知り合いが商人をやっていてな・・・手に入れるのに苦労したんだ。その分の借りは後で返してもらうぞ。」



もちろん商人というのは嘘だ。

こういった素材は無尽蔵に手に入るので捨てても良かった。



それに対し周りの生徒が強気で返事をする。


「あぁ、わかったよコウ。ありがとう!」


「コウ君ありがとう。がんばるよ!」


「コウ君はどんな特訓してるの??」


「あぁ俺か。」


俺は磁力を解除した。

鈍い音と共に金具が周囲に散らばる。


「コウさん・・・すごいです・・・」


「やっぱコウはすげえや」


「電磁力の魔法でこれはすごいですね」


周りの教師や生徒が驚く。


とりあえず俺の魔法講習は無事終わった。


終了後教師が俺のもとにやってきた。


「コウさんありがとうございます。教師の私も勉強になりました。ぜひ他のクラスでもお願いしたいのですが・・・・」


おいおい・・・。

「すいません、最近は忙しいので・・・」


「そうですか、残念です・・・・これは報酬の手付金です。」


すると教師から図書室の鍵を貰った。


「これは?」


「我が学園の秘蔵してある蔵書の部屋の鍵です。一般公開はされておりませんよ。きっとあなたの力になるはずです。」


「ありがとうございます。」

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