二日目-9

 手がかりを一つ見つけ、さて探索を続けようとイクスが振り返った時。

 目の前に、ララが立っていた。

「!?」

 無防備なイクスの首に細い両腕が伸ばされる。

「ぐ……ぅ……っ!」

 その時、再び頭上から声が聞こえた。

「あっはっはっは!ゲームオーバー!!上手く撒けたと思ったでしょ!?時間が経つとパートナーはプレイヤーの元に自動で戻る事も忘れて!」

 イクスを嘲笑う声が響き渡る。その間にも、首を絞める手はどんどんその強さを増している。

「ほら、ねえ。パートナーなんて危険でしょう?今ならまだ僕が貴方のパートナーの心を封印してあげます!さあ、どうしますか?」

 イクスは必死に声を振り絞る。

「誰が、……ララを、お前なんかに……わた、す、もの……か」

 数拍の沈黙の後、酷く冷め切った声が聞こえた。

「あ、そうですか。じゃあいいです。このまま死んで下さい」

 力を保っていられなくなり、イクスはララごと後ろに倒れ込む。

 改造されているのだろう。細い腕だというのに万力のような力だ。

 意識が朦朧としてくる。イクスはぼうとする頭で考えた。嗚呼、このままパートナーに殺されるんだろうか。それも悪くない。愛しい人の手で死ねるのなら。

 イクスはララの頭を撫で、目を閉じた。

 すると。

「――!」

 ララが息を呑んだ。腕はピタリと止まり、籠もっていた力は収められた。

 イクスは再度瞼を上げる。

「……ララ?」

「うぅ……うう……」

 ララは頭を押さえていたかと思うと、カッと目を見開いた。

 瞬間、太ももの短剣で素早く己の腹を突き刺した。

「――ララ!!!」

 ぱたりとイクスの身に凭れ、沈み込む。急いでイクスは仰向けにして抱えた。

「……は?何だよこれ」

 頭上から声が振ってくる。ララは荒い息を抑えながら、強気な笑みを浮かべた。

「イクスさんを殺すと……本気で、思っていたんですか……?私が、愛する人を殺すと……!!」

 口から血を吐き出し、イクスの頬に飛沫が掛かった。イクスは自身の頬を指でなぞり、指先の血液に戦慄した。

「う、うわあああああ!!!」

 イクスはララを抱き締め、ゴルキーとレイラに貰ったカルガ石を翳す。

「くそっ、くそっ!何だよこれ、全然効かないじゃないか!!」

 半狂乱で回復アイテムを漁る。

 恋人の絶叫を聞きながら、ララの意識は静かに途絶えた。

 

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