シナモンロールの種

坂本 有羽庵

パラパラ炒飯

 友人が「うまい炒飯チャーハンの店がある」というので、一緒に食べに行った。


 店内は広く、混んでいた。

 客席の真ん中にはガラスで仕切られた舞台があり、なぜかその上部にだけポッカリと屋根がなく、太陽の光が燦々さんさんと降り注いでいた。


 注文が入ると、大皿を手にした店長が舞台に立ち、皿を持っていない方の手を空に向け、「はっ!」と腹の底から声を出した。すると、具材と米が適度に混ざった炒飯がパラパラと空から降ってきた。

 店長はそれを太極拳のような華麗なステップで、一粒も残さず皿に受け止めていく。大皿の上にこんもりと盛られた炒飯は、油のコーティングで艶々つやつやと輝き、熱々の湯気を立てた。


 雨の日は休業するらしいよ、と友人は言った。

「せっかくのパラパラ炒飯が台無しになるからね」


 テーブルに運ばれてきた炒飯を食べると、口の中でパラパラと軽やかにほどけ、晴れやかな空の味がした。

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