第六十一話:鉄壁の守護兵

 遂に始まった入試ファイト。

 特別ルールにより、先攻は試験官だ。


「まずは私のターンからだ。スタートフェイズ! メインフェイズ!」


 試験官は1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。

 さぁ、俺の相手はどんなデッキなんだ?

 

「私はライフを1点払い〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉を召喚!」


 試験官:ライフ10→9

〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉P9000 ヒット0

 

 試験官の場に巨大なゴーレムが召喚される。

 一見するだけだとパワーの高いブロッカーなのだけど……うーん、あれはちょっと面倒くさい相手だな。


「〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉の召喚時効果を発動! このカードの召喚に成功した時、デッキから〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉を任意の枚数召喚する! 私はデッキから更に2体の〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉を召喚だ!」


 試験官の場に更に2体の巨大ゴーレムが召喚される。

 パワーの高いブロッカーが3体……なんて単純な話じゃないんだこれが。

 間違いない、試験官のデッキは系統:〈守護兵しゅごへい〉で固めたデッキだ。

 簡単に表現するなら、超防御型デッキ。シンプルに突破が難しいカード群だ。


 試験官:ライフ9→7

〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉(B)P9000 ヒット0

〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉(C)P9000 ヒット0


「私はこれでターンエンドだ」


 試験官:ライフ7 手札4枚

 場:〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉(A、B、C)


 大型ブロッカー3体を並べてターンを終える試験官。

 単純にパワーが高いだけなら除去を撃って突破するんだけど……あのデッキには通用しないだろうな。


「系統:〈守護兵〉。その専用能力は【鉄壁てっぺき】でしたよね?」

「ほう、中々勉強をしているようではないか。その通り、私の〈守護兵〉は【鉄壁】を持っている」


 【鉄壁】、それは系統:〈守護兵〉が持つ専用能力。

 これを持っているモンスターは皆、相手のカード効果では破壊されない。

 当然のように、3体並んだ〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉も持っている。

 破壊の通用しない高パワーのモンスター軍団。

 うん、面倒くさいな。


「でもなんとかしなきゃ入学できないからな。俺のターン! スタートフェイズ。ドローフェイズ!」


 ツルギ:手札5枚→6枚


 俺はドローしたカードを確認する。

 この手札じゃ突破はできないな。だったら!


「メインフェイズ! まずはライフ2点を払って、魔法カード〈フューチャードロー〉を発動!」


 ツルギ:ライフ10→8


「このカードの効果で、俺は2ターン後のスタートフェイズに、デッキからカードを2枚ドローします」

「そんなに悠長なことをして大丈夫なのかね?」

「大丈夫ですよ、耐えますから。続けて俺は魔法カード〈リセットドロー〉を発動!」


 以前卯月も使っていたカードだ。


「〈リセットドロー〉の効果で、お互いに手札を全て墓地に送り、墓地に送ったカードに1を足した枚数分カードをドローする」


 ツルギ:手札0枚→5枚

 試験官:手札0枚→5枚


 相手の手札が増えたけど、勝てば問題なかろうだ!

 だって俺の手札には最高の相棒が来たからな。


「さぁいくぜ! 奇跡を起こすは紅き宝玉。一緒に戦おうぜ、俺の相棒! 〈【紅玉獣こうぎょくじゅう】カーバンクル〉を召喚!」


 俺の場に巨大なルビーが出現して、砕ける。

 その中から毎度おなじみ、緑の体毛をしたウサギ型モンスターが姿を現した。


『キュップイ!』


〈【紅玉獣】カーバンクル〉P500 ヒット1


「む? 随分とステータスの低いSRカードだな」

「技のカードなんですよ。今からそれを見せます」


 俺は1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。


「魔法カード〈ルビー・イリュージョン〉を発動!」


 カーバンクルの周りに、無数の紅玉が出現する。


「このカードは自分の場に〈【紅玉獣】カーバンクル〉場合に発動できる魔法カード。その効果で全ての相手モンスターをパワーマイナス無限にする!」

「専用のサポートカードだと!」

「いっけぇ! ルビー・イリュージョン!」

『キュゥゥゥップイィィィ!』


 紅玉が輝きを放ち、三体のゴーレムを光で飲み込む。


〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉(A、B、C)P9000→P0


 ゴーレムのパワーが0になり、状況起因処理によって破壊される。

 効果では破壊できなくとも、それ以外の方法でなら破壊できるんだ。


「ほう、3体の〈ビッグゴーレム〉を一掃したか。面白い」

「お褒めどーも。俺は〈コボルト・ウィザード〉を召喚」


〈コボルト・ウィザード〉P2000 ヒット1

 

 俺の場に獣人の魔術師が召喚される。

 これもお馴染みの便利カードだ。

 召喚時効果を発動して、俺はカードを1枚ドローする。


 ツルギ:手札2枚→3枚


「アタックフェイズ! 〈コボルト・ウィザード〉で攻撃!」

「ライフで受けよう」


 試験官:ライフ7→6


「続けて〈カーバンクル〉で攻撃!」

「それもライフだ」


 試験官:ライフ6→5


 とりあえず試験官のライフを半分にはできた。

 だけど問題はここから先だな。


「ターンエンドです」


 ツルギ:ライフ8 手札3枚

 場:〈【紅玉獣】カーバンクル〉〈コボルト・ウィザード〉


 とりあえずは俺がリードしている状態。

 だけど試験官が、サングラス越しに闘志を燃やしているのが見える。

 これは仕掛けてきそうだ。

 

「私のターン。スタートフェイズ。ドローフェイズ」


 試験官:手札5枚→6枚


「メインフェイズ! 私は〈ガーディアン・ミドルゴーレム〉と〈ガーディアン・ケンタウロス〉を召喚」


 試験官の場に、中型のゴーレムと、ケンタウロス型ゴーレムが召喚された。


〈ガーディアン・ミドルゴーレム〉P6000 ヒット1

〈ガーディアン・ケンタウロス〉P5000 ヒット2


 今度は攻撃にも適したモンスターを出してきたか。


「更に私は、手札を1枚捨てて魔法カード〈ガーディアンリバイバル〉を発動!」

「〈守護兵〉専用の蘇生魔法か!」

「〈ガーディアンリバイバル〉の効果によって、墓地から系統:〈守護兵〉を持つモンスター1体を選び復活させる!」


 試験官の場に魔法陣が出現する。

 蘇生されるのは当然……


「墓地から〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉を復活! 更に私の場に系統:〈守護兵〉を持つモンスターが2体以上存在するなら、デッキからカードを1枚ドローする!」


〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉P9000 ヒット0

 試験官:ライフ5→4 手札3枚→4枚

 

 手札補充までされたか、面倒だな。

 というか試験官さん、ドローしたカードを見てニヤってしたな。


「では私も、本格的に攻めさせてもらおう」

「来るか!」

「私は系統:〈守護兵〉を持つモンスター〈ガーディアン・ミドルゴーレム〉を進化!」


 ミドルゴーレムが巨大魔法陣に飲み込まれていく。

 俺の脳裏には〈守護兵〉の切り札が1枚浮かんでいた。

 アレは少し面倒くさいんだよな。


「進化召喚! 現れろ〈【守護兵長しゅごへいちょう】マスターグリフォン〉!」

『クォォォォォォォォォォ!』


 魔法陣が弾ける。

 試験官の場に巨大なグリフォン型ゴーレムが召喚された。

 出たな切り札のSRカード。


〈【守護兵長】マスターグリフォン〉P11000 ヒット3


「ふむ。SRカードを前にしても動じないか」

「慣れてるんで」

「冷静なのは良いことだ。ならばこれはどうだ? 私は魔法カード〈守護兵強襲しゅごへいきょうしゅう〉を発動!」


 わーお、また面倒なカードが出てきたな。


「このカードは、私の場の系統:〈守護兵〉を持全てのモンスターをヒット+1にする」


 魔法カードの効果で強化される守護兵たち。

 流石にちょっと脅威になってきたな。


〈【守護兵長】マスターグリフォン〉ヒット3→4

〈ガーディアン・ケンタウロス〉ヒット2→3

〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉ヒット0→1


「ふむ、手札が減ってしまったな……私は魔法カード〈逆転の一手!〉を発動! 手札が3枚になるようにドローする」


 試験官:手札1枚→3枚


 うーん、ここで手札補給もされてしまったか。

 流石は聖徳寺学園の試験官。一筋縄ではいかないな。


「アタックフェイズ! まずは〈ガーディアン・ケンタウロス〉で攻撃だ」


 試験官の攻撃が始まった。

 これは何としても耐え抜きたいんだけど……万が一も考えて、ライフ調節をしておくか。


「ライフで受けます」


 ケンタウロスの槍が、俺を貫く。


 ツルギ:ライフ8→5


「次は〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉で攻撃だ」

「それもライフです」


 ツルギ:ライフ5→4


「続けて〈マスターグリフォン〉で攻撃だ!」


 咆哮を上げるマスターグリフォン。

 費消して、こちらに爪を向けてくる。


「悪いけどそれはお断りです! 魔法カード〈トリックゲート〉を発動!」


 マスターグリフォンは突如出現したゲートに飲み込まれてしまった。


「〈トリックゲート〉の効果で、攻撃対象を変更します。〈マスターグリフォン〉の攻撃先じゃ〈ガーディアン・ケンタウロス〉だ!」


 ケンタウロスの前にゲートが開く。

 そこから出てきたマスターグリフォンは、勢い余ってケンタウロスを撃破してしまった。


「ほう、私の攻撃を逆手に取ったか。ますます面白い」

「どーも」

「私に攻撃可能なモンスターは残っていない。このままエンドフェイズに入ろう」

「でもエンドフェイズに〈マスターグリフォン〉の効果が発動する」

「よく知っているな。その通りだ! 〈マスターグリフォン〉の効果により、私の場の系統:〈守護兵〉を持つモンスターは全て回復状態となる!」


 マスターグリフォンの効果で、2体の守護兵が起き上がる。

 これこそ鉄壁防御の守護兵だ。


「ターンエンドだ」


 試験官:ライフ4 手札3枚

 場:〈【守護兵長】マスターグリフォン〉〈ガーディアン・ビッグゴーレム〉


 うーん、モンスターは残せたけど……相手の盤面が固いな。

 しかも手札は3枚あるから、カウンターも警戒しなくちゃいけない。

 守護兵だから【鉄壁】の効果で、効果破壊もできない。

 負ける気はしないけど、決め手が見つからないなぁ。


 とりあえず俺は自分の墓地を確認する。

 ……ん? これは。

 〈リセットドロー〉で墓地に落ちた魔法カード。

 〈トリックプレゼント〉〈トリックボックス〉〈トリックミラージュ〉、そして……


 なるほどな。

 これならもしかすると、決め手になるかもしれない。

 ロマン砲として1枚入れてたカードだけど、狙ってみる価値はあるな。


 王道な勝ち方とは言い難いかもしれないけど、守護兵の防壁を突破して勝つにはこれしかない。


 派手に撃ち込んでやるか……ファイナルトリックを!

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