詩捨て場

枕目

昼の月の


青空の底にあいた白い欠落

青と黄のコンパスがその場所を示す

鳥たちはそれぞれの翼の限界から

存在しない王国を見あげる


鳥の王は音のない声で歌い

形のないものだけがそれを聞ける

一度でもその声を聞いたならば

その歌のために永遠に堕ちられる


あの白く円い宮殿の支配者は

不在なだけにどこまでも残忍だ

思い描けるいちばん旧い神ですら

ただ何もないよりは慈悲深い


鳥たちは高く飛んだぶん高く堕ちる

昼の月はどんな祈りにも応えない

鳥の神は限界に例外を与えない

でもあるいは君こそ最初のそれかもしれない


地を這う蟲どもとその肉と魂

鳥たちの羽根は素材のわりに美しい

蟲たちは鳥をけして恨みはしない

どうせ最後にはぜんぶ取り戻すのだ


信じない者には言わせておけばいい

あれは正しいからこそ真実から遠い

きみのほうがあの月の近くで死ねる

あの聖なる歌をわずかに聞いて死ねる


昼の月に翼を向けているかぎり

鳥はいつまでも鳥の王に近づける

自身がそれだと気づいたときに

王は堕ちて死んで蟲に喰われる

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